コラム
» 2005年12月05日 09時50分 UPDATE

小寺信良:「録画ネット裁判」で明らかになったタブー (1/3)

放送と著作権に関連した重要な判決が11月に下された。この「録画ネット裁判」が示す意味合いを考慮しながら、放送とITの関係を考えてみたい。

[小寺信良,ITmedia]

 今年の11月15日、あまりメディアでは取り上げられていないが、放送と著作権に関連したある重要な判決が下された。いわゆる「録画ネット裁判」である。今回はこの判決が示す意味合いのようなことを考慮しながら、放送とITの関係を考えてみたい。

 まず「録画ネット」が何なのか知らない人、あるいは名前は聞いたことがあるが忘れちゃった人のために、簡単におさらいしておこう。

 「録画ネット」とは、簡潔にまとめるならば、海外からPCとインターネットを使って、日本に置いてあるテレビパソコンで録画した番組を見る、というサービス(http://www.6ga.net/)である。このサービスを運営するのは、有限会社エフエービジョンという会社だが、ここでは「録画ネットを運営する会社」という意味も含めて、便宜上「録画ネット」と呼ぶことにする。

 事の発端は、この録画ネットに対して2004年7月30日に、NHKと在京民放5局から「サービス停止を求める仮処分の申し立て」の申請が東京地裁に起こされたことに始まる。この申し立ての根拠は、この録画ネットが放送番組の複製・送信サービスであるから違法である、という点にあった。

 これに対して録画ネット側は、このサービスはテレビパソコンを預かって代行管理するハウジングサービスであり、違法性がないことを主張したが、2004年10月7日に、サービス停止の仮処分申請が認められた。以降録画ネット側が異議申し立てを行なったが、東京地裁は録画ネット敗訴という決定を下した。2005年6月1日のことである。

 録画ネット側はこの判決を不服として抗告したため、今度は舞台を知的財産高等裁判所(知財高裁)に移すこととなった。そして11月15日に知財高裁の決定が、抗告棄却。再び録画ネット敗訴という判決となったわけである。

 さらに録画ネット側が抗告するとなると、次は最高裁ということになるが、本コラム執筆時点では抗告するかどうかはまだ明らかにされていない。このまま抗告されなければ、この「事件」はこれで集結ということになる。

 録画ネットのサイトには、この一連の裁判に関する経緯と資料がまとめられている。興味のある方は、順に読んでいくと詳しく経緯がわかることだろう。本コラムでも両者の言い分を時系列的に検討することも考えたが、要するにシーソーゲームであるため、あまりにも煩雑になりすぎるようだ。ここでは最終的な判決を基軸にして、この事件の本質を考えることとする。

録画するのは誰か

 この裁判で興味深いのは、「個人がテレビを録画する」という行為についての本質が問われたことにある。普段我々はレコーダーやPCを使って簡単にテレビ番組を録画しているが、実はこの行為は、法的にはどエラく大変な話だったのである。

 テレビを録画するということが容認されている背景は、言うまでもなく著作権法 第30条(私的使用のための複製)という条項によるものだ。そしてこの裁判では、この私的使用の範囲、すなわち条文に書かれている「個人的に又は家庭内そのほかこれに準ずる限られた範囲内」とはどこまでか、さらに言うならば、録画しているのは誰か、を争ったものと取ることができる。

 録画ネット側は一貫して、このサービスで番組を録画する主体は利用者であるという立場を取ってきた。これは、録画するPCは録画ネットが各利用者に販売したものであり、それをリモートで録画予約するだけだから、というわけである。

 経緯を詳細に読むと、誰が電力を供給したか、とか、誰がブースターを付けて見やすくしたか、といったことも争点となっており、「誰が」を巡る攻防も非常に興味深い。だが、このそれぞれに対しての裁判所の見解は明らかになっていない。なぜならば、これらの条件に対して、録画ネットがシステムを変更することで対応していったからである。

 最終的には判決文にあるように、このサービスで使用するPCが利用者に販売されているのは偽装である、というところで決着している。また通常のハウジングサービスと同じであるという主張に関しては、録画ネットがテレビ番組が見られるということを主体に宣伝やサポートを行なっているということから、「通常のハウジングサービス」の範囲を超えているとの判断である。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.