コラム
» 2006年07月27日 10時00分 UPDATE

小寺信良:コミュニケーション衰退に見るIT時代の終焉 (1/3)

ITの普及で人は新たなコミュニケーションの時代を迎えたと思っている。だが実際は、単に誰でも情報にアクセスできるというだけで、それは同時に、膨大な情報整理を抱え込む結果となった。ITは決してコミュニケーション能力を育てないのだ。

[小寺信良,ITmedia]

 ITの最先端を生きていると思われる人でも、ニュースソースとしてテレビをうまく活用している人は多い。こんなに忙しいのにテレビを見る時間があるなんて、時間の使い方が上手いなぁと筆者などはいつも感心する。

 だが最近、そういう方たちとディスカッションする機会があって、それは筆者の感覚が世の中一般とズレているからだということに気がついた。忙しいながらもテレビから情報を得られる人は、得てして「ながら見」が上手いのである。仕事をしながらテレビを付けていても、それを無視することができる。興味があるものが視界に入ったら、そのときだけ情報として頭に入力する。

 一方筆者は、テレビ番組を「ながら見」することができない。それは、筆者が長年映像制作に従事していたことと深い関係がある。映像の編集者の世界では、録画中にモニターから目をそらすことは許されない。アシスタントに指示を出したり、ディレクターと相談するときも、モニターから目を離さない。したがって今でもテレビがついていると、つい注視してしまう。

 ただそれは、夢中になって見ているというのとも違う。意識は別のことを考えていたり、人の話などもちゃんと聞いて返事もする。だが、目が離れないのである。家に帰るとまずテレビをつける、という人は多いと聞くが、筆者はテレビがついているだけで、ものすごく時間を取られる見かたをしてしまう。

 3年ほど前に、パソコンのテレビキャプチャーカードがものすごく売れた時代があった。ストレートに受け取れば、みんなパソコンでテレビ録画をするのだ、という話なのだが、実働時間比で見れば、PCの画面上にテレビ画像を小さく表示させて、ながら見する時間のほうが多かったのではないか。

 メーカー製パソコンも今や、テレビ録画機能が付いていないもの=ビジネスモデルという認識で間違っていないほど、テレビ録画機能が標準となっている。しかしパソコンの中におけるテレビのポジションとは、あくまでも情報の一部であって、AV機器屋さんが危機感を覚えるような種類のものではないのかもしれないと思い直している。

情報過多時代に現われる「人力フィルター」

 あふれる情報に対して過去我々がとっていたアプローチは、誰かをフィルターにするという方法だ。ネットでは、いわゆる個人ニュースサイトと呼ばれるサイトが流行った時期がある。とにかくその人のアンテナに引っかかった情報のリンクを並べるだけなのだが、利用する人はすべてのニュースをチェックする手間が省ける。

 このようなスタイルが衰退してしまったのは、RSSという仕組みが広く知られるようになったからである。情報の収集を人に頼らず、ツールを使って自分でできるようになった。だがRSSがやってくれるのはあくまでも収集であって、選択ではない。一方個人運営のニュースサイトは、収集、選択を行ない、場合によっては複数の記事をまとめて整理してくれるといったところでメリットがあった。

 RSSを使えば簡単に一時ソースに自分でアクセスできるわけだから、一見するといいことのように思える。だが我々は、ここを見誤っているのではないか。

 一つの例として、「2ちゃんねるまとめサイト」を考えてみよう。アフェリエイト問題で一時期下火になると思われたまとめサイトが、また最近復活の兆しを見せているのは、それだけ需要があるということの現れだろう。

 ご存じのように、ナマの2ちゃんねるのログは、非常にS/Nが悪い。話の本筋とは無関係の書き込みが存在するため、慣れていない者にとっては、ストーリーを追いかけるのに苦労する。まとめサイトは2ちゃんねるの特定のスレッドを整理して、メインのストーリーを追いかけやすくしたものだ。話の本質的な発言は色分けされて目立たせるなど工夫する運営者もいる。

 2ちゃんねるまとめサイトを利用する人の多くは、事実上の2ちゃんねるの利用者とは違う層であろうことは容易に想像できる。2ちゃんねるに書き込んでいる人は、このようなS/Nの悪い状態に慣れており、それをスルーしてリアルタイムで話に参加することができるわけであるから、まとめサイトを利用する必要はないのである。

 2ちゃんねるリーダーなどは各種存在するが、発言を整理することはできなかった。混沌が、2ちゃんねるの存在を際だたせて来たわけである。だが、「誰か」が整理するという作業をやることで、これまではモヤに包まれていた2ちゃんねる像を俯瞰することができるようになってきている。

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