このほかにも、コントローラのボタン操作でスピーカーから主砲や対空兵装(高角砲、機銃)の発射音、汽笛などを再生したり、艦体左右の舷灯が光るなど、光や音の要素を含めて戦艦大和の姿を再現した。別売のジオラマ「情景ストラクチャーセット」では、建物の窓を光らせることができるため、大和の舷灯と合わせて夕闇に包まれる呉軍港を再現可能。明るい時とはまったく違う雰囲気になるのが面白い。
もう1つ見逃せないのは、あらかじめプログラムされた動きをトレースする「自動航行モード」の存在だ。自動航行モードには、海軍で一般的に行われていた“I法航行”を再現する「之字運動モード」、そして大和が最期の戦いに臨んだ昭和20年4月7日の12時32分以降の軌跡と攻防を再現する「大和最期の航路モード」が用意されている。
最期の航路モードでは2時間あまりの戦いを約10分間に短縮して再現。もちろん、当時のフィルムが残っているわけではないから完全に同じとはいかないが、船体や動き同様、可能な限りの資料を集めて再現した。
1945年4月7日、米機動艦隊に包囲された沖縄を目指していた戦艦大和は、鹿児島県坊ノ岬沖で米軍機を発見、交戦状態に入る。のべ1000機以上といわれる航空機による波状攻撃を受けながら、大和は2時間あまりにわたって戦闘を続ける。
すでに海上戦闘の主役が航空機に移っていた時代。最期の戦闘においても、大和の46センチ主砲が火を噴いたのは1度きりだったという。「それでも、敵に照準を合わせようと、主砲も動かしていたはず。爆撃や魚雷をかわそうと回避行動もとっていた」(天野氏)。しかし、副舵が損傷した後は、直進と左旋回を繰り返すことになる。
とどめになった一撃は米艦載機による魚雷攻撃。大和は大爆発を起こし、同日14時23分、艦体を二分して海底に沈んでしまう。かつて連合艦隊旗艦として威容を誇った巨大戦艦は、自らの能力を十分に発揮できない戦いに臨み、最期を迎えることになった。
自動航行モードでは、爆発や沈没まで再現することはないが、「最期の戦いを終え、大和が静止したときは、なにか胸にくるものがあります」。“究極の戦艦大和”は、外観や動きのみならず、巨大戦艦の悲哀までも再現したようだ。
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