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» 2012年10月16日 14時03分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:4Kテレビのコンテンツ問題は解消した――「CEATEC JAPAN 2012」総括(前編) (1/2)

「CEATEC JAPAN 2012」で注目を集めた4Kテレビ。ネイティブコンテンツがないことを疑問視する声もあるが、AV評論家・麻倉怜士氏によると「コンテンツ問題は解決した」という。今年も注目の展示を含め、詳しく解説してもらった。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 10月2日から6日まで、千葉・幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2012」は、5日間の総来場者数が16万2219人と目標の20万人には届かなかった。AV関連では日立製作所がテレビ関係の展示を見送るなど寂しい一面もあった一方で、直前に新製品を発表したソニーと東芝、製品化間近の“モスアイパネル”を参考展示したシャープなど、話題には事欠かなかった。今年もAV評論家・麻倉怜士氏に総括をお願いした。

ts_asaceatec02.jpgts_asaceatec06.jpg ソニーと東芝の4Kテレビをみる麻倉氏

――今回の「CEATEC JAPAN 2012」はいかがでしたか

 今年のCEATECは、“希望”と“失望”が入り交じった印象でした。失望の部分から言いますと、自動車関連の展示スペースがあまりに広く、電機メーカーからは勢いを感じられなかったこと。自動車業界は電機産業を取り込みたいという意志があり、バッテリーなど部材調達やスマート化において深い関わりがあることは分かりますが、展示するべき場所は「CEATEC JAPAN」ではなく、「モーターショー」のはず。CEATECとは展示会場にコースを設ける場ではなく、電機業界が新しいもの展示して、ユーザーに夢と希望を与える場であるべきではないでしょうか。

 一方の希望は、デジタルAV関係で新しい切り口の製品が多く展示されたことです。まず4Kテレビではソニーが新製品を発表し、東芝やシャープも参考展示を行いました。シャープは昨年から「ICC LED-TV」を見せていますが、今回は製品化がかなり近いと思える内容になっていましたね。

――中でも注目は4Kテレビでしょうか

 そうですね。先日、テレビ局の取材で「4Kは全く新しいものというわけではないのに、今なぜ注目されてるのか?」という質問を受けました。確かにその疑問はあるでしょう。

 テレビの大型化に伴い、60V型を超えるような大画面テレビではフルHDでも画素の荒さが気になるようになりました。そこで4Kパネルと超解像技術で精細感を高める必要が生じているのです。

 もちろん次世代高精細テレビの本命はスーパーハイビジョン(SHV)ですが、現在のフルHDと比べるとSHVは16倍の解像度を持っており、SDからHDへの移行に比べると差が大きいことは否めません。SDは画素数にするとおよそ33万画素で、16:9に引き延ばすとおよそ40万画素。フルHDの206万画素と比べると、だいたい5倍になっていることが分かります。やはり無理なく次の世代に移行できるのは4〜5倍程度で、SHVのように一足飛びに16倍というのはあまりにも差が大きいと感じます。4Kテレビでワンステップ加えるほうがスムーズに移行できるのではないでしょうか。

ts_asaceatec05.jpg CEATECの展示会場にはSHV対応ディスプレイも展示されていた

 確かに、4Kテレビは技術優先の提案であり、悪くいえばメーカー側の理論で登場したものです。テレビメーカー各社はブースでディスプレイの進化として展示していますが、コンテンツは追いついていません。前回のハイビジョン化の際は、MUSE(アナログハイビジョン)までさかのぼるとコンテンツのほうが5年ほど先行しましたが、今回は4K×2Kコンテンツが存在しません。それは前述のテレビ局の方々も指摘していました。

 しかし、私は昨年までと異なり、「4Kテレビのコンテンツ問題は解決した」と考えています。なぜなら、性能の良い超解像技術が登場し、アップスケールで今のフルHDコンテンツをフルHDテレビで見るより良好な画質が得られる可能性がひじょうに高くなったからです。

 あるメーカーの担当者から新製品発表会の前にこう頼まれました「質疑応答では、ぜひ『4Kコンテンツがないのによく売るね』と詰問してください。私は『2K(フルHD)のものを最高の状態で映し出せるので、実は“最高の2Kテレビ”です』と答えたい」と。結局、そんな質問はしませんでしたが(笑)。

 各社、大画面の4Kテレビでは、同サイズのフルHDテレビより、アップコンバート+超解像にて、フルHDプロパーよりはるかに良い画質を提供できることが確認できています。ですから、実質的に4Kテレビのコンテンツ問題は解決しているのです。

 4Kテレビでは、従来より画面に近づいても画素が見えません。フルHDテレビは「3H」(画面の高さの3倍)という視聴距離を守っている限りはボケませんが、原理的には画面が大きくなればなるほど、見る人はテレビから遠ざからなければならない。3Hをキープするために。しかし、テレビとソファーの位置関係は、そんなに簡単に動かせないでしょう。迫力がほしければ、もっと大きなテレビを買ってくれば良いことですが、ソファーをそのぶん後ろに下げられる家は、それほど多くないと思いませんか?

 テレビの大画面化は急速に進みました。ブラウン管の時代には29型で十分に大きかったのに、現在では42V型や50V型が普通です。次に買い替えるときは、60V型や70V型も視野に入るでしょう。そのとき、解像度は2Kのままで良いのでしょうか? 画素の荒さが目立たないよう、ソファーを後ろに下げることができるでしょうか? だから4Kテレビが必要なのです。

 今回のCEATECでは、各社が4Kテレビとアップスケール技術を紹介し、「コンテンツ問題は解決した」と高らかに宣言しました。それが今回の「CEATEC JAPAN」の重要な意義だと思います。

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