麻倉氏:有機ELテレビ関係の展示で、もう1つユニークだったのは、湾曲するディスプレイが出てきたことでしょう。LGとサムスンがほぼ同じコンセプトで展示していましたが、LGに話を聞くと日本の研究所から提案したものだそうです。
――どういう用途を想定しているのでしょう
有機ELテレビはコントラストの高さが特長ですから、やはりニーズは映画が中心です。そこで映画館の湾曲したスクリーンに見立て、テレビの画面も湾曲させるという演出です。サムスンは1台のみでしたが、LGは55V型の有機ELテレビを3台並べ、さらにワイドにしていたのが印象的でした。薄く曲げられて映像も美しいとなれば、さまざまな応用が考えられますね。
――有機ELテレビの課題も明らかになってきたと思います
麻倉氏:韓国メーカーの製品は、まだ画面の色ムラが多いですね。サムスンとLGのデモ映像に夜景が多いのは、その色ムラを目立たなくするため。中間色も苦手です。
また市場をふかんすると、やはり価格と画面サイズという課題が大きいと思います。北米市場では55V型ではまだ小さい部類のため、物珍しさはあっても一般大衆が飛びつくような製品にはならないと思います。おそらく、84V型の液晶テレビのほうが人気になると思います。
――4Kや有機ELのほかに注目した技術を教えてください。
麻倉氏:テレビ関係の技術は、3つあります。1つめはシャープの新しいクアトロンパネル。フルHD液晶パネルが持つ約892万のサブピクセルを生かして精細感をアップする「フルハイプラス」という駆動制御を進化させました。これまでは水平方向に限られていたのですが、今回は垂直方向にも拡大して、より精細な映像をえることができます(→関連記事)。実際に画面を見たところ、2Kパネルと2Kコンテンツのまま、“3Kくらい”の精細感を得ることができました。過渡期ならではの面白い技術だと思います。
2つめはソニーの新しい4Kテレビ「X900Aシリーズ」が採用したトリルミナス(Triluminous display)です。ソニーは以前、RGBの直下型バックライトを“トリルミナス”と呼んでいましたが、今回は米QD Visionというベンチャー企業の発光半導体技術「Color IQ」を使い、白色バックライトなのに純度の高いRGBを取り出せるようにしました(→関連記事)。これを使ってテレビの色域を拡大し、x.v.YCCをサポートします。
――ソニーは以前もx.v.YCCを推進しようとしていました。
麻倉氏:そうです。ただ今回は、カムコーダーやデジタルカメラでも同じフォーマットを採用することで、さまざまなソニー製品を巻き込んだ“ソニーワールド”を展開しようとしていますね。
3つめは、同じく「X900Aシリーズ」に採用された磁性流体スピーカーです。ダンパーレス構造も新しいですが、まずは外観に注目しましょう。画面の両サイドに大きなスピーカーが並ぶという、ビジュアル的にもすごく存在感のあるデザインです。
最近の薄型テレビは、韓国メーカーのように狭額縁化がトレンドでした。スピーカーは画面の下側に設置され、容積も削られて良い音が出せません。そのトレンドが行き着いたときにX900Aシリーズが発表されたので、とても新鮮ですね。当初は販売サイドが受け入れないかと思ったのですが、後でマーケティング担当者に取材したところ、「画だけでは差別化が難しいが、音は違う」と言っていました。音の反撃が始まったようです。
――実際の音はどうでしたか?
麻倉氏:低域から高域までf得(requency response:周波数特性)が良好で、歯切れも良かったです。スピーカーに力を入れた84V型よりもまとまっている印象でした。
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