レビュー
» 2013年03月21日 21時17分 UPDATE

山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」:時代は変わってもノウハウは生きる、マランツ「NA-11S1」で聴くハイレゾ音源の“静寂” (1/2)

マランツの設立60周年記念モデルとして企画された「NA-11S1」は、ネットワークオーディオプレーヤーとUSB DACという2つの顔を持つ高級機。注目度も高い本機をじっくりと試聴した。

[山本浩司,ITmedia]

 音のよい高級ネットワークオーディオプレーヤーというと、「KLIMAX DS」の提案があった2007年以来、長らくリン(英国)の独壇場だった。しかし、今年(2013年)に入ってマランツ、コード(英国)、アコースティックアーツ(ドイツ)など国内外のハイエンド・ブランドから力の入った興味深い高級ネットワークオーディオプレーヤーが次々に発表され、熱心なファンの耳目を集めているようだ。

 なかでもわが国を代表するオーディオ専業メーカー、マランツから登場した「NA-11S1」の注目度はひときわ高い。市場導入後間もないが、実際よく売れていると聞く。本機の概要を一言でいうと、同社設立60周年記念モデルとして企画された、ネットワークオーディオプレーヤーとUSB入力付D/Aコンバーターの2つの顔を持った製品ということになるだろう。

ts_na11s01.jpg 「NA-11S1」。価格は34万6500円

 筆者は2008年にリン「KLIMAX DS」(現在はDS/K)を購入し、かれこれ5年近く高品位ネットワークオーディオ再生に親しんでいる。CDで蒐集した自分の音楽コレクションをNAS(=DLNAミュージックサーバー)に取り込んでアーカイブ化、洗練された操作アプリをiPhoneなどの外部コントローラーにダウンロードして、聴きたい音源を自由自在に選曲して聴くたのしさにまずハマったが、それに加えて近年では、インターネットで配信されるCDフォーマット(サンプリング周波数44.1kHz/量子化16ビット)を超えるハイビット・ハイサンプリングのハイレゾリューション音源をダウンロードして聴く面白さに夢中になっている。

 アマチュアの音楽ファンにとって「スタジオマスター」を自室で聴くことは、これまで夢のまた夢だったわけだが、それがハイレゾ・ミュージックファイル配信によって身近になってきたわけで、このことの意義は21世紀ハイファイ・オーディオを考える上でとても重要なことではないかと思う。

 当初はリン傘下の「LINN Records」や「HD Tracks」などの海外音楽配信サイトから供給されるインディペンデント系音楽レーベルの作品しかハイレゾファイルの入手はかなわなかった。しかし昨年来、わが国の高品位音楽配信サイトe-onkyo music によって、ユニバーサルやワーナー、ビクターエンタテインメントなどのメジャー系音楽レーベルを有する巨大レコード会社(という言い方もヘンな感じになってきたが)のハイレゾ音源がWAVやFLACファイルで入手できるようになり、にわかに注目度が増している状況だ。各社から音質を磨き上げたネットワークオーディオプレーヤーやUSB DACが次々に登場してきたのは、そんな背景があってこそ、なのである。

ts_sap01.jpg SACD/CDプレーヤーの「SA-11S3」

 本機NA-11S1のアピアランス(見た目)は、音のよさで定評のあるSACD/CDプレーヤー「SA-11S3」にうりふたつだ。DACチップもSA-11S3と同じ24bitタイプの電流出力型バーブラウン「DSD1792A」が採用されている。最新の32bit DACではなく24bit型が採用されているのは、もちろんコストを勘案してのことではなく「音がよい」から。DSD1792Aは許容出力電流がきわめて大きく、32ビットDACよりも音に力と勢いがあり、自分たちが指向する音の傾向に近いのだと同社技術陣は言う。

 しかし、NA-11S1にはSA-11S3と大きく設計思想が異なる点がある。それは、アイソレーションとフィルタリングに細心の注意が払われていることだ。自己完結するディスクプレーヤーと違って、NASやPCなどとの連携が必須となる本機にとって、外部機器からのノイズ遮断はきわめてシビアな課題。この設計思想は、きわめて真っ当かつ重要なものと言っていいだろう。

ts_marantz06.jpgts_marantz012.jpg 大容量トロイダルコアトランスは、不要輻射を抑える銅メッキシールドケースに封入(左)。USB B端子入力部の基板には8素子18回路ものデジタル・アイソレーターを使用。PCからの信号ラインおよびグラウンドの双方をメイン回路から電気的(直流的)に絶縁してノイズの流入を防ぐ(右)

 本機のイーサネット入力を用いたネットワーク再生時の対応ファイルは、192kHz/24bitまでのWAV、FLACファイルなどとなる。ネットワーク環境に本機を置き、NASに収めている愛聴ハイレゾファイルをいくつか聴いてみた。低域から中低域にかけて厚みと力感を実感させる本格派のサウンドで、なるほど老舗の専業メーカーが手がけて製品ならではの確かな手応えを感じさせる。とくにクラシック音楽との相性は抜群で、オーケストラの雄大なひびき、グランカッサ(大太鼓)の腰砕けにならない力強い再現性にこの製品のたぐいまれな実力の高さを思い知った。やはり筐体(きょうたい)設計や電源回路等に長年培ってきた独自のノウハウがあるからこその音、なのだろう。

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