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» 2013年04月21日 18時34分 UPDATE

本田雅一のIFA GPCリポート:“4K”推進で一致した家電業界、その道のりに横たわる多くの課題 (1/2)

これまで進む方向が見えていなかった”フルHDのその先”だが、イタリアで開催されたIFAの「Global Press Conference」では、業界全体が4K2Kにフォーカスを定めたことが浮き彫りになった。しかし同時に、関係者は「問題は少なくない」と口をそろえる。

[本田雅一,ITmedia]

 今や世界最大の家電ショーとなった「IFA」。その運営母体であるベルリンメッセは、市場調査会社のGfKと共同で、世界各国から家電関連の報道関係者を集め、市場動向に関して情報交換を行う「Global Press Conference」(以下、GPC)を毎年春に開催している。例年、欧州各国で順に開催されているが、今年はイタリア・サルディーニャ島カリアリ郊外で開催され、約50カ国から300人のプレスが集まった。白物家電からAV製品、モバイル機器まで、今年の製品トレンド、市場動向などが話し合われたが、この中からまずはテレビ関連の話題についてお伝えすることにしたい。

ts_gpc01.jpgts_gpc02.jpg 熱気あふれる「Global Press Conference」の会場。約50カ国から300人のプレスが集まった

 昨年秋から製品発表ベースでも目立ち始めた4K2Kパネルを採用したテレビへのトレンド。この流れが、1月にラスベガスで開催された「2013 International CES」で明確になったことを受け、本格的に4K2Kに向けて業界全体が動き始めている。これまで進む方向が見えていなかった”フルHDのその先”だが、放送、ブロードバンド通信、デジタルメディアの多様化など、さまざまなアプローチで4K2Kパネルを生かす方向で共通認識がまとまってきた。

 ソニーなどが業務用機器を含め各方面にアプローチしたこともきっかけの1つだが、急に動き始めたのはCESで、中国メーカーが4K2Kへと向かう強い意思表示をしたことも大きい。CESに展示したハイセンス、ハイアール、TCLなどの中国メーカーは、そのすべてが4K2Kテレビを展示。液晶パネルも中国で生産されている。このため4K2Kテレビに必要な部材費が急速に下がることが予想される。

 また次世代テレビとして期待された有機ELディスプレイの生産性が予想以上に低く、当面、大型パネル化に関してあまり大きな期待ができそうにないという背景もある。GPCに参加したディスプレイサーチのアナリストは、大型の有機ELディスプレイ(55インチ)の歩留まりを10%以下と予測。2013年の出荷は5万台にとどまるという見通しを語った。2015年になると出荷台数は270万台まで増えるものの、画面サイズは55インチのままだろうと予想している。

ts_gpc03.jpgts_gpc04.jpg ディスプレイサーチの出荷予測。60インチ以上の有機ELは2016年以降にやっと出てくる

 これだけ歩留まりが低いと、いくら次世代の高画質、超薄型の低消費電力と訴求したところで簡単に生産を立ち上げていくことはできない。世の中に明らかに解像度の高い高スペックの液晶テレビが存在するのに、それよりも高価でサイズも小さめなフルHDの有機ELテレビの価格を正当化するのは難しいからだ。

 韓国メーカーは収益性が下がっている液晶パネルから有機ELパネルへの移行を急ぎたかったが、この道を断念して4K2Kへと狙いを定めた。GPCにはSamsung Electronics(以下サムスン)もメーカーとして参加しているが、彼ら自身が今後の力点として4K2Kをキーワードに挙げていた。パナソニックの4K2Kに対するアプローチが明確ではないが、それを除けば世界の主要なテレビメーカーは、日中韓がそろって4K2Kへと歩み始めたことになる。

 サムスンの欧州担当テレビセールス&マーケティングディレクター、マイケル・ゾエラー氏は、「テレビの大型化が進む中で、UHD(日本以外では4K2K解像度をUltra HD = UHDと表示することが定着している)化は自然な流れだ」と主張した。46インチのフルHDテレビは1インチあたり46画素(46PPI)の画素密度だが、85インチでは26PPI、110インチでは20PPIまで落ちてしまうからだ。しかしUHDならば、それぞれ52PPI、40PPIとなり、現在主流のフルHDテレビと同程度になるからというのがその根拠だ。もちろん、この数字は視聴距離にも依存するが、大型パネルほど高解像度への要求が高いことは確かだ。

ts_gpc06.jpgts_gpc05.jpg サムスンの欧州担当テレビセールス&マーケティングディレクター、マイケル・ゾエラー氏。フルHDのままでは大画面化によって画素密度が下がり、精細感をなくしてしまうと指摘した

 ただし、関係者達は一様に「問題は少なくない」と認める。4K2K化に関しての問題は実に多岐にわたっていて複雑だ。例えば外部機器を接続するHDMI規格は、4K2Kを24fpsもしくは30fpsでしか伝送できず、カラーフォーマットも4:2:2の8ビットが上限だ。4K2Kで60fpsを実現しようとするなら、HDMI 2.0の定義を待たねばならない。しかし、もっとも大きな問題はコンテンツだろう。

 まず放送。日本で2014年にCSデジタル放送を用い、スカパー!が4K2Kの実験放送を開始することを明らかにしているが、地上波での放送は見込みが立っていない。また、欧州でも今年中には実験用の電波が出されるとのことだが、本格的には2016年“以降”(すなわち未定に近い)に帯域の問題が解決する見込みという。

 ただし、これらはあくまで実験ベースの話であり、本格的に放送局が4K2K対応機材を導入していくのか? というと、これはまったく別の問題になってくる。

 期待されるのはインターネットストリーミングだ。新たに高効率圧縮規格の「HEVC」が定義されたことが大きな可能性を開いているが、実際にそれがビジネスとなっていくには、4K2K対応のHEVCデコーダーを利用できる機器の普及が前提となる。対応デコーダーが各製品のLSIに統合されるのは2013年後半で、製品に組み込まれるのはその1年後となるだろう。

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