ITmedia NEWS >

「オーディオの常識に真っ向から挑戦する」、オラソニック「NANOCOMPO」の非常識っぷり(1/2 ページ)

» 2013年04月23日 19時59分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 2012年10月、「オーディオ&ホームシアター展 2012」の会場で催された新製品発表会。東和電子の山本喜則社長は、小型オーディオコンポの新シリーズ「NANOCOMPO」(ナノコンポ)を発表し、「オーディオの常識に真っ向から挑戦する」と宣言した(→関連記事)。

 あれから半年が経過し、いよいよ製品第1弾のUSB-DAC内蔵プリメインアンプ「NANO-UA1」が店頭に並ぶ。果たしてオーディオの常識を覆すことはできたのか。山本社長に話を聞いた。

「NANOCOMPO」と東和電子の山本喜則社長

 NANOCOMPOのコンセプトは明快だ。年々、緩やかな右肩下がりになっているオーディオ市場にあって、近年注目を集めているのはヘッドフォン/イヤフォンなどのモバイル機器、そしてPCオーディオのように手軽に良い音が楽しめるソリューション。市場のニーズは、ハードルの高い大型の高級オーディオ機器ではなく、小型で場所を選ばず、PCとの親和性の高い製品にあるという。

 もちろん、高級オーディオが“高級”である所以(ゆえん)は、惜しげもなく物量を投じ、コストをかけて音を追求しているからであり、その点で低価格の小型オーディオが対抗するのは難しい。ただし、この時の発表が真実味を持って受け取られたのは、Olasonicブランドの製品が、最初のPCスピーカー「TW-S7」以来、「見た目からは想像できない」「異様なほど音がいい」など、従来の枠に収まらない製品と評価されてきたからだろう。

非常識な低域

 山本社長は、「NANO-UA1」に英KEFの小型スピーカー「LS50」(2本で11万5500円)を繋ぎながら、小型スピーカーをめぐる“常識”について話した。「一般的に、小型のコンポにはブックシェルフ型のような小型スピーカーが組み合わされます。しかし、小型のスピーカーというのはもともと低音が出にくく、能率も低いもの。実力を発揮させようと思えば、本来は100万円クラスのパワーアンプが必要です」(山本氏)。

 アンプを既に持っている人は別として、10万円のスピーカーのために100万円のアンプを購入する人はあまりいないだろう。このため、試聴時にはすごく気に入ったスピーカーなのに、自宅では思うような音が出ないといったことが起きると山本氏は指摘する。

 「お店のデモ機をよく見ると、ブックシェルフ型でも実はかなり良いアンプがつながっているんです。バランスをとって購入したつもりが、実はアンバランスだったというのは珍しいことではありません」(山本氏)。われわれ消費者が考えがちな“価格のバランス”と、実際の“音のバランス”は全く違うということだ。

試聴中。横にあるシルバーのNANOCOMPOは、昨年の「オーディオ&ホームシアター展 2012」で公開した試作機だ(左)。Mac用の定番ハイレゾ再生ソフト「Audirvana」で設定。といっても出力先をプルダウンで選ぶだけ(右)

 しかし、そうなると7万3500円の「NANO-UA1」は、もっと分が悪いはずだが、実際にLS50が音を出し始めると、不思議なほど豊かな低域に驚かされた。中高域の解像感や透明感も上々で、ゆったりとした低域が全体の質を高めているよう。素性の良いスピーカーを余裕を持って駆動しているといった印象を受ける。

 「NANO-UA1には、これまでの卵形スピーカーなどと同様、独自のSCDS(Super Charged Drive System)を取り入れています。音楽信号の波形は一定ではないので、小さな波のときに余った電気をキャパシターに蓄え、大きな波が来たときに放出する。これにより、小さな電源でも大きなパワーが取り出せます」(山本氏)。

 NANO-UA1のカタログには、出力を「ダイナミックパワー」と表記している。それでも26ワット(4オーム時)という数字は決して大きくはないが、100ワットのアンプでも26ワットで駆動する機会は多くないから、リビングルームには必要十分な数字といえるだろう。

 「音楽には抑揚があるのが普通です。その波を利用するSCDSは、いわば音楽に特化したアンプ技術。逆に、信号を入れたらとにかくパワーが出るようになっている従来型のアンプは、“音楽のことを考えていない”といえるかもしれません」(山本氏)。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.