インタビュー
» 2013年05月09日 00時05分 UPDATE

“音のソムリエ”に聞くフィリップスの音作り、そして新イヤフォン「S2」 (1/2)

フィリップスには、「ゴールデンイヤー」と呼ばれるサウンドエンジニア認定制度があり、同社のオーディオ製品開発に深く関わっている。同社の製品開発と新製品のイヤフォンについて詳しく聞いた。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 フィリップス エレクトロニクス ジャパンは、4月中旬に新しいカナル型イヤフォン「S1/S2」を発表した。同社が2011年から展開しているオーディオブランド「Fidelio」(フィデリオ)を冠した初のインイヤー型で、“多層構造”の振動板を採用した意欲作だ。来日したフィリップスの「ゴールデンイヤー」の1人、コンシューマーライフスタイルのサウンド&アコースティックス シニアマネージャー、Matthew Dore(マシュー・ドーレ)氏に話を聞いた。

ts_s2philips05.jpg フィリップスの「ゴールデンイヤー」の1人、Matthew Dore(マシュー・ドーレ)氏

 ドーレ氏は、Fidelio製品など多くの製品開発に携わる一方、「ゴールデンイヤー」と呼ばれるフィリップスのサウンドエンジニア認定制度において、認証試験の開発にも関わった人物だ。ゴールデンイヤーは“音のソムリエ”ともいわれ、音を聞き分ける高い技能を身につけており、同社のオーディオ製品開発に深く関わる。ゴールデンイヤーは現在、欧州に10人、アジアパシフィックに47人。アジアが多いのは、同社の開発拠点が3つ(中国、香港、シンガポール)あるからだ。

 「フィリップスでは、試作機ができると社内のゴールデンイヤーを集めてブラインドテストを行います。そこで65%以上のゴールデンイヤーが『競合製品より良い音』と判断しなければ、製品が次のステップへ進むことはできません。これを初期のプロトタイプから製品化に至る過程のすべてで行います」。

 ブラインドテストで比較に用いられる競合製品は、製品コンセプトやサイズ、価格、ターゲットユーザーが近いことに加え、市場で“売れ筋”と言われているものをピックアップする。ゴールデンイヤーたちはテストする製品を知らされないまま集められ、同じリスニング環境で試聴、評価するという。

ts_s2philips04.jpgts_s2philips03.jpg Bluetoothスピーカー「P9」とプロトタイプ。この段階で先に音の方向性が決まる

 もう1つ注目したいのは、製品企画の初期段階でゴールデンイヤーによるベンチマークテストを行い、その後で製品の方向性が決められること。デザインが決まるのは、その後。しかも「デザイナーと音響エンジニアが手を取り合って、音の質とデザインを決める」(同氏)という。つまり、デザイン優先で音がないがしろにされるような製品はありえない。

 同社でゴールデンイヤーの制度が始まったのは3年前。目的は「社内に信頼のおける耳を持つ人を育て、一貫した意見をもらうこと」とドーレ氏は話す。「われわれは全世界で消費者のブラインドテストを行い、すべての消費者が心地よく感じる音は、実は狭いレンジの集中していることが分かりました。音楽家が伝えたい音、レコーディングする人が感じた微妙な違いを感じられるか。それ以上に重要なのは、製品の大きさに関わらず、購入した人に驚きをもたらすことができるか。それには、一貫した意見が必要です」。

 ゴールデンイヤーを育てるため、同社はトレーニングとテストを繰り返すソフトウェアを自社開発し、社内の人間であれば誰でもアクセスできるようにした。このため、ゴールデンイヤーの資格を持つのはサウンドエンジニアに限らない。社員であれば、どのような職種でもテストを受けることができるという。

 トレーニングソフトは、音を5つの分野に分け、それそれに練習問題とテストを繰り返す。例えば、楽曲を聴いて「どの音域がブーストされているか」、逆に「どの音域がカットされているか」といった問題が出る。受講者のレベルによって難易度は異なり、初期のブロンズレベルでは低域・中域・高域の3つにしか分かれていなかったものが、ゴールドレベルは9つに、さらに最上位のプラチナレベルになると27にもなる。この厳しいテストが、フィリップス製品のクオリティを担保している。

 「ちなみに最後のテストは、10回のテストを繰り返して1回でも間違えると前に戻らなければなりません」(ドーレ氏)。

ts_s2philips01.jpgts_s2philips02.jpg ブロンズ、シルバー、ゴールド、そしてプラチナレベルとどこかの聖闘士のようなランク分けがある。左はブロンズレベル、右はプラチナレベルの問題だ

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