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小さいのに大きな存在感! フォステクス「GX100Limited」で聴く“天才少女”の歌声潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)

» 2013年08月05日 15時32分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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 スモール・バット・マイティ……山椒は小粒でピリリと辛い、成りは小さくても大きいものには負けないぞという面白さが好きで小さくて凝縮感のあるものを見るとつい、手にしてしまう。だから小さな車や精巧な小道具に偏愛が湧くこともしばしばだった。アナログオーディオ時代、フォノカートリッジをいくつも並べていたのはお仕事のせいだけではなかったと思う。

 だからスピーカーの小型モデルに出会うと、ついその気になってしまう。といってもディスカウンターで売られているような2本で5000円といった中途半端な製品ではない。コンパクトでも作り手の強い意志と、音に対する本気度が現れている物に限る。

フォステクス「GX100Limited」

 時に1本何十万円という破格のスピーカーに出会うこともある。ここまで来ると作り手の意地とこだわりも尋常ではないが、それだと使い手も限定する。こだわりは必要だが、度が過ぎるといささかの嫌みにもなりかねない。その絶妙なバランスの中に収まっているスピーカーがここで紹介するフォステクスの「GX100Limited」だ。プライスは1本10万円だから、ステレオで使うと20万円になる。使用ユニットは10センチ口径のウーファーに20ミリ口径のツィーターを組み合わせた2Way。サイズはわずか161(幅)×291(高さ)×225(奥行き)ミリで重量は6.1キログラムだ。

 20万円の予算ならもっと大きくどっしりとしたフロアスタンディング型のモデルも買える。というより、見栄えを取るなら大きい方がいいかもしれない。だけどこのモデルにはコンパクトながら物が分かる人の心を擽るさまざまな要素が注ぎ込まれている。

 GX100Limitedは2009年に発売された「GX-100」から4年目、ツィーターにマグネシウム振動板を使った昨年のモデル「GX100MA」に続くスペシャル・モデルである。一般的にLimitedと付けると限定生産品的なイメージが浮かぶが、フォステクスの設計陣は前作MAで出来なかったこと、すなわち“限界を打ち破る”という意味でこの名前をつけたと言うから、それならばUnlimitedが相応しいようにも思うが、それだと馴染まないのでスペシャルという思いをこの名前に託したらしい。

 それではどこがLimitedと呼ぶほど凄いのかというと、その1つがウーファーのコーンだ。前作MAで出来なかった純度99.9%のマグネシウムの振動板をここに採用した。新素材を使えばなんでも音が良くなるわけではなく、肝心なのはその素材の持ち味を生かし使いこなすことである。常に未来を見据える技術者にとって、新素材への憧れは挑戦であり進化するための命題でもあるのだ。

,純度99.9%のマグネシウム振動板を採用したウーファー(左)。同じく20ミリ径マグネシウム振動板のツィーター(右)

 マグネシウムは軽量である。しかも内部損失が大きいためコーンそのものの響きが少なく音が汚れないという、スピーカーにとって理想的な振動板だ。軽く動き分割振動も少ないので、電気信号を音響信号に変換する時のロスも減る。といいことづくめのようだが、マグネシウムは成形が難しい。とくにフォステクスが採用する剛性を高めるためのパラボラ状の加工を施すとなると、なおさらである。

周波数特性グラフ(出典:フォステクス)

 「GX100MA」にマグネシウムのコーンが使えなかったのは10センチ口径のユニットの開発が投資効果も含めて現実的なものではなかったからだろう。しかしながらどうしてもチャレンジしたいと願う開発陣の思いがプライスアップは伴ったもののついに実現した。20ミリ口径のマグネシウム振動板を持つツィーターとの音色の統一が可能になったことも彼らの思いの具現化である。

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