ソニー「BDV-N1WL」は、サラウンド(リア)スピーカー接続にワイヤレス方式を採用した5.1ch構成のホームシアターシステムだ。リアスピーカーの配線がきれに処理できないからサラウンドをあきらめたという人たちにはありがたい製品といえる。詳しくチェックしていこう。
リアスピーカーがワイヤレスといっても、厳密にはスピーカー自体がワイヤレス化されているわけではない。BDV-N1WLは、フロントとセンターのアンプを内蔵した本体と、別体のサラウンド用という2台のアンプが同梱(どうこん)されていて、相互の接続がワイヤレス方式になっている。
確かに、5.1chなどのサラウンドサウンドを自宅で楽しもうという場合には、リアスピーカーの接続が問題になるケースは少なくない。とくに、部屋の左右いずれかに入り口があるなど、スピーカーケーブルと動線が交差してしまう環境では、迂回させたり、ケーブルカバーを用いるなど、何らかの措置を講じる必要がある。
その対策としてワイヤレス接続を用いるのは誰しも考えることだが、スピーカーケーブルはワイヤレスになったとしても、その代わりに各々のスピーカーで電源接続が必要になってしまうため、かえって構成が複雑になる可能性もある。音声伝送はワイヤレスにできても、残念ながら送電はできないので仕方ない。今回の場合も、ホームシアターシステムの接続を全体的にシンプルにしてくれるものではなく、あくまでもフロントとリアという“2つの島”に切り離すためのものだと認識すべきだろう。
スピーカーはフロント左右とサラウンド左右が同じもので、ツィーター(20ミリ ソフトドーム型)、ウーファー(バスレフ型、80ミリ コーン型磁性流体スピーカー)というユニット構成になっており、すべて同一のスピーカー台が付属する。サイズは約100(幅)×435(高さ)×54(奥行き)ミリで、スタンドをつけた場合にも約140(幅)×455(高さ)×140(奥行き)ミリと比較的コンパクトだ。
センターは横置きが基本となっており、サイズは約365(幅)×75(高さ)×75(奥行き)ミリで、ツィーター(20ミリ ソフトドーム型)、ウーファー(バスレフ型、60ミリ コーン型磁性流体スピーカー×2)というユニット構成になっている。これら5本のスピーカーは壁掛けも可能で、まず設置に困ることはないだろうが、カジュアルなホームシアターシステムのつもり(実際、そのとおりなのだが)で購入した人は、約280(幅)×440(高さ)×280(奥行き)ミリ、約8キロというサブウーファーの大きさには少し驚くかもしれない。ただし、同時にこのどっしりとしたサブウーファーは、「BDV-N1WL」の音響に多大な貢献をしていることも確かだ。
フロント、サラウンドは同一と書いたが、一応どのスピーカーがどのポジションかは背面のラベルに示されている。これは、初心者でも接続に迷わないようにするためだろう。スピーカーケーブルも色分けされ、フロントとサラウンドに関しては、スピーカーのイルミネーションを点灯するためのコードも一緒になっている。ケーブル長はフロント用が3メートル、センター用が2メートル、サラウンド用が5メートルと十分な長さが確保されている。また、サブウーファーはパッシブ型で電源接続は不要だ。
ワイヤレス機能はフロント/サラウンドアンプに内蔵されているわけではなく、各々の背面に配置された専用スロットへ付属のワイヤレストランシーバー(EZW-RT20)を差し込む。このEZW-RT20は、同社のホームシアターシステム「HT-CT550W」のウーファーワイヤレス接続にも用いられていたもので、使用周波数帯域は、2.4GHz(2.4000GHz〜2.4835GHz)、通信方式はWireless sound Specification version 1.0となっている。
バランスのとれたサラウンドサウンドを楽しむためには、各スピーカーのレベル調節などの初期設定が非常に重要だが、一般的なユーザーにとっては、面倒な作業以外の何物でもないだろう。この製品では自動設定が可能で、音場測定用マイクも付属している。基本的には、通常のフロント/リア配置か、すべてのスピーカーをフロントへ配置するフロントサラウンドを選べば、あとは自動的に音を出力しながら測定・調節を行ってくれる。
音質的には、映画などのサラウンドサウンドを楽しむ場合には、かなり良好といえるだろう。こうした製品では、迫力を出そうとするあまり、低音がやかましく感じることも多々あるが、非常に自然な印象で、しかも、雷鳴などはしっかりと響かせ、臨場感を与えてくれる。また、この製品では映画再生だけではなく、音楽再生にも力を入れているということで、楽器類はともかく、ボーカルは確かにしっかりと定位し、伸びやかな音を聞かせてくれ、分離もしっかりしている。
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