インタビュー
» 2014年04月10日 12時53分 UPDATE

イノベーションは常に起こせる――エアブレード発表から見えたダイソンの姿 (1/2)

日本ではダイソンを“掃除機などの家電メーカー”と認識している人が多いと思うが、それは表面的に見える部分だけ。実は「空気を動かす」技術に特化した研究開発とエンジニアリングの企業だ。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 ダイソンの新製品発表には1つの特長がある。必ずといっていいほど「何人のエンジニアが何年をかけて開発した」という説明が付くのだ。国内の家電メーカーではほとんど語られない部分だが、ダイソンはさらに研究開発に投じた金額も公表する。ときには製作したプロトタイプの数、開発の過程で行った実験の回数までも明らかにする。

ts_james03.jpg エアブレード発表会の様子

 例えば4月9日に発表された「エアブレード」ハンドドライヤーシリーズは、「125人から成るダイソンのエンジニアチームが3年近くにわたり実施してきた集中的な研究開発と4000万ポンド(約68億円)の投資による成果」だ。プロトタイプの数は3300個以上、手洗い実験は2億1300万回以上も行われた。それを数えた人がいることにも驚かされるが、エンジニアたちの功績を評価し、そのための資金を重視する姿勢は新鮮だ。近年、コストダウンという“功績”ばかりが目立つ国内メーカーとは対照的に見えてしまう。

 同様の感想は誰もが抱くようで、新製品発表会の後で行われたラウンドテーブル(少人数のインタビュー)では、ダイソン氏に「日本企業へのアドバイス」を求める声が上がった。少し躊躇(ちゅうちょ)した後、ダイソン氏が話した内容は、「成功した大きな会社はイノベーションを伴う製品をローンチするのに大きな勇気がいる。しかしダイソンには、多くの、勇気と才能にあふれた若いエンジニアたちがいる」ということだった。

ts_james01.jpg ラウンドテーブル時のジェームズ・ダイソン氏

 自身もエンジニアであるジェームズ・ダイソン氏が4人の新卒エンジニアとともに「ウィルトシャーにやってきた」のが二十年以上前のこと(英国ウィルトシャー州のマルムズベリーで1993年に創業)。それが今では1000人を超えるまでになり、現在でもダイソン全社員の3分の1以上がエンジニアだ。今年も400人を採用するという。

 さらに同日発表された英国研究開発センターの拡張計画によると、新たに3000人の科学技術職を雇用する可能性がある。英国研究開発センターでは、新たに約2億5000万ポンド(約425億円)を投じ、4棟の研究開発施設を含むテクノロジー・キャンパスを建設する計画だ。実現すると、現在は毎週300万ポンド(約5億1000万円)とされる研究開発費用は倍増することになるが、ダイソン氏は「若い人たちの中で、エンジニアや研究者になりたいという人が少ない。それを支援したい」と話した。

ts_james07.jpg 英国研究開発センター

 若いエンジニアに対する支援はそれだけではない。ダイソン氏は、教育慈善団体「ジェームズダイソン財団」を設立し、全世界の若いエンジニアを対象に「日常の問題を解決するアイデア」を募集する「ジェームズ ダイソン アワード」(JDA)を実施している。一方で大学との連携も重視し、ケンブリッジ大学やインペリアル・カレッジなど英国内10校以上と協力体制を構築。「また大きな大学との共同プロジェクトを発表するつもりだ」という。「多くの大学に素晴らしい学科がある。しかし、素晴らしいアイデアを持っていても試作機を作る時間と場所がない。そこでインキュベーションの施設を提供する」。

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