開梱一番、重い。
これが「TA-A1ES」の第一印象である。横幅430ミリのサイズなのである程度の手応えは予想できるが、それにしてもこの重量には驚いた。まさに“開けてびっくり”である。昨年試作モデルを試聴した時には、そんなところまで気が回らなかった。実際自分でセッティングするわけではないので、お気楽なもんだったが、いやはや、わが視聴室にやってきたこのプリメインアンプは、プレーンな外観に似合わずドンと構えて見事な存在感を放っている。
ついでにいえば、スピーカーケーブルをつなぐ端子の異様な大きさにもたまげた。おそらくこんなパーツはないので、このモデルのために端子メーカーに特注したのだろう。使いやすくて良く締まるが、それにしてもでかい。
その割にフロントパネルはいたってシンプル。電源と入力切替、そしてヘッドフォン用のインピーダンス・セレクターとボリュームだけ。その潔さにほれぼれする。ボリュームの音量はLEDで表示、入力切り替えのスイッチを囲む照明も控えめで良いですなぁ。スリムなリモコンもおしゃれだ。
ソニーは昨年末「ハイレゾ」宣言を行った。これからは積極的にこの分野に取り組んでいくと表明したわけだ。だからこのプリメインアンプと同時にHDDを内蔵したネットワークプレーヤーをはじめ、対応機器が一気に登場したが、今回ハイエンドの製品に与える“ES”を付けたのはプリメインアンプとネットワークプレーヤー「HAP-Z1ES」の2モデルだけ。本格的な2チャンネル仕様のプリメインアンプは14年振りのリリースとなる。
それだけに気合十分。外観同様シンプルでスマートな回路設計を行い、ピュアなサウンドの獲得に努めていることがこのモデルの一番の特徴だろう。プリ部分にはオペアンプを一切使わず、総てディスクリートで構成している。また、とかく音質劣化の要因になりやすいボリュームに関しては、電子式ながらJRCと共同で開発したバッファーアンプとの巧みな組み合わせにより、クオリティー重視の姿勢を貫いている。さらに左右チャンネルのばらつきを徹底して抑え、0.25dBステップで使える精度を実現していることもポイントだが、実際には0.5dBステップで動作させる使い勝手の良い設計がなされている。
パワーアンプ部は出力素子に電流容量の多いバイポーラ型のトランジスタを用いているが、シングル・プッシュプルというシンプルな構成で音の純度を追及している。出力は80ワット+80ワットだが、実使用上の不都合はまったくなく、ドライブ能力に優れていることも確認済みだ。このほか、従来安定した動作を得るために使われていた発振防止のコイルや位相補正用のコンデンサを取り除き、高域までスムースな表現力を身につけている。とかくハイレゾ対応というと周波数レンジに目が奪われがちだが、このモデルはアンプとしての基礎体力と質感のアップに注力されていることがうれしい。
出力段はボリューム位置でバイアス電流が変化する「スマート・バイアスコントロール」と呼ぶ準A級で動作する。1〜10ワットまでが純A級、それ以上の出力になるとAB級になる。ほとんどの場合10ワット以上になることはないのでずっとA級動作で使用するユーザーも少なくないだろう。そのため発熱する。ボンネットを触っても熱々とまではならないが、くれぐれも天板にCDプレーヤーなどのソース機器を載せて使わないように。放熱には細心の注意を払いたい。
大型のトロイダル型電源トランスと大容量のコンデンサーがしっかりと出力段を支えるほか、剛性の高いシンメトリー構造のシャーシが安定感のある音作りに結実している。またこうしたレイアウトの特徴を生かし、信号処理回路の最短配線を行ってSN感を改善している。
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