連載
» 2014年04月23日 16時02分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:世界が注視する日本の4K――「miptv」リポート(前編) (1/2)

仏カンヌで開催された国際的な番組トレードショー「miptv」では、4Kコンテンツ制作に関するいくつかの興味深い動きがあった。オーディオ・ビジュアル評論家・麻倉怜士氏の現地リポートをお届けしよう。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 国内では4Kテレビの新製品が相次いで発表されたが、一方で「コンテンツ不在」を指摘する声は相変わらず多い。確かに、いくらパネル技術や超解像技術が進化しても、ネイティブコンテンツが持つ訴求力にはかなわないだろう。そんな中、仏カンヌで開催された「miptv」では、4Kコンテンツ制作に関するいくつかの興味深い動きがあった。オーディオ・ビジュアル評論家・麻倉怜士氏がリポート。

ts_miptv05.jpgts_miptv012.jpg 「miptv」の会場(左)と4月8日のプログラム。朝早くから夕方までみっちり講演が用意されている(右)

麻倉氏: 4月7日から10日にかけ、フランスのカンヌで放送局のための国際的な番組トレードショー「miptv」が開催されました。miptvは、世界各国の放送局から担当者が訪れ、テレビ番組やフォーマット(番組の骨子と作り方マニュアル)の売買を行う場です。国際的な文化交流の場という側面もあり、私は日本からどのようなコンテンツが世界に出て行くのか、毎年とても興味深く見ています。

 miptvでは毎年、大きな技術的テーマを1つ選び、パネルディスカッションなどを通じて議論を深めます。2012年は3D、2013年は4K推進でしたが、今年も4Kで、それが本格化した印象です。展示会場では、日本の一般社団法人「次世代放送推進フォーラム」(NexTV-F)がブースを構え、日本の4K/8K推進計画を大々的にPRしていました。

 その対面にはソニーがプロデュースした4Kシアターが設置され、実際の映像を見ることもできます。また多くのパネルディスカッションや関連するセミナーも出し物は日本が中心でした。mipTVは放送局の番組を売りたい人、買いたい人たちが集まるので、世界に先駆けて4K放送を実施する日本の状況に注目が集まっていました。

昨年とは違う“4K”の状況

麻倉氏: 日本にいると、6月の4K実験放送が目前に迫り、4Kへの流れが見えはじめていますが、世界的に見ると日本だけが突出している状況です。同じく4Kを推進している韓国も、試験放送の計画はあっても実際のスケジュールはできていません。

 実際、昨年はコンベンションセンターの上層階にあるシアターで1日だけ4Kセミナーが行われたのですが、さほど盛り上がってはいませんでした。しかし、昨年秋に開催された姉妹イベント「mip com」で初めてメイン会場を使い、大々的に4K関連の展示やパネルディスカッションを行ったところ盛況だったため、今回はNexTV-Fを加えて“2本立て”にしたそうです。

――NexTV-Fでは、どのような展示をしていたのでしょう

麻倉氏: 昨年、各放送局が補助金を使って作成した4K番組を2分程度ずつ抜粋し、15分ほどにまとめたクリップを上映していました。

ts_miptv07.jpg 麻倉氏(左)

 NHKの番組は“富士山”をテーマにしたもの、日本テレビは東京ドームのプロ野球中継、TBSは「世界遺産」とバレエ。熊川哲也さんの「くるみ割り人形」でした。またフジテレビはゴルフの「フジサンケイクラシック」、スカパーJSATはサッカーです。中でもNHKの富士山は、遠景あり、近景あり、柿田川ありの美しい映像、静的ですが4Kらしい解像感と階調感がありました。とくにすばらしいのは柿田川の透明度の高さ。水の質感も非常にクリアでした。

 一方、日本テレビのプロ野球映像を見ると、4Kで臨場感が増したことが分かります。昔のプロ野球中継は、キャッチャーの後ろにカメラがありましたよね。1990年代に高倍率ズームレンズが登場し、逆側から撮影できるようになり、バッターとキャッチャーがカメラのほうを向くようになりました。さらに4Kになると、どうなるか。バースが広い中でピッチャーとキャッチャーがどう動いているかが分かり、臨場感が断然増すのです。ただ、中焦点までは4K用のレンズを使えるのですが、ロング用の4Kレンズはまだ存在せず、このため解像感やコントラストが明らかに変化するシーンがありました。今後は4K用のロングレンズが求められるでしょう。

 TBSの「世界遺産」はスタンダードな4Kコンテンツですが、4Kカメラの描写力を持って世界遺産を撮影すると表現力がまったく違います。とくに色の階調性が“真”に迫ります。一方のバレエは、引いたアングルで舞台全体を見せるカットが多いのですが、それでも筋肉や衣装の動きもよく分かります。バレエはSDの時代からアップで撮らないため、当時はボケボケでした。なので4Kとの相性は抜群に良いですね。

 フジテレビのゴルフは解像度の高さが生きていました。ゴルフ場の芝生の1本1本まで判別でき、選手とカメラの位置関係も良く分かります。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.