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オープンかクローズドか――ヘッドフォン・バイヤーズガイド2014“春”(実売3万円〜5万円編)三匹が聴く!(1/2 ページ)

» 2014年05月26日 10時00分 公開
[ITmedia]
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 ヘッドフォン・バイヤーズガイドの4回目は実売3万円から5万円の価格帯を取り上げよう。各社の高級モデルが並ぶ中、もっとも評価が高かったのは、あの製品だった。


 その前に恒例「野村ケンジのアドバイスコーナー」。前回の開放型に続き、今回は「密閉型」を解説してもらった。

――今回は「密閉型」です。

野村氏: 密閉型、クローズドなどと呼ばれますが、密閉されていないハウジングを持つ製品を指します。

 メリットとしては、やはり音漏れが抑えられること。ヘッドフォンを屋外で使用する場合、あるいはレコーディングスタジオでは基本的に密閉型でないとダメです。

 音質的には独特のウォーム感のある音になるため、好き嫌いの分かれるところかもしれません。またスピーカーユニット本来の音というより、ハウジングを含めたトータルな音になりますので、作り込みに関してはメーカー各社の特長が出やすい製品といえますね。

――メーカーの腕の見せ所ですね

野村氏: そうです。デメリットは、“良い音”にするにはそれなりのノウハウがいるという点でしょう。

 あと注意点として、ハウジング内のエアーを多少抜かないと振動板が動きにくくなるため、エア抜きのダクトを設けている製品も存在します。例えばソニーの「MDR-1R」はエアーダクト付きで、純粋な密閉型ではありません。こうした製品の場合、音が漏れる可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。

――次回はいよいよ最終回です。テーマは何にしましょう。

野村氏: ええと、後で考えます。

 そんな思慮深い野村氏を含むレビュアーは以下の3人だ。

レビュアー紹介

野村ケンジ(のむら けんじ)

弊誌連載「ぶらんにゅ〜AV Review」でおなじみ、年間500本を超えるイヤフォン/ヘッドフォンを試聴・評価する気鋭のオーディオライター。某レーベルのアニソン・ハイレゾ配信を影で支えるスーパーバイザーでもある。


坂井香(さかい かおり)

タレント/モデル/DJ/ヘッドフォン女子。DJ名「@KAOPANGw」(かおぱん)としても知られる。音大出身で特技はピアノ。一方、筋トレやマラソンが好きというアクティブな一面もあり、最近ついにフルマラソンを完走した。拍手。


滝田勝紀(たきた まさき)

弊誌連載「白物家電、スゴイ技術」担当ライター。約10年間、某モノ雑誌編集部で白物家電やヘッドフォン担当として活躍した後、フリーランスに。「All About」では家電ガイドとして活動、「家電AWARD」の審査員も務める。



 今回、取り上げる製品は以下の4機種。2012年発売のデノン「AM-D600EM」が少し値下がりしていたが、例によってそのまま掲載する。なお、AKG「K712 PRO」とフィリップス「Fidelio X1」は開放型、B&W「P7」とデノンの「AH-D600EM」は密閉型となっている。

ブランド 製品名 再生周波数帯域 インピーダンス 感度 販売価格
AKG K712 PRO 10〜3万9800Hz 62オーム 93dB 4万824円
フィリップス Fidelio X1 10〜4万Hz 30オーム 100dB 4万5223円
B&W P7 10〜2万Hz 22オーム 111dB 4万7109円
デノン AH-D600EM 5〜4万5000Hz 25オーム 108dB 2万9000円

AKG「K712 PRO」

AKG「K712 PRO」

 AKGブランドのプロフェッショナル向けヘッドフォン。今年2月に「K812」が登場するまではハイエンド商品という位置づけだった。オーストリアのウィーンで熟練した職人が手作業で組み立て、製品には固有のシリアルナンバーが記される。さらに厳格な出荷検査や2年間の長期保証といった点もプロ向けの高級モデルならでは。

 製品としてはモニタリング用のオープンエアー型で、振動板は異なる2種類の素材を組み合わせた「TWO-LAYERダイヤフラム」構造。中心部と外縁部で厚みを変える独自の「バリモーション・テクノロジー」、リボン状のワイヤーを使用したフラットワイヤー・ボイスコイルなど多くの独自技術が盛り込まれている。

 イヤーパッドは耳全体をすっぽりと覆うアラウンドイヤータイプ。パッドは低反発素材、表面は滑らかなベロア素材を使っていて、取り外して手洗いも可能だ。ヘッドバンドはソフトな本皮製。ケーブルは着脱式で、ストレートケーブルとカールコードの2種類が付属する。

野村 ☆☆☆☆

音だけなら確実に5点。販路が楽器店などに限られるのがもったいない。新世代なKシリーズのサウンドは冷静な音で、ドライバーが新しくなった分、クオリティも高い。低反発ウレタンも気持ちよく、音の良さがより装着感で高まる。


坂井 ☆☆☆☆☆

ルックス的には近くても、中身は「K701」とはまったくの別物。サウンドバランスが良くて、音の解像感もあり、個人的にすごく好き。iPhoneから直接でも十分よかったけど、ポタアンを通して聴くことで、その良さは際立つ。


滝田 ☆☆☆☆

装着感、軽さともかなり理想に近い感じ。見た目もオレンジのコードなど派手なのに、音に派手さはないので、打ち込み系はちょっと物足りないかも。低音から高音まで忠実に再現し、音は自然の一言。長く聴いていられる点も高評価。



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