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» 2014年08月01日 14時00分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:4Kネイティブ映像がもたらす“リアリティー”の世界 (1/3)

6月2日にスタートした4K試験放送「Channel 4K」。さっそくシャープ「TU-UD1000」を自宅シアタールームに導入したAV評論家・麻倉怜士氏にその魅力を聞いた。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 6月2日にスタートした4K試験放送「Channel 4K」。7月からは全編を視聴できる“フル尺”放送となり、いよいよ4Kネイティブ放送が自宅でも存分に楽しめるようになった。さっそくシャープ「TU-UD1000」を自宅シアタールームに導入したというAV評論家・麻倉怜士氏にその魅力を聞いた。

ts_enma_channel4k15.jpg シャープ「TU-UD1000」と麻倉怜士氏

麻倉氏: 「Channel 4K」は現在、13時から19時までの時間帯に2〜3番組を放送しています。私は6月2日の放送初日から視聴する機会がありましたが、そのときは1番組を2分程度にまとめたダイジェスト版だけでした。、それが7月に入ってから番組の全編を見られるようになったので、改めてインプレッションをお届けしたいと思います。

――放送番組が4Kになって、何が変わりますか?

麻倉氏: 「結論からいうと、4Kでは“表現できる世界”の範囲が2Kに比べて非常に広がったと感じています。例えばSDからフルHDへの移行では、画素数として6倍ほどの差がありましたが、今回のフルHDから4Kへの変化では4倍です。SDからの移行では情報が圧倒的に増えた印象でしたが、4Kでは情報量の増加もさることながら、情緒性といいますか、感覚に訴える表現力の幅が広がったように思います。それは、例えば画面の中で感じる距離感、奥行き感、空気感といわれる部分。まるで現場にいるような雰囲気が感じられます。

 もう1つは、コンテンツとしての訴求力向上です。後で取り上げる「Colors of Hollywood」(WOWOW)などは絢爛豪華(けんらんごうか)な色とコントラストで、官能的な感覚すら画面から伝わってきます。またスポーツ中継では、これまで見えていなかった部分が見えることで“のめり込む”度合いが上がりました。例えばサッカーのフォーメーションが手に取るように分かり、選手の闘争心が表情から読み取れたりと、これまでより試合に没入できる要素が増えています。人の感覚に訴求するリッチなコンテンツですね。フルHDへの移行も感動的でしたが、今思えば、まだ冷静でしたね。今回は没入感がたいへん上がっています。

 それでは、コンテンツを1つずつ紹介していきましょう。

「Venitia's LIFE 〜心の庭にたどり着くまで〜」(スカパーJSAT)

麻倉氏: 「Venitia's LIFE」は、イギリスの貴族出身で京都の山里の大原に魅了され、移住したベニシアさんの生活を描いたドキュメンタリーです。ベニシアさんはNHKでも何度か取り上げ、ご存じの人も多いのではないでしょうか。

 古民家の日本らしい佇まいの中、料理をするベニシアさん。NHKの番組は、よりドキュメンタリータッチでダイナミックでしたが、今回は落ち着いたカメラワークです。この静かさこそ4Kですね。。例えばフルHDなら、ズームやカット割りを多用すると思いますが、4Kでは動きを最小限にした固定カメラ撮影が多く、静謐(せいひつ)な映像です。画面からベニシアさんのパーソナリティーまで伝わってくるようで、アップになったときのシワさえもやさしい人柄を表していました。

 ライティングは自然照明を巧みに使い、暗部の再現性もとてもいい。アップライトピアノが出てくるのですが、その光の反射が美しい。それを単に情報として伝えるだけではなく、情緒性も加わって大原生活の豊かさをとても感じる映像になっていました。トータルで4Kの良さを活かした映像といえるでしょう。

4K「Colors of Hollywood」(WOWOW)

ts_enma_channel4k04.jpg 4K「Colors of Hollywood」 制作著作:WOWOW

麻倉氏: 「Venitia's LIFE」と対照的なコンテンツが、WOWOW制作の「Colors of Hollywood」です。4Kの色彩とコントラスト、ディティールの再現性を最大限に活かし、絢爛(けんらん)たる美しさに満ちています。

 このタイトルは基本的には映画産業の話です。いかにハリウッドに定着し、どのようにスタジオが動いているかを描いていますが、さらにハリウッドという土地柄の派手さ――常に青い空から始まり、繁華街の賑やかさ、映画撮影現場の華やかさまでを、これでもかという原色で描き出します。地域の生活や映画産業の話をすべてごちゃまぜにしたいわば“ハリウッド玉手箱”のようなものです。

 空のシアン色は、番組のキーカラーです。Cannel 4Kは新しい放送規格の広い色域(BT.2020)ではないはずですが、「VPL-1000ES」はDCIの色域を持っているので“どこまでも青いカリフォルニアの空”をリアルに感じることができました。さらにハリウッドのいたるところに存在する映画の撮影スポットや関連施設も見どころ。私は毎年、1月の「International CES」取材が終わるとハリウッドのスタジオ巡りをしていますが、そのときに必ず訪問するワーナーホームビデオもこの番組には登場します。同スタジオに向かう道にある見慣れたベージュ色のスタジオや、そこにはられている特大のテレビドラマのポスターが映っていたので、訪れたときのことを思い出します。まるでハリウッドの乾いた空気まで再現しているようで、心と共振するような感動がありました。4K映像は、心に訴える訴求力が非常に強いですね。

 ソニーで84V型の4Kテレビを見ていた時、ドイツの古い街の4K静止画が映されていました。レンガの道、古風な連なった家並み、川や山……などのいかにもドイツ的な景色です。それをじっと眺めていると、自分が石畳を歩いているような不思議な感覚にとらわれました。写真では写っていない陰の部分の景色も浮かんでくるようでした。デジャヴ的な不思議な感覚でした。4Kの細密さと、大画面の2つがもの凄く心に訴えかけたのですね。ワーナー・ホーム・ビデオの看板もそんなリマインドでした。

 また、この作品は本当にカラフル。ファッション関係にもカメラ向け、服や靴の色とテクスチャーを美しく再現しています。ハリウッドスターが訪れる化粧品店でモデルさんに化粧をするシーンがあったのですが、とても彩度が高く、中間色の再現も良くで“生っぽい感じ”がしました。スター御用達の花屋さんが登場するシーンでは、バラの色階調の豊かさや色味の違いなどもよく表現していました。

 ステーキやスウィーツをアップで撮しています。このときは、情報というより、味やにおい、温度まで感じられるような印象を受けます。見る人の官能を刺激し、脳内でアドレナリンが分泌されるような描写でした。以前、miptvのリポートでカリフォルニアの4Kプロダクションが制作した「カクテル」というコンテンツを取り上げたことがありますが、そのとき担当者が「いかに感じさせるかがテーマ」と話していました。やはり4Kのもつ感覚を刺激する力はとても大きいと思います。

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