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小さなDACでデジタル技術の奥深さを知る――exaSoundのUSB-DAC「e22」潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)

» 2014年11月28日 17時39分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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 ハイレゾ音源に代表される、PCオーディオやネットワークオーディオなど、次世代のオーディオ再生に取り組もうとすると、なんとなくだが目に見えない障壁が立ちはだかるように感じるオーディオファンもいらっしゃることだろう。もっともITmediaの読者にはそうした人は少ないのかもしれないが、パッケージメディアを中心に音楽を楽しんで来た人は、無形のソフトにはいまひとつ取り付きにくい部分があると思う。

 今回ご紹介する製品は、そうした無形のソフトを最高のパフォーマンスで聴かせてくれるexaSound Audio Design(エクササウンド・オーディオデザイン)のDACである。2010年にカナダで誕生したばかりの大変若い企業だが、ハードウェアはもちろんドライバーのソフトウェアも自社で開発するやる気十分の会社である。元々はUSBのインタフェースボードを製作しOEM供給を行うなど、地道ながら高い技術力を積み重ねてきたことが、自社ブランドのUSB-DACのリリースにつながっている。

小さなお弁当箱のような「e22」。ちなみに「e20」「e20 mk3」もデザインは同じだ

 初のモデルは「e20」だが、そのグレードアップ・バージョンとして「e20 mk3」が、そしてその上級モデルとして「e22」が新たに加わった。

 「e22」は「e20 mk3」をベースにしているが、シャーシは35ミリ延伸され、リアパネルの端子がヘビューデューティ・バージョンに換装されているほか、ヘッドフォンアンプ、DAC以降のアナログ回路もグレードアップされている。いずれも電源は外部から供給し、小さなお弁当箱のような筐体(きょうたい)の前面に液晶の表示部とプッシュスイッチが並ぶ。

「e20 mk3」と比べるとリアパネルの端子がヘビューデューティ・バージョンに換装されている。入力端子はUSBのほかに光デジタルと同軸デジタルを装備。アナログ出力はXLRバランスとアンバランス(RCA)、ヘッドフォン端子となる

 重量も軽く簡単に片手で持ち上げることができる。外観からすると正直言って“はずれ”だと思った。ところがプライスを聞いて驚いた(価格は39万9000円、税別)。ええっ、どう見たってヘッドフォン用のポータブルアンプか、ごく普通のUSB-BACじゃないんですか……。そんな思いを抱きながら半信半疑で試聴してみた。

 結果は前言撤回である。こんな製品からどうしてこんな素晴らしい音が出るんだろうと、デジタル技術の面白さと奥深さを改めて知ることになったのである。

 このモデルはDACにESSテクノロジーの「ES9018」を採用し、DSD256信号の12.288MHzのネイティブ再生に対応する。また専用のドライバによりPCMとDSD音源の切り替えがシームレスで行えることも特徴だ。さらにPCM音源の44.1kHz系と48kHz系にそれぞれ専用の水晶発振子を与えて大幅なジッターの低減にも成功している。

 ノイズ対策として11個のパワーフィルターを採用し帯域内での信号の純化に努め、加えてグランドループの遮断とPC回路から混入するノイズを抑制するため、USB基板とDACの間に転送レートを低下させることのないアイソレータとしてのガルバニック絶縁回路が挿入されている。使用パーツも徹底して吟味したということだ。前述した水晶発振子も最高品質のものが使われているほか、レギュレーター、抵抗、コンデンサ類もオーディオグレードの高品位なものをふんだんに取り入れた。

エクササウンドが公開している計測データ。ガルバニック絶縁回路を使用したとき(上)と使用しないとき(下)のノイズレベルを比較したもの。背面スイッチでオン/オフが可能だ

 試聴にはNECの薄型PC「PC-GY174Y」にSIGNALYSTが高音質音楽再生用ソフトウェアとして発売する「HQ PLAYER」をインストールして行った。このソフトはPCM、DSDの信号を24.576MHzのDSD信号にアップサンプリングできるほか、ディザリングやノイズシェイピングのアルゴリズムを選択することのできる多彩なプログラムを持っている。

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