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空気を浄化する扇風機「ダイソン ピュア クール」の気になるところ滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2015年04月03日 13時25分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 扇風機と空気清浄機、生活家電を大別すれば、どちらも「空調家電」といわれるものにくくられる。空気を取り込み、送り出す機能は共通だ。とはいえ、これまでこの2つのアイテムを1つにまとめた製品は存在しなかった。

「Dyson Pure Cool」(ダイソン ピュア クール)と英Dysonの微生物学者トビー・サヴィル氏、シニアデザインエンジニアのオラ・パピエルコゥスカ氏

 しかし、ダイソンは世界で初めて、この2つを融合した「Dyson Pure Cool」(ダイソン ピュア クール)の開発に成功した。なぜ、そんなことが実現できたのか? 一番の理由は、ダイソンの独自技術「エアマルチプライヤーテクノロジー」が存在したからだ。英Dysonの微生物学者トビー・サヴィル氏と、同製品のシニアデザインエンジニアであるオラ・パピエルコゥスカ氏に技術面から解説してもらった。

 「2009年にエアマルチプライヤーの初代モデル『AM01』を開発して以来、われわれは“羽根がない扇風機”で冷却することのメリットを示し続けてきました。これまで100年以上変わらなかった扇風機というコモディティ化されたアイテムを、さまざまな面で一歩進化させることができたのです。『エアマルチプライヤーテクノロジー』には、大風量で部屋中を均一に、一定のスピードで空気を回せるという大きなメリットがあります。だからこそ、(空気清浄機能を付けて)きれいな空気を自ら生み出すことで、部屋中の空気をきれいにできるのです」(パピエルコゥスカ氏)。

トビー・サヴィル氏

 たしかに通常の“羽根のある扇風機”は、その構造上、空気清浄機能を付けられない。羽根のカバーは密閉されておらず、フィルターを通る空気とともに、羽根とフィルターの間などから汚れた空気が簡単に入り込んでしまうだろう。

 「一般的な扇風機は風にムラができやすいため、『Dyson Pure Cool』のように効率的に部屋をきれいにすることはできません。また、仮にフィルターを羽根の後部などに設置したとしても、おそらく部屋中をきれいにすることは不可能でしょう。しかも、羽根やカバーなどは常に大気中の有害物質にさらされ、汚れてしまいます。それらをこまめにふき取ったりすることも、なかなかできないですよね? つまり、そういった扇風機は、有害物質が混じった空気を拡散している代物に過ぎないのです。エアマルチプライヤーは、ループ状の送風口を簡単にふき取れるので、常に清潔に保つことができます。だからこそ、フィルターでしっかりと空気中の有害物質を除去すれば、常にきれいな空気を部屋中に拡散することができるのです」(サヴィル氏)。

心臓部「360°グラスHEPAフィルター」とは?

 さて、そんな画期的な空気清浄機付き扇風機「Dyson Pure Cool」だが、その機能的心臓部はやはり「360°グラスHEPAフィルター」だ。まずパピエルコゥスカ氏が現在の空気清浄機について話してくれた。

シニアデザインエンジニアのオラ・パピエルコゥスカ氏

 「一般的な空気清浄機には、(フィルターの)流入路への空気の流れが強すぎるものが多いのです。空気を無理矢理フィルターに押し込むため、PM0.1のような超微小粒子状物質は通過してしまうものがほとんど。それらは話題のPM2.5よりもかなり小さな物質ですので、除去する必要がないと開き直っても影響はないと彼らは考えているのでしょう。しかし、ダイソンはたとえ扇風機ではあっても、空気清浄機能を搭載する以上、PM0.1を効率良く取るための設計にこだわりました。そのために開発したのが『360°グラスHEPAフィルター』です」(パピエルコゥスカ氏)。

 人間は、呼吸を通じて1日に1万リットルもの空気を体内に取り込んでいるとされる。しかし空気には、粒子状物質=PMが数多く含まれ、それらが風邪などの症状を引き起こしたり、アレルギー反応や炎症などの原因になる可能性もある。

 「中国などの大気汚染でも話題にあがるPM2.5より、もっと小さい“超微小粒子状物質=PM0.1”は深刻。なぜなら、一度肺などに吸い込んでしまうと、酸素とともに血流に入り込んでしまい、体の隅々へと巡ってしまうと、気管支炎や皮膚の加齢、喘息などの症状を引き起こしてしまうからです」(サヴィル氏)。

 M0.1を99.95%も除去できるとうたっているのが「360°グラスHEPAフィルター」だ。一般的なHEPAフィルターとどう違うのだろうか?

 「一般的なHEPAフィルターよりも密度を高めるため、マイクログラスファイバー素材を採用しています。さらに、より多くの有害物質を除去するために、フィルターの表面をプリーツ状に最適化しました。1つの『360°グラスHEPAフィルター』は、6.45メートルのフィルター素材を254回も織り込むことで、外側から入り込む空気を、より広い面積で受け止めると同時に、ちょうどいい空気の流入速度を実現しています」(サヴィル氏)。

発表会では実際に6.45メートルのフィルター素材を広げてみせた

 「例えば、プリーツ状の面積が広すぎると、除去性能は高まるかもしれませんが、空気の流入速度が遅くなりすぎます。一方、面積が狭すぎると、除去性能は低下し、なおかつ空気は早く通り過ぎますが、通り自体が悪くなってしまい、どちらにしても扇風機の風量に大きな影響が出てしまいます。だから、そのちょうどいい面積を実現するために、数多くの試作品を作り、トライアンドエラーを重ねて、今回製品化されたものへと辿り着いたのです」(パピエルコゥスカ氏)。

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