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テレビ戦線、異常アリ――有機ELで起死回生を狙うパナソニック麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/5 ページ)

» 2015年09月28日 14時05分 公開
[天野透ITmedia]

世界最大級の家電展示会「IFA」が、今年もドイツ・ベルリンで開催された。現実的な新製品のトレンドが分かる場ともあって、毎年、AV評論家・麻倉怜士氏も目を光らせている。テレビにおける韓国メーカーの“次の一手”や、IFA自体の新方針など、どうやら今年は“新展開”がキーワードのようだ。

会場入口に毎年用意されるIFAモニュメントと麻倉氏

IFAとCES、中国を舞台にトレードショー合戦

――今年もIFAが開催され、多くの新製品が登場しました

麻倉氏:製品だけでなく、IFA自体にも新しい動きがありました。来年の4月に深センで「コンシューマー・エレクトロニクス・チャイナ」という中国市場向けのイベントを開催すると、現地時間の9月7日に発表しました。

 ライバルのCESは既に上海で「CESアジア」を開催しています。世界の2大IT家電トレードショーが中国に集結するという、新しい時代が到来ということになりますね。

――ヨーロッパに入って、街のいたる所で日本語を話さない東アジア顔の方々を多く見かけます。IFA内でもファーウェイなどがブースを構える「中国館」が用意されていましたが、ついに中国本土へ進出するということですね

麻倉氏:私がIFA幹部にインタビューしたところ、中国大手企業の出展数は年々増加しており「中国市場向けに特化した同じようなカタチで、家電・IT・AV・通信という分野の最新技術と商品を展示するイベントを」という中国出展者からの声が多数上がっているそうです。この声に応え、深セン市当局と何度も折衝して開催の合意書を結びました。

――ドイツのイベントであるIFAが、なぜ遠く離れた中国でサブイベントを開催するという動きになったのでしょうか

麻倉氏:IFAはもともと1924年にベルリンでスタートしたイベントで、長らくドイツ国内向けのローカルな電気製品ショーでした。ところが2000年代に入って一気に国際化の方向へ舵を切ります。海外からのメーカーやディーラーを招き寄せ、開催時期を9月に設定することで、クリスマス商戦に商品を仕込む展示場という今日のキャラクターが確立しました。

 今まではベルリンに本拠を置いて海外からドイツに人を呼んでいましたが、「国内向けIFA」「グローバルIFA」に続いて、今回の中国進出は「第3のIFA」として展開する訳です。国際的な展示会がよりパワフルになり、市場特性をより生かしたものになります。

――なるほど、IFAの歩みそのものに今回の展開の根拠があるということですね。では開催地の深センという土地はどうでしょう。場所としては広東省南部の、香港の向かいの街ですが

麻倉氏:深センは中国におけるデジタル化の窓口といえる最も先進的な製造地域であり、製品開発、モノづくりの拠点です。対岸の香港とのアクセスも良く、ヒトとモノの流通における国際的な要衝にもなっています

――そういえば深センは中国有数の電脳街でもありましたね。確かにIFAのようなイベントを行うにはうってつけの土地です

麻倉氏:今はIT・家電の見本市市場における世界首位の座をCESとIFAが争っている状況です。CESが上海でショーを展開するならば、IFAとしても中国に拠点を作りたいという事情があるわけです

 ですが、CESとIFAはショーの性格がそもそも異なります。基本的にCESは新技術やイノベーションの提案、実験の場です。トレードショウという側面以上に、一年掛けて開発してきた新しい研究の方向性を不十分ながら見せることで、反響を得たり改善点を見出したりするという機能が強いですね。それに対してIFAは、一年で最大の売上高を見込める「クリスマス商戦」直前ということもあって、実際の商品を提案する場という性格が強いです。一年のスパンで見ると、新技術はまずCESで紹介され、そのうちモノになる技術だけが商品としてIFAで残るというカタチです。ですので業界のジャーナリストとしては、やはり両方のショーを見ないとダメですね。IFAを見ていると、CESで発表された後に消え去った技術というのもかなりあります。

 世界中から人を集めるラスベガスという歓楽街で派手に新技術をブチ上げ、しかしそのうちの何割かは不十分であったり適合性に欠けたりで落ちてゆくわけです。そして浮ついたラスベガスから地に足をつけてお金のやり取りをするベルリンで、実用化が可能な新技術を商品として提案します。世界的ショー要素が強いCESに対して、ビジネス色が強いIFAというのが、2つのイベントの構図です。

――ラスベガスとベルリンという土地柄も反映しているような気がします

麻倉氏:そういう意味では、この2つはライバルではあれど、性格の違いが業界の流れを吹き上りにしているといえるでしょう。

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