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» 2015年12月28日 16時10分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:2015年を総括! 恒例「麻倉怜士のデジタルトップ10」(中編) (1/4)

年末恒例「デジタルトップ10」。今回は第4位から第6位までの中編をお届けしよう。惜しくもランキング選外となったが、麻倉氏の琴線に触れたドイツの技術も合わせて紹介する。

[天野透,ITmedia]

 年末恒例「デジタルトップ10」。今回は第4位から第6位までの中編をお届けしよう。業界の最新動向や技術を紹介する本連載だが、視点の当て方はさまざま。それを表すかのように4位と6位は「最新技術を如何に展開するか」、5位には「かつての思い出を最新技術で復活」といったテーマが並んだ。惜しくもランキング選外となったが、麻倉氏の琴線に触れたドイツの技術も合わせて紹介する。テクノロジーが切り拓く未来は、私達をどう楽しませてくれるだろうか。

ts_digital01.jpg 前編に引き続き「サウンド・オブ・ミュージック」の聖地巡礼での1コマ。トラップ大佐一家のお屋敷とパシャリ。今のスロベニアやクロアチアが当時はオーストリア領だったため、オーストリアは海に面する土地を持っており、史実のトラップ氏はオーストリア「海軍」の少佐だった。ちなみに現在この建物は「ヴィラ・トラップ」というホテルになっている

――では引き続き、カウントダウンといきましょう。次は第6位ですね

麻倉氏:その前に番外編を1つ挟みましょう。ランクインは逃しましたが、現代的な技術と発想が詰まった、ドイツの製品を紹介します。

番外編その1:エラックの新型サブウーファー「SUB2070」

麻倉氏:番外編として紹介するのは、エラックの画期的な新型サブウーファー「SUB2070」です。

ts_digital02.jpg エラックのスーパーウーファー「SUB2070」

――エラックというとドイツの港町であるキールに本拠地を置く「JETツイーター」で有名なスピーカーメーカーですね。今年はTADの名物エンジニアだったアンドリュー・ジョーンズ氏が移籍し、新エントリーモデルを発表したことでも話題になりました。ですがサブウーファーのイメージはあまりありません。この製品は何が画期的なのですか?

麻倉氏:このサブウーファーが凄いのは自動補正機能です。サブウーファーといえば低音だけを受け持つイメージですが、低音は部屋の定在波を受けやすいために部屋との兼ね合いが難しく、従来はマッチングをマネージする手段がありませんでした。例えばAVアンプは、ルームアコースティックの調整として部屋の特性に合わせてイコライジングする機能を持っていますが、サブウーファー単体ではできていませんでした。

 SUB2070は、外部マイクによって出てきた音の特性を測定し、その音によって部屋の癖に合わせた逆補正をかけてフラットにする機能を持っています。考え方はデジタル技術を使った従来の音場補正系のものと同じですが、このサブウーファーはスマートフォンで測定し、操作をするんです。

――操作はともかくとして、測定までスマホでやってしまうんですか? それは確かに新しい

麻倉氏:使い方は、測定に用いるスマホやタブレットとBluetoothで接続し、アプリを起動してテスト信号を発信する、それをスマホのマイクで測定して補正をかけるという流れです。基本的にはフラット方向に持っていきます。

 サブウーファーに音場補正を入れたことと、「今や誰でも持っている」スマホで測定と操作が完結すること、そして補正結果が素晴らしいこと、この3点が良いですね。

ts_digital03.jpg 「SUB2070」は、音響空間の自動補正が「スマホ1つ」で完結する。わざわざ補正のためだけにマイクを接続する必要はなく、自動補正のハードルがぐっと下がった

――スマホのマイクで大丈夫なんだろうかと思いましたけど、よくよく考えるとAVアンプの信号測定用マイクもそれ程ハイクオリティな訳ではないですね。これは盲点でした

麻倉氏:取材で無補正と補正済みの比較をしたところ、あるとなしではぜんぜん違いましたね。低音がリッチになるのはもちろんですが、良いサブウーファーというのは低音だけでなく全音域で効くんです。中域の解像度や、高域の伸びや透明感やクリアさといったものが、これのON/OFFで驚くほど変りますよ。

 そもそもスーパーウーファーは音の土台をしっかりと強化し、その上にのる中高域を活性化させるという地盤固めの役割を持っています。問題は地盤の固め方ですね。出荷時の特性カーブでもある程度は効果がありますが、最適化された精密補正をかけると筆舌に尽くし難い凄さがあります。圧倒的な音質向上効果が得られ、低域の解像感や階調感がグッと出てくるんです。「量感はあれどスピード感が」「スピードは速いけどスケールが小さい」といった、量感とスピード感の択一になりがちとよく言われる低音ですが、キッチリと補正された低音は量感もスピード感も両方強化します。それに加えてメリハリの効いた中域や透明感の高い高域も同時に得られます。

――これは音楽の構成と同じですね。美しいハーモニーには引き締まった低音が欠かせません。そういえば昔楽器をやっていた時に「2番トロンボーンは『2倍トロンボーン』、3番トロンボーンは『3倍トロンボーン』」だなんていう台詞を聞いた覚えがあります。しっかりと音を出さないと低音は締まりませんからね

麻倉氏:君は若いけど、経験豊富だね。スーパーウーファーは低音が弱いスピーカーの補助と考えられがちですが、これは意外とフロア型の大きなスピーカーでも効果がありますね。クロスオーバーも選べる上に、メインのスピーカーとのマッチングも取りやすいです。こういった高機能なモデルの割にそれ程価格が高くもないし(あくまで高級コンポーネント基準ですが)、ハイテク機能がごく簡単に享受できるというのが素晴らしいですね。

 ルームアコースティックとスピーカーの関係は今まで暗黒大陸だった訳ですが、最近は測定技術がデジタルで飛躍的に進化してきています。ちなみに現在私の部屋では、ラトビアで開発された“CONEQテクノロジー”をベースにした、リアルサウンドラボの「APEQ-2pro」というシステムを用いています。これはPCのソフトウェアを立ち上げ、スピーカーの前の空間を四角を描くような形で測定し、スピーカーや部屋との特性とマッチングさせるというものです。これを進化させた様な技術として「Eilex PRISM」(アイレックス・プリズム)という高さ方向の多層測定もあります。また「TRINNOV AUDIO」(トリノフ オーディオ)というフランスのメーカーのシステムでは、マイクを立体的に設置した三次元測定を行って特性をとります。

 こういった1つの技術を切り出してスマホにアプライしたという点が、オーディオ的でもあり現代的でもあると感じますね。今盛んなスマホやアプリといったIT技術でオーディオを活性化するという点が注目に値します。

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