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4K/HDRテレビの新基準「ULTRA HDプレミアム」ロゴの意味、そしてパナソニックの「DX900」シリーズ誕生の背景CES 2016(1/2 ページ)

» 2016年01月09日 16時19分 公開
[山本敦ITmedia]

 パナソニックがCESで「ULTRA HDプレミアム」ロゴプログラムの仕様に準拠する4K/HDRテレビを発表した。新製品のDX900シリーズがテレビがどんな製品なのか、またそもそも「ULTRA HDプレミアム」ロゴとは一体何なのか?今回の取材には“Ultra HD Blu-rayのキーマン”としてもよく知られるパナソニック株式会社 AVCネットワークス社 技術本部メディアアライアンス担当部長の小塚雅之氏、ならびに発表された4K/HDR対応テレビの開発に携わる、パナソニック株式会社 アプライアンス社 技術本部 開発第二部 第一課 主幹の東田隆司氏に協力をいただきながら、それぞれの内容を整理してみたい。

インタビューに応じてくれたパナソニックの小塚雅之氏(写真=右)、東田隆司氏(写真=左)

 今回のCESを取材していると、各所で「今年は4K/HDRの元年になる」という文句を耳にした。確かに5日に開催されたプレスカンファレンスでは、大手テレビメーカーであるパナソニック、ソニー、サムスン、LGがこぞって4K/HDR関連のテレビや新技術を発表し、さらにその前日にはUHDアライアンスにより「ULTRA HDプレミアム」ロゴがお披露目されている。

ロゴマークはトロフィーの形を模しているという

 パナソニックが発表したテレビの詳細を説明する前に、まずこの「ULTRA HDプレミアム」ロゴがどんなものなのかを確認しておこう。

 UHDアライアンスはちょうど昨年のこの時期にCESが開催されていた頃に、4K=UHDプラットフォームの統合された基準を作るために設立された団体だ。2015年12月時点で12社の取締役会参加企業、21社のコントリビューター企業が加盟している。取締役会参加企業の顔ぶれを、属性ごとに大別しながらみてみると「コンテンツ系」にはディズニーや20世紀FOX、ワーナー、ユニバーサル、ソニーピクチャーズとメジャースタジオ企業が並び、配信サービスはNetflix、DirecTV、テレビメーカーはソニー、パナソニック、LG、サムスンの4社、そして技術サービス系ではドルビーとテクニカラーが参加しているというかたちになる。

 もともと「ULTRA HDプレミアム」ロゴが立ち上がる前から、4K/HDR対応テレビに関する互換性基準を規格化した「HDR Compatibile規格」というものが、CTA(コンシューマー技術協会)が中心となって取り決められていたが、今回UHDアライアンスが主体となって、はじめて「4K/HDRのクオリティ」を議論した成果として、ロゴプログラムが提供されることになったと小塚氏は経緯を説明する。

クオリティー軸で4K/HDRの魅力をプロモーションするUHDアライアンス
UHDアライアンスへの参加企業の内訳

 UHDアライアンスが強調しているのは、これから4K/HDRを導入していく段階で、エンドユーザーに4K/HDRの違いを明確に実感させることが重要ということであり、そのためにパッケージと配信、ハードとソフトが足並みをそろえながら4K/HDRの啓蒙、およびユーザー認知向上を図る活動に力を注いでいるという。

 「4K対応テレビの販売は実際に好調で、2019年までに3億台に到達するという予測も示されています。4K/HDRのコンテンツはホームエンターテインメントの今後に大きな影響与えることは間違いありません。そのためUHDアライアンスでは、互換性を担保して以降の“品質条件”を今回取り決めました。テレビなどデバイスに加え、コンテンツについてはマスタリング環境を整えるための基準を設けています。表示互換性については映せる/映せないという目に見える形で可否がすぐに分かりますが、画質や輝度についてはある程度ごまかしがきいてしまいます。クオリティーの基準設定を各メーカーに委ねることは適切でないため、そこは客観的な立場で評価する“テストセンター”を置くことになりました。現在テストセンターは日本とアメリカに1カ所ずつあり、今後も増えていくものと思います。このテストセンターで設けた基準を通過した機器やコンテンツが、ロゴを取得できるという流れになります」(小塚氏)

 4K/HDRの技術方式は「HDR10」や「DolbyVision」(ドルビービジョン)などいずれであっても構わないが、それぞれ共通に満たすべき最高輝度と黒輝度は厳密に取り決められている。例えばテレビなど表示機器の場合、解像度は当然ながら4K(3840×2160ピクセル)を満たしている必要があり、画像の正確性は10bitの入力信号に対応していることも求められる。さらに色空間は入力信号がBT.2020の色規格に準拠していることと、P3の色空間の90%以上を再現できることが条件だ。またHDRについては映像規格がSMPTE ST2084に対応していることが求められ、最高輝度と黒輝度については、「最高輝度1000nitsで、かつ黒輝度が0.05nits以下」と「最高輝度540nitsで、かつ黒輝度が0.0005nits以下」という2つの規定が設けられている。前者が液晶テレビを想定、後者が有機ELを想定したものだが「デバイスそれぞれの特性が違うので、かなり長い議論を交わしてフェアな基準値を設定した」と小塚氏は経緯を振り返る。

4K/HDRテレビの互換性基準について規定したCTAのHDR Compatible規格
「ULTRA HDプレミアム」ロゴのテレビ側における要件の概略
コンテンツ配信サービスやマスター規格の要件についても取り決められている

 「20年前に誕生したDVDは、それまでのVHSから画質・利便性の双方で明らかな差別化ができたことからビジネス的な成功を収めることができました。ところがDVDからBDへのステップアップでは画質こそアップしたものの、利便性では大きな変化が感じられなかったため、代わってIP配信が利便性軸での進化を引っ張ってきました。今回も4K単体で市場の成長を狙うよりも、HDRを加えることで画質に明確な違いが生まれるということで、アライアンス参加社の意見が一致。全社で盛り上げていこうと団結しています。せっかくの良い可能性を、今後も大切に伸ばしていこうという共通の目標ができたというわけです」(小塚氏)

 今回のCESでは、こうして一枚岩となったUHDアライアンスのメンバーが策定した「ULTRA HDプレミアム」ロゴプログラムを、いち早く冠するテレビがパナソニックとサムスン、LGの3社から発表された。この中ではパナソニックとLGが日本向けにテレビを展開しているので、この後に紹介するパナソニックのDX900シリーズの“国内モデル”を含めて、いつ「ULTRA HDプレミアム」ロゴ対応のテレビが日本で発売されるのか関心はさらに高まっていくだろう。

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