コラム
» 2016年05月06日 14時34分 UPDATE

本田雅一のTV Style:8Kテレビは本当に普及するのか?――GPC&CE Chinaレポート(2) (1/2)

スマートフォンやSVODの普及で大きく変わりつつあるテレビ市場。4KやHDRはどうなる? 8Kテレビは中国が中心に? メッセ・ベルリン主催の「Global Press Conference」(GPC)で披露されたgfkやiHSの調査データを元に、AV評論家・本田雅一氏が市場を分析する。

[本田雅一,ITmedia]

 テレビに関する話をするとき、それがテレビ受像機の話なのか、それともテレビ放送コンテンツのことなのかを切り分けて考えなければならないが、テレビ受像機という商品は(もともとは)放送波を受信して表示することが主要機能であったため、各国ごとに機能やトレンドを見極める必要があった。

 極端な例でいえば、アナログ放送しかない地域でデジタル受像機は役に立たないし、ハイビジョン放送がなければフルHDテレビには身が入らない。これはネット時代になっても、初期段階ではあまり状況は変化しなかった。言語や文化の壁もあって、地域社会を突破することが難しかったからで、そのために国ごとに対応サービスが異なる状況もあった。

 しかし、欧州はその壁を越えてインターネットの映像配信サービスが浸透しはじめ、米国ではDVDレンタルサービスを基礎とする「NETFLIX」が一気に普及。放送と通信サービスの間に高い垣根があった日本では、映像配信サービスの普及が遅れたものの、それも昨年後半以降は大きく状況が変化している。

 ここにきて、テレビ受像機はテレビ放送を受信・表示するだけのデバイスではなく、むしろネットの映像コンテンツを楽しむために存在する映像の窓となってきたわけだ。多くの消費者が、テレビを5〜10年のサイクルで買い替えることを考えると、今年の商品としてテレビを考える時、”テレビ放送の受像機としてのテレビ”などと堅苦しいことを考えていては、良い商品も生まれなければ、良い買い物もできない。

 テレビ放送サービスという国や地域に根差した映像サービスから解放されたテレビは、商品のグローバル化が進行中と言うこともできるだろう。Android TVやFirefox TVといった汎用OSを用いたテレビの開発が盛んになっているのも、地域向け放送サービスからグローバルな映像配信サービスへと、テレビという商品の軸足が変化してきていることを示していると思う。

 この流れは商品設計だけでなく、映像コンテンツビジネス全体の形をも変えようとしている。メッセ・ベルリンが主催した「IFA Global Conference 2016」では、欧州の中でも映像パッケージ製品がよく売れるとされるドイツ市場における、映像パッケージの売上推移が発表された。

ドイツ市場における映像パッケージの売上推移

 映像パッケージはDVDの勃興により売上が急伸した後、売上が反転した2008年以降はBlu-ray Discが減少分を補完。そこにレンタル型の映像配信サービス(TVOD)や売り切り型映像配信サービス(EST)が加わることで、2013年までは微増ながら成長を続けることができた。

 しかし、映像配信サービスでの”売り切り”は難しい。販売するパッケージが物理的に存在しないためだ。自ずとTVODが主流となり、単価下落を招いているのが現状だろう。2014年以降、映像パッケージソフトの売上は減少に転じている。

 今後もこの傾向が続くことは、テレビ録画時間の減少という調査結果からも予想できる。ネット映像配信で好みの映像をいつでも好きな時に楽しめるならば、一時的な録画はともかくとして、ディスクなどに保存しておいておく“アーカイブ”を個人的に行う必要がないからだ。

 gfkが今年1月に発表したデータによると、グローバル市場で使われているテレビの47%が何らかのインターネット映像配信サービス接続機能を持ち、さらに38%がテレビ以外の機器(ゲーム機やスティック型IPTV端末など)を通じてインターネットに接続されているという。

gfkが1月に発表したデータ

 この流れを後押ししているのが、テレビ放送に変わってテレビ受像機のコンテンツインフラの主流になりつつある加入型映像配信サービス(SVOD)であることはいうまでもないが、主役であるSVOD以外にもテレビ向けの映像サービスが多数、”アプリ”の形で登場するのではないか? とgfkでは予測しているようだ。

 学習用教材、料理レシピ、ヨガやトレーニングなどの映像、旅行案内などは、インターネット映像配信に切り替わるとともに、”アプリ”を通じて提供されるコンテンツになっていくだろう。

 テレビ放送が、いまだに世の中の主流でありながら、時代に乗り遅れた過去の遺物のように見られる傾向があるのは、こうした放送からネット配信が急激に進んでいることも一員としてあるが、もっとも大きな理由は利用者の年齢分布にある。

 18歳以上の57%が、もっとも多く楽しむ映像コンテンツがテレビであると答えているが、18〜34歳に限ると45%に数字が下がる。テレビを侵食しているのは、SVODやオンライン動画共有サイト(YouTubeなど)である。gfkは具体的なデータを示さなかったが、さらに25歳以下などに絞り込むと、さらにネット映像の比率が高まるだろう。

テレビ放送(TV Programmes)を視聴している割合は若い人のほうが下がる

 しかし本当の注目点は、別の調査結果にある。

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