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「本当に良いものにハイレゾマークはいらない」――ヤマハの次世代リファレンススピーカー「NS-5000」がついに発売(1/2 ページ)

» 2016年06月03日 22時52分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 ヤマハは6月3日、東京・銀座にある同社のスタジオで新しいフラグシップスピーカーシステム「NS-5000」を披露した。2015年9月の製品発表から半年をかけて音質のチューニングを行った「ヤマハの新しい標準機」だ。価格は2本セットで150万円(税別)。7月に販売を開始する。

「NS-5000」

 あいさつに立ったヤマハミュージックジャパンAV流通営業本部の岡田豊本部長は、「NSという型番は“ナチュラルサウンド”の略。ヤマハオーディオの基本思想として1968年から継承してきた。NS-5000は半世紀を超えて新たに作り出したフラグシップスピーカーだ」と話す。

ヤマハミュージックジャパンAV流通営業本部の岡田豊本部長(左)

 開発期間や手法も異例だった。「開発に着手したのは2008年。非常に長い期間をかけて開発したことが異例なら、そのプロセスにも新しい試みがあった。昨年の『東京インターナショナルオーディオショウ』で一般公開した後、全国各地で試聴会を行い、専門店やユーザーの声を反映したチューニングを進めてきた。そして今日、ようやく納得のいく音に仕上がった」と岡田氏。「NS-5000音を通じ、改めてヤマハのHi-Fiとしてのブランドを輝かせていきたい」と胸を張った。

 NS-5000は、3cm径のツイーターと8cmのミッドレンジ、30cmウーファーによる3Wayブックシェルフだ。既報の通り、すべての振動板に東洋紡の化学繊維「ZYLON」(ザイロン)を用い、「同じ音色、同じ音速」にそろえた。マルチ化で再生周波数帯域を拡大しつつ、同じ素材を使うことで、オーディオにおいて理想的とされる“フルレンジスピーカーの音”を目指した。

3cm径のツイーター。ZYLONは「世界一、引っ張り強度の高い繊維素材。また音速が速くで適度な内部損失を持つ「振動板として理想に近い」素材だという
ZYLONには2種類ある。当初は固い「HM」タイプでユニットを試作したが、付帯音が消えなかったため、柔らかめの「AS」に切り替えた
3Wayスピーカーのキャラクターを決めるのはミッドレンジだ。8cmのドーム型ユニットは、金型成形が行える最大のサイズだった。これを中心にウーファーとツーターのサイズが決まった
30cmのシングルウーファー。最近のトレンドはダブルウーファーだが、内部配線などの違いで「音速がそろわなくなる」ことからシングルとした

 NS-5000のレトロな外観は、ヤマハが1974年から20年以上も販売したモニタースピーカーの名機「NS-1000M」に似ている。モニターとピュアオーディオ用では用途が異なるが、やはり誰もがNS-1000Mの姿を重ね合わせている。同社で企画広報を担当する安井信二氏も、「NS-1000Mの開発当時にはコンピューターもなく、技術者の勘に頼っていた部分も大きかった」と話す。一方、NS-5000では最新の技術を駆使し、また「すべてを科学的に検証しながら開発を進めた」という。

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