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ぼくは初めて“CDの本当の音”を聴いたのかもしれない――コード「Blu MkII」の衝撃山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2017年03月24日 06時00分 公開
[山本浩司ITmedia]

 2008年に英国LINN(リン)のネットワークオーディオプレーヤー「KLIMAX DS」を購入して以来、CDクオリティーを超えるハイレゾファイル再生がぼくの音楽生活の中心になっている。そして、現在KLIMAX DSとともにぼくのハイレゾ再生システムとして活躍しているのが、英国Chord Electronics(以下、コード)のD/Aコンバーター「DAVE」(デイヴ)である。

「DAVE」は150万円(税別)で販売中。写真は別売のスタンド「Choral Ensemble Stand」と組み合わせたもの。国内ではタイムロードが取り扱っている

 ハイレゾファイルを格納したオーディオ専用NASのバッファロー“DELA”の「N1A/2」(4TBタイプ)のUSB-DAC接続機能を用いてDAVEと直結してハイレゾ再生を楽しむというのが、現在のぼくのスタイル。このコンビならば、384kHz/32bitのPCM、11.2MHzのDSDまでのハイレゾファイルが再生可能。つまり現在入手し得るほぼすべてのハイレゾに対応できるわけである。しかも、その音はこれまで体験したことのない生気に満ちていて断然すばらしく、今は音楽を聴くのが楽しくて仕方ない。

 そして今年の1月、DAVEとの組合せを前提にしたCDトランスポート「Blu MkII」(ブルー・マーク2)の発表会が催された。ハイレゾファイル再生に夢中になっている筆者にとって、「いまさらCD再生?」という思いはぬぐえなかったが、実際にその音を耳にし、驚愕した。

「Blu MkII」は140万円(税別)で3月下旬に発売予定だ

 ハイレゾ再生を究めれば究めるほど、44.1kHz/16bitのCDは音楽のスケール感の表現でどうしても突破できない枠があると感じていたのだが、Blu MkII+DAVEはその枠を簡単に打ち破り、ハイレゾファイルをうまく再生できたときと同様の“音楽表現の大きさ”が生々しく感じられたのである。

 コードのDACは、デビュー作の「DAC64 」(1999年登場)以来、汎用のDACチップを使用せず、FPGA(プログラミング可能な集積回路素子)を用いて、同社エキスパートデザイナーのロバート・ワッツ氏が考案したデジタルフィルター(彼の名を取り、WTAフィルターと同社では呼ぶ)を書き込んでオーバーサンプリングによる高音質化を図ってきたが、Blu MkIIにはザイリンクス製の最新鋭FPGAが搭載され、音楽再生時に最大768kHz(CD再生時は705.6kHz)にアップサンプリングして伝送する仕組みが採られている。

このFPGAは740個の処理コアを内蔵し、演算精度は100万タップに及ぶ(DAVEは16万4000タップ)。この驚異的な演算精度によって、L/Rチャンネル間のタイミングエラーを極限まで抑えることができ、空間再現力が大幅に向上したとロバート・ワッツ氏は言う。

 DAVEとの接続によって、44.1kHzのCDを最大705.6kHzまでアップサンプリングすることになるが、この場合は2本のBNCケーブルで接続し、それぞれ352.8kHzにアップサンプリングされた信号が伝送される。発表会では、Blu MkIIから44.1kHzと705.6kHzで出力、DAVEとつないだ音を聴き比べたわけだが、先述したようにその違いにガクゼンとした。

Blu MkIIの背面端子。BNC同軸のデュアル接続時に705.6kHz出力が可能になる。また仕様変更により中央のTOS Link出力が廃止され、代わりにUSB入力が設けられた

 705.6kHzデータで出力すると、ヒラリー・ハーンの弾くバイオリン・コンチェルトのCDでは、オーケストラの響きがぐんと豊かになり、幅と高さと奥行を伴った広大なサウンドステージの中にきりきりとフォーカスが絞られたソロ・バイオリンがピンポイントで屹立するのである。しかも44.1kHz出力よりも音色が艶々と美しいのだ。うまく再生したときのハイレゾファイルの広大な音場感とシャープな音像定位、音色の美しさに16bitのCDはとてもかなわないと信じていただけにこの超絶CDサウンドにぼくは大きなショックを受けた。

 CD再生におけるL/Rチャンネルのタイミングエラーを極小化するには、ミリオンタップの演算精度が必要だったというワッツ氏の説明に深く納得させられた発表会。誕生から35年経って、ぼくは今日初めて「CDの本当の音」を聴いたのかもしれない、という深い感慨を抱いた。

 なお、Blu MkIIは発表会後に仕様変更がアナウンスされ、USB端子も設けられることになった。PCやNASに収めた音源もUSB接続することで、最大768k/705.6kHzにアップサンプリングしてDAVEなどのD/Aコンバーターに入力できるようになるわけだ。

 CD再生にこだわりを持ち、Hi-Fiオーディオ再生の最先端を目指す人にとって、Blu MkIIは今もっとも注目すべきデジタルギアと呼んでもいいだろう。

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