孫社長の「検討してみましょう」から始動――約3カ月で導入した「海外パケットし放題」:“日額1480円”の舞台裏(2/2 ページ)
「全社的に動いたのは孫社長のツイートから」「目標は夏休みシーズン」――そんな短期間での準備を余儀なくされたソフトバンクモバイルの「海外パケットし放題」。導入の経緯から料金、対応国と地域の計画、事業者との交渉まで、舞台裏を同社に聞いた。
海外パケットし放題の“カバー率”は約90%
2010年7月20日現在、海外パケットし放題を利用できる国と地域は40で、「日本人の渡航先の90%近くをカバーしている」(山本氏)。一方、通常の国際ローミング(世界対応ケータイ)でS!メール(MMS)とWebを利用できる国と地域は141。カナダやメキシコ、マカオなど、海外パケットし放題が未対応の国と地域は多数あるので、同社は今後も対応地域の拡大に努める。「残りの10%(約100カ国)を埋めるのは非常に大変ですが、まずは渡航率の高いところからカバーしていきたいです」(小林氏)。
なお、海外パケットし放題のカバー率は国や地域の「数」ではなく、海外でパケット通信をしている「ユーザー数」に占める割合を意味する。したがって90%という数字は、海外でパケット通信をする日本人の渡航者のうち、90%をカバーしていることを意味する。
対応事業者は「1カ国につき1事業者というわけではない」と小林氏が話すとおり、事業者の拡大にも努める。実際、すでにオーストラリアは2社、台湾は3社の事業者が海外パケット通信し放題に対応している。現時点で1事業者のみ接続可能な国についても、今後はほかの事業者とも交渉していく構えだ。ただ、「海外では自国のサービスも含め、定額制を導入しているところが少なく、データ量に応じた額のプランを導入している事業者が多いので、交渉は簡単ではなかった」(小林氏)という。日本では標準的な“定額サービス”の文化をどこまで理解してもらえるかも、今後の対応国や事業者拡大のカギを握っているといえそうだ。
海外パケットし放題の対応を予定している国と地域、事業者(2010年7月20日時点)。欧州はVodafoneグループが多いが、これは「前からのお付き合いが長い」(小林氏)こともあり、ソフトバンクモバイルの前身がVodafoneだったことが多少有利に働いたようだ
SMSの送信は定額の対象外
海外パケット通信し放題の対象となる通信は、S!メールとWebサイトへのアクセスだが、「SMSの送信」は含まれず、1通100円の送信料がかかるので注意したい(SMSの受信は国内外を問わず無料)。これは「SMSはパケット通信を使用していないため」(小林氏)。
現行のソフトバンクの3G端末では、SMSとS!メールの新規作成のメニューが分かれている機種が多いので、海外ではS!メールの新規作成を選んでメールを作成するのが望ましい。SMSとMMS(S!メール)を同一アプリで管理するiPhoneの場合、件名を入力するか、画像などのデータを添付するとMMS扱いになる。このあたりは少々注意する必要がある。
海外パケット定額の次は“通話定額”も期待されるが、現在は検討していないようだ。「国内のサービスもそうですが、お客さんのニーズはパケット通信の方が高いです。また、音声通話はどれだけ使ったかが分かりやすいですが、パケット通信は分かりにくいので、パケット定額の方が安心感があるといえます」(小林氏)。
ソフトバンクモバイルはこれまでも「ホワイトプラン」や、スマートフォン向けの安価なパケット定額サービスを提供するなど、インパクトのある料金プランを打ち出してきた。これまで他キャリアが導入していなかった“海外パケット定額”に踏み込んだのも大きな決断であり、頻繁に海外へ訪れるユーザーには魅力的なプランだろう。今後は対象国や事業者が増え、さらに利便性が高まることにも期待したい。
関連記事
- 1日最大1480円で海外パケット通信が使い放題――ソフトバンクの「海外パケットし放題」
海外でパケ死を気にせず使える――ソフトバンクは7月21日から、1日最大1480円で海外でのパケット通信が使い放題になる「海外パケットし放題」を提供する。 - 基本料金が2カ月間無料に:ソフトバンクモバイル、ホワイトプランとパケット定額サービスを改定
ソフトバンクモバイルが「ホワイトプラン」を改定し、2年単位の継続利用を約束することで、契約更新月の翌月から2カ月間の基本使用料を無料にする。あわせて、パケット定額サービスもリニューアルする。 - iPhone 4販売開始――孫社長「3G→3GSよりも“はるかに”進化している」
ソフトバンクモバイルが「iPhone 4」を6月24日の午前8時に発売した。発売に先立ち、同社はソフトバンク表参道でセレモニーを実施。孫正義社長が駆け付け、iPhone 4の魅力を熱弁した。なお、同店舗前には320人ほどの行列ができていた。 - 海外周航中の客船内で携帯を――ソフトバンクモバイルの「船内ケータイ」
ソフトバンクモバイルは6月16日から、海外周航中の客船の中で携帯電話を使える「船内ケータイ」を提供する。 - 定額の3G対応Wi-Fiルータを海外20カ国で――インターコミュニケーションズ
インターコミュニケーションズが、定額の3G対応Wi-Fiルータのレンタルサービスを開始。海外20カ国で最大5台までのWi-Fi対応機器を、1580円/日で利用できる。 - SIMロックフリーの3Gモバイル無線LANルータ「MiFi」発売へ──SIMカードの単体販売も
海外でも使える3Gモバイル無線LANルータ「MiFi」の予約受付が6月25日に始まった。12カ月継続契約を条件にFOMAネットワークを3990円/月で使えるSIMカードも販売する。 - “海外でPCデータ通信”に準定額制導入――ドコモ
NTTドコモは、海外でPCやスマートフォンを通じてインターネットを利用する際のパケット料金を一部値下げする。ドコモが指定する13カ国の特定キャリアを利用した場合、12万パケットまでの通信料金が2000円/日になる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.