契約純増数と端末販売数が対照的なドコモとKDDI――その理由は?:石野純也のMobile Eye(10月24日〜11月4日)(1/3 ページ)
ドコモとKDDIの2016年度上期は、増収増益と好調だった。一方で契約純増数と端末販売数は、ドコモの方が伸びている。なぜ2社でここまで差がついてしまったのだろうか?
ドコモとKDDIの上期決算が出そろった。ドコモは売上高が2兆2883億円で、営業利益が5856億円。前年同期比でそれぞれ3.3%、26.6%の増加となり、通期の業績予想も上方修正した。対するKDDIは、売上高が2兆3016億円で、営業利益が5326億円。前年同期比はそれぞれ約7%、18%増となり、ドコモと同様、増収増益を果たした。
いずれも業績として好調といえるが、ドコモとKDDIでは契約者数や端末販売数は対照的で、MVNOの影響や、4月に総務省に施行されたガイドラインの影響が見え隠れする。2社の置かれた状況を、上期の決算から読み解いていきたい。
データ通信サービスの伸びなどが貢献して増収増益に
ドコモの好決算の要因の1つは、新料金プランのデータパックにある。吉澤和弘社長は、「カケホーダイ&パケあえるの拡大で、ARPU(1回線あたりから得られる収益の平均)の回復が継続している」と解説。ドコモ光のユーザー数も着実増え、ひかり電話などのオプションサービスへの加入も増加しており、417億円の増益に貢献。償却方法の変更や、「ずっとくりこし」の影響がなくなったことなどの特殊要因はあるものの、それを除いても増益を果たしている。
オペレーションデータも、好調な決算を裏付けている。新料金プランであるカケホーダイ&パケあえるは、上期で3342万契約に達し、ドコモ光も前年同期比の72万契約から253万契約へと急伸している。その結果として、ドコモ光を含めたARPUは4420円になり、「カケホーダイ(新料金プラン)導入前の水準に、回復している」(吉澤氏)という。
ドコモがカケホーダイ&パケあえるを導入したのは2014年6月で、同年第2四半期のARPUは4110円まで落ち込んだが、その1年前のARPUは4440円だった。ARPUが落ち込んだ原因は、ドコモの予想を上回る早さで新料金プランへの移行が進んでしまったため。通話料のARPUが下がっただけでなく、最も安価なデータSパック(2GB)を選ぶユーザーが多かったことで、業績不振を招いてしてしまった。その後、5GBのデータMパックを推進することで徐々にARPUが回復。2016年第2四半期で、ようやく4420円に戻ったという経緯がある。
今後は、9月に導入したウルトラデータパックの影響も、プラスに働く可能性がありそうだ。吉澤氏によると、今は「5GBのプランに入っていて、1GBを1回、2回追加している方にとっては、同じかそれ以下の金額で(20GB分のデータを)使える。そういったところから入られる方の割合がちょっと大きい」と話し、業績に対してマイナスに働きそうだが、その割合も徐々に変わっていくと見ている。「ガマンしながらそこまで使っていない方が入られるようになると、ドコモのARPUが上がることになる」(同)。
こうした結果を受け、ドコモは通期の業績予想を上方修正した。もともとは9100億円だった営業利益予想を9400億円に、6400億円を6550億円に上乗せしている。一方で、こうした高収益を還元し、「ケータイの料金については満足の向上にこれまでも務めてきた」(吉澤氏)。決算説明会では、新たに子育て世代への応援を銘打った、「ドコモ 子育て応援プログラム」や、既存回線に500円追加するだけとなるキッズケータイ向け料金プランも追加施策として発表した。
対するKDDIも業績は好調で、「今期の目標に向けて順調な進捗」(田中孝司社長)となった。KDDIは「モバイル通信収入と通信以外のトータルを最大化するオペレーションをしている」(同)といい、ARPA(1アカウントあたりの平均収入)は6340円に拡大。通信ARPAは5840円なのに対し、上位レイヤーや決済サービスからの収益を含む付加価値ARPAは500円と、増加を続けている。
1アカウントの指標を重視しているため、ユーザーが利用するデバイス数も重要になるが、こちらは1.425となり「まあまあ順調」(田中氏)。ARPAの伸びについては、「進捗が高いこともあって、それほど心配していない」(同)という。拡大しているのは「非通信分野」(同)。決済プラットフォームやau WALLETといった基盤を構築した上で、生保、損保、住宅ローン、物販などのサービスを展開。その経済圏は「上期が終わった段階で(流通総額が)5560億円ぐらいまで来ている」(同)という。
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