これまでLet'snoteの重要なコンセプトだった「世界最軽量」という形容詞が、昨年末に登場した「バイオノートX505エクストリーム」に奪われた。しかし、X505はコストを度外視し、かつ本体実装機能を極限まで削ぎ落とすことで軽量化を図っている。コンシューマー向けの製品としてはある意味「掟破り」な手法をとったX505の世界最軽量のタイトル奪取ともいえなくもない。
「レッツラー」と呼ばれるLet'snoteフリークでなくても、あれほど「世界最軽量」にこだわりつづけたLet'snoteが次期製品でどのようなアプローチを取るのか非常に興味深いところだった。はたして、ソニーのようにコストを度外視した軽量化への道をとるのか。コンシューマーを意識したコストと機能のバランスをとった斬新な製品を出してくるのか。
その答えが「Let'snote Y2」で示した「大画面を搭載しながらも1.5キロを切る軽量」という路線だ。見ためはA4ノートだが軽さはB5ノートのLet'snote Y2。「A4」という言葉はオールインワンをイメージさせるということで、「大画面モバイル」という言葉をPanasonicはアピールする
細かいスペックは別記事でも紹介されているが、Let'snote Y2の最大の特徴は14.1インチ液晶パネルを搭載したA4サイズノートPCながら1.5キロという軽量化と7.5時間という長時間バッテリー駆動を実現したことに尽きるだろう。もちろん本体には必要なインタフェースコネクタと光ディスクドライブを内蔵してこの重さだ。無線LANも最近インテルから発表された「Intel PRO/Wireless 2200BG」を本体に搭載して802.11b/gをサポートした。
単純に軽量化を目指すだけでなく、使いやすいマンマシンインタフェースと持ち運べる軽量筐体。そして長時間バッテリー駆動と、バランスの取れた携帯PCを実現させたことは、Let'snoteの開発陣が以前から主張している「ユーザーが求める携帯性能を突き詰める」開発方針が継承された結果といえるだろう。
ドライブを内蔵したA4スリムノートPCが2〜2.5キロである現状において、同等の機能を1.5キロ以内にまとめられたキーワードは「薄型化」。ただし薄型といっても筐体の薄型化ではない。残念ながらLet'snote Y2はその重量からはイメージできないほど、筐体が33〜46ミリと「厚い」(これもLet'snoteの伝統といえなくもない。ちなみに、その図体が普通のオールインワンA4ノートとさほど違わないので、製品を持ったときにその軽さを強烈に刷り込めるといった副作用もあることはある)。
ここでいう薄型化とは「Let'snote Y2を構成するパーツの薄型化」。筐体パネルを薄くして軽量化を図るのはLet'snoteのR、T、Wの各シリーズでも採用されてきた手法。ただし、フットプリントが大きいLet'snote Y2では生産工程上の理由から以前とは異なる方法で薄い筐体パネルを実現している。
「面積が大きくなると、金型にマグネシウム合金を流し込んでも途中で冷えてしまい、均一の厚さに流れてくれない。そのため、筐体を側面と底面で分割してそれぞれ成型し、樹脂パーツを使って組み合わせることで0.6ミリの厚さを可能にした。この方法は強度の維持にも貢献している」(古川治氏 パナソニックAVCネットワーク社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンター主席技師)。また、総重量において大きなウェイトを占める液晶パネルも、通常1.0ミリ厚で400グラムとなるところを厚さ0.6ミリのパネルを採用することで265グラムの軽量化を実現している。
消費電力の削減については従来と同じように、チップや回路を見直して無駄な電力消費を削減し、漏れ電流を防ぐなどの「細かいところを地道に節約」することで、長時間のバッテリー動作を実現している。その地道な努力のなかでも注目できるのがファンレス化した冷却機構。
「出張先のホテルで夜作業するときに気になる騒音を少なくする」(古川氏)と、ちょっとさびしいシチュエーションで優れた静音性をアピールしていたが、ファンを駆動しないことによる省電力化もメリットが大きいことは言うまでもない。
Let'snote Y2では、高い熱伝導率で最近注目されているグラファイトをアルミコートしたヒートシンクを採用し、チップから発生する熱をキーボードの裏面や筐体全体で発散させる仕組みで冷却を行っている。
製品発表会では、同社ITプロダクツ事業部事業部長の伊藤好生氏から2004年におけるPC事業戦略の説明が行われたが、そのなかで「モバイルPCの市場は急速に伸びており今後もこの傾向は継続する」とパナソニックの独自予測に基づくモバイルPC市場の伸びをアピール。「2003年はR、T、Wと登場した各シリーズがユーザーから好評だったため、目標の出荷数20万台を達成できる見通しとなった。Yシリーズが加わる2004年は30万台を目指す」と強気の姿勢を見せていた。
なお、これからの動向が気になる「最軽量PCへの取り組み」についても、「最大限のリソースを投入して開発を継続していく」(伊藤氏)と、これからも携帯性の重要な要素である最軽量化を重視して取り組んでいくことを明らかにした。
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