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» 2004年01月28日 21時45分 UPDATE

今度の次世代乾電池は「力強くヒゲが剃れます」

松下電器産業が発表した次世代乾電池は、これまでのデジカメ特化型だったオキシ水酸化ニッケル採用電池と異なり、オールマイティに使えるのが特徴。

[長浜和也,ITmedia]

 松下電器産業は1月28日に、アルカリに代わる正極材料を採用した乾電池「オキシライド乾電池」を発表した。出荷は4月1日から。価格は単3形2本入りのZR6Y/2VBが360円。このほか4本、8本、12本、20本入りのパッケージが用意されているが、こちらはオープン価格。

kn_oxrdzen.jpg オキシライド乾電池。デザインは世界統一のグローバルデザインを採用。ロンドンやニューヨーク、サンパウロなどでアンケートを取った結果を反映しているという

 オキシライド乾電池は正極材料として新たにオキシ水酸化ニッケルを採用。オキシライドの命名もその英語表記である「OXY nickel hydROxIDE」が由来となっている。サイズは従来の単3形と共通。2005年には単4形も出荷される予定になっている。

 オキシライド乾電池の特徴は「アルカリ乾電池より、使用中の電圧は高く、取り出せる電流は大きい」と開発を担当した松下電池工業一次電池社社長の梶川陽二氏が言うように、高出力で長寿命であること。スペック上の公称電圧は1.5ボルトだが、実際にはやや高めの1.7ボルトを出力し、消費電力1000ミリワットの連続使用における電池寿命はアルカリ電池の1.5倍になると説明している。

 新しくなった正極材料には二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの合金を使用。そこに新しく開発された超微粒子の黒鉛と電解液を高密度に充填している。「超微粒子の黒鉛を打ち込むのに5トンの圧力をかけなければならなかった。通常の生産設備ではこの作業は困難なため、新たにラインを作り上げた」(梶川氏)

 松下電器が「電池業界では40年ぶりの次世代乾電池」とアピールするオキシライド乾電池だが、オキシ水酸化ニッケルは、ほかの乾電池メーカーや松下電器産業自身によってすでに採用されている。

 これら先行している電池との違いについて梶川氏は「これまでのオキシ水酸化ニッケルを使った電池はデジカメに特化したもので、高出力に優れているものの低電圧特性に問題があった。オキシライドではこの部分にも改良を加え、現在乾電池で使われているあらゆる用途に適したオールマイティーであるところが特徴」と説明。

 加えて超微粒子の黒鉛の採用や、高圧突き固めによる正極材料の増量、高注入システムによる電解液の増量、正極充填量コントロールシステムによる配合の均一化を可能にした新生産施設「Uライン」(UはUltmaiteの意)も次世代乾電池の構成要素としてアピールしている。

「新世代乾電池の生産設備に約10億円の投資を行い、その前段階である研究開発の投資も同じぐらいの規模になった」(梶川氏)

kn_oxrdpls.jpg アルカリ乾電池とオキシライド乾電池の正極材料を比較する。オキシ水酸化ニッケルの採用に加え、超微粒の黒鉛を高密度に充填したことも長寿命に貢献している
kn_oxrdcrb.jpg 供給電圧と経過時間の関係を示したグラフ。同じ経過時間で比較すると常にオキシライド乾電池が高い電圧を供給している。高電圧特性に優れていたオキシ水酸化ニッケル電池だが、乾電池で動作するあらゆる機器でも高出力長寿命のメリットが享受できるようになった。「モーターの回転が強くなったので、力強く“ヒゲ”が剃れます!」(梶川氏)

 製品発表会では、オキシライドの高出力パワーをアピールするデモンストレーションやベンチマークが実物とムービーで紹介された。

 大掛かりだったのが女性が乗り込んだソーラーカーならぬ「バッテリーカー」によるデモ。「公称値はないけれど、たぶん45、6あたりじゃないですかね」(松下電器産業バッテリーカー開発担当)のドライバーを乗せた自重18.5kgのバッテリーカーは、単3形2本だけで会場中央に設けられた長さ50メートルぐらいの花道をゆっくりと歩くような速度で進んでいった。

 さらに、高出力長寿命の実証実験では、デジカメの撮影枚数やラジコンカーの登攀力などを同社のアルカリ電池と比較。撮影枚数ではアルカリ144枚にオキシライド315枚と圧倒的な強さを見せていた。

kn_oxrdcar.jpg 単3形2本で動き出したバッテリーカー。形はソーラカーと瓜二つ(駆動系の仕組みもたぶん同じだろう)の車体はゆっくりと走行した
kn_oxrdckpt.jpg バッテリーカーの自重は18.5kg。もし80kg超級の記者が搭乗したら「ちょっと動かないでしょうね」(一次電池社商品技術グループオキシライド開発チームチームリーダー 野矢重人氏)
kn_oxrdbatt.jpg トライバー後方に見える部品が車のパワーユニットとも言うべき乾電池ソケット
kn_oxrddcame.jpg デジカメ連続撮影勝負はアルカリ114枚にオキシライド315枚でオキシライドの勝ち、とここまではよく見るベンチマークテスト
kn_oxrdrcar.jpg ラジコンカーの登攀力テスト、とこのあたりからちょっと雰囲気が怪しくなってくる。結果はアルカリ電池18度にオキシライド22度。残念ながらジープの登攀能力にはかなわないようだ
kn_oxrdawa.jpg その後、レーシングカー20周タイムトライアル、ストロボチャージテスト(発光50回目でアルカリ9秒29、オキシライド5秒74)とテストが続いたが、極めつけだったのが「泡立て器勝負」 4分間泡だて器を回しつづけた後、「回転が強力なオキシライドを使った泡だて器なら、クリームがたっぷりできています」(梶川氏)

 発表会の冒頭では松下電器産業ナショナルマーケティング本部本部長の佐藤嘉信氏が乾電池市場の概要を説明。一次電池の市場は縮小横ばいながら、アルカリ電池はプラス成長を続けており、かつ、デジタルカメラなどの大電流機器需要が伸びている状況で、「デジタルカメラ需要の拡大よって、ユーザーはもっとパワフルで長持ちする乾電池を求めている」(佐藤氏)と、オキシライド乾電池のような高出力長寿命な製品の必要性をアピールした。

kn_oxrdmrct.jpg 乾電池市場規模の推移。市場全体は縮小から横ばい傾向にあるが、アルカリ電池のみは増加

 ただし、オキシライド乾電池は既存のアルカリ乾電池の市場を奪ってしまうものではない、と松下電器産業は説明している。「オキシライド乾電池の高出力と長寿命でまったく新しい用途が生まれるかもしれない。既存の市場を食いつぶすのではなく、新しい市場を創出するもの」(梶川氏)。オキシライド乾電池の投入で現在国内で占めている国内シェア30%台を40%に、海外シェア20%を30%までそれぞれ伸ばすことを目標としている。

 また、1次電池需要が2次電池需要に奪われつつある市場状況で、新しい需要を喚起できる可能性について「非常に難しい状況だが、入手が用意で扱いやすい一次電池を選択するユーザーも多い。また、海外では依然としてアルカリ電池による一次電池需要は多い。いろいろな方面に働きかけて一次電池の需要を伸ばすようにしていきたい」(梶川氏)と述べている。

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