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» 2004年02月05日 23時48分 UPDATE

海の男のIT事情「GPS携帯電話活用編」

なにが起こるかわからない海の世界。突発する緊急事態を確実に通報するシステムとして開発されたE-PIRB(イーパブ)だが、お値段少々お高くて一般人には手が出ない。でも、携帯電話のエリアなら、ボタン一つで緊急事態と自分の位置を通報できるE-PIRB並みの仕掛けをGPS携帯電話でも実現できるのだ。

[長浜和也,ITmedia]

 PC利用が進むプレジャーボートの世界。その主な目的はナビゲーションの省力化とインターネットを介した専門情報の入手にある。気象情報では予報士が使うような専門データが入手できるし、アメダスや雨雲レーダーの画像もWebから入手できる時代。これは8メートル程度の小船に高性能の気象レーダーを搭載しているのに匹敵する。

 ただし、洋上におけるPC利用で問題になるのがネットワークインフラ。海の上にIEEE 802.11bサポートのホットスポットがあるわけないし、PHSも海の上では使えない。日が暮れたら入港するクルージングでもひなびた漁港では海の上と状況はそう変わらない。

 そういう問題を解決してくれるのが携帯電話だ。以前から東京湾など大都市圏の海域や沿岸5海里(約10キロ。現在の二級船舶免許で行動できる範囲内)でも携帯電話は使えていたが、最近は「118」(海上保安庁につながる緊急時電話番号。警察の110番、消防救急の119番に相当する)のサービス開始によって、携帯電話がつながるエリアが海の上でも増えてきている。例えば、東京湾から伊豆諸島を航海する場合でも、ほとんどの航路が携帯電話の圏内に入っている(2003年8月に確認)。

 そうなると、航海中は使えないPCネットワークよりも携帯電話のパケット通信を使った情報収集のほうが格段に便利だ。実際、iモードやEZWebなどで気象関連のサービスが充実してきている。

 例えば、海に出たとき(これは山でも同じだが)一番危険なのが突風を伴なう積乱雲の発生。油断しているといきなり出現して爆弾のような突風で船を転覆させてしまうが、記者が利用している気象サービスでは、指定したエリアに雷雲が出現したらメールで警告を出し、気象レーダーの画像と雷雲の予想針路を表示してくれる。このおかげで少なくとも突風の奇襲攻撃を受ける心配はなくなった。

 このように洋上のネットワークアクセス手段として重要な役割を果たすようになっている携帯電話。東京国際ボートショーにもNTTドコモはブースを出展し、コンテンツ提供事業者のワムネットサービスを共同で現在提供している海専用コンテンツ「海ざんまい」の展示を行っている。

 「海ざんまい」はGPS付きiモード携帯「F505iGPS」「F661i」で利用できるコンテンツ。GPSで取得できる位置情報を利用するメニューが用意されているが、とくに注目されるのが、緊急時に遭難位置を関係機関に連絡してくれる緊急通報サービスだ。

 このシステムは「位置メール機能」を応用したもので、緊急事態が発生したときに「通話ボタン」(GPSボタンではない)を長押しすると、GPSで取得した位置情報をメールにしてワムネットサービスの「ワムネットコールセンター」に送信してくれる。

 緊急メールを受信したコールセンターでは、コンソールに利用者の属性データ(船名、船体の色、種類、形など)と位置(経度緯度情報)がプロットされた海図データ、そして所属マリーナやBAN(遭難時に加盟メンバーに曳航サービスを行ってくれる業者。海版JAFのようなもの)など、ユーザーが登録した緊急時通報先が表示される。その後、誤報チェックのためにコールセンターオペレータから通報者にコールバックされ、そのときの通話で遭難状況を確認し、適切な救助機関にオペレータから救助要請が行われる。

kn_f505gps.jpg F505iGPSで位置情報を取得中。この位置データと利用者データがメールになってコールセンターに送られる
kn_wamcenter.jpg コールセンターに表示される要救助船情報。本物のシステムでは、ここに船名や船体の色などが表示される

 コールバックのステップが入る(ワムネットサービスによると通報動作からコールバックまで最長2分程度かかる)ので、直接「118」に通報するほうが早いのでは、と思うかもしれない。しかし、118の通話時に要救助者がパニック状態に陥って状況を的確に伝達できない可能性もある。まして自分の正確な位置把握は困難を極めるだろう(大抵の場合、自分の位置をロストして遭難するケースが多い)。

 海ざんまいの緊急通報サービスでは、少なくとも自分の位置情報は正確に伝わっているし、救助機関への通報と状況説明は「海上保安庁OBなど海難救助の経験者を採用している」コールセンターオペレータが行ってくれる。位置を正確に把握し適切な判断ができるプロが救助要請を行うことで、確実な救助活動が期待できる。

 海ざんまいでは、このほかにもGPS携帯電話で使える「第三者検索機能」を応用して、コールセンターが遭難船の位置を把握しつづける機能や、利用者の家族などがIDやパスワードを入力することで船の現在位置を確認できる「第三者位置検索サービス」などが用意されている。

 この検索サービスを応用すると、自分の船の航跡をマップにプロットできるようになる。ワムネットサービスとNTTドコモは、昨年開催された第45回鳥羽パールレースで、この仕組みを複数の船でも利用できるようにしたシステムを試験的に構築し、レース中のヨット位置をWebで公開する実況中継を行った実績もある。

 今のところ、複数船舶を対象とする位置検索情報サービスは法人向けのみとなっている。価格についてもケースバイケースとなるようだが、引き合いがあれば、メジャーなグランプリレガッタから、クラブの定例レースなど、多くの機会でこのサービスをアピールしていきたいと、NTTドコモでは考えている。

 なお、緊急時の位置通報システムとしては、これまでも携帯電話と外付けGPSユニットを組み合わせた「Uコール」があったが、海ざんまいの利用料金は月額580円とUコールの月額1200円の半分以下となっている。これについてワムネットワークのシステム開発担当の古屋周作氏は「できるだけ海ざんまいに移行してもらえるように価格を設定した」と答えている。

 また、NTTドコモ以外の事業者が実施しているGPSサービスでも、海ざんまいに相当するサービスの実施は技術的に可能であるが、「サービスエリアの範囲を考えると、確実にサービスを提供するにはNTTドコモを選択するようになる」(古屋氏)と説明している。

kn_wamcover.jpg ブースで展示されていた「GPS携帯用ソフトケース」 「防水ケースではない」とということだがある程度の浮力を持たせている。この手のケースでは操作面だけでなく珍しく裏面も透明になっているので、カメラ機能を使うときに便利。船で使うシーンに重宝しそうなソフトケースだが残念なことに限定展示の非売品で、ボートショー期間に「海ざんまい」を契約したユーザーに限ってプレゼントされる

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