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Low-K採用でコアクロック450MHzに向上した「MOBILITY RADEON 9700」

» 2004年02月06日 19時47分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 今回発表された製品には「9700」という型番が付けられているが、デスクトップ向けGPU「RADEON 9700」のノートPCバージョンではなく、MOBILITY RADEON 9600の高クロックバージョンという内容になっている。

MCMでメモリチップを実装したMOBILITY RADEON 9700チップ

 トランジスタにはMOBILITY RADEON 9600と同様0.13マイクロプロセスを採用。4本のパイプラインに二つのバーテックスシェーダエンジンという構成も一緒だ。

 MOBILITY RADEON 9700で大きく変わったのが、トランジスタの層間絶縁膜に低誘電体(Low-K)を採用したこと。すでに同社のデスクトップ向けGPU「RADEON 9600 XT」でも使われているが、ノートPC向けのGPUとしてはMOBILITY RADEON 9700が世界で初めてとなる。なお、製造はRADEON 9600 XT同様、台湾のTSMCが担当している。

 ATIが「Low-Kを採用して発生する熱を抑えることで、より高クロックの駆動が可能になった」(ATIテクノロジーズ トプティ・ボラ氏 モバイルビジネスユニット プロダクトマーケティングエンジニア)と説明しているように、MOBILITY RADEON 9700のコアクロックは最高450MHzと向上した(MOBILITY RADEON 9600のコアクロックは300MHz)。

 これだけ早くなると、気になるのが消費電力と発生する熱。しかし、これもLow-Kのおかげでアイドル時1W、最大クロック動作時で7〜8WとMOBILITY RADEON 9600とほぼ同じ程度の消費電力となっている。

 「MOBILITY RADEON 9600と9700はピンコンパチブルなので、現在RADEON MOBILITY 9600を搭載しているノートPCは、熱設計を変更することなくそのままMOBILITY RADEON 9700に変更することが可能」(ATIテクノロジーズジャパン 信垣育司氏 PCビジネス・ユニット アプリケーションエンジニアリンググループ 部長)

 GPU用のパワーマネジメント機能は、これまでと同じ「POWERPLAY 4.0」をサポート。MOBILITY RADEON 9700にもハードウェアサーモセンサーが組み込まれ、処理負荷とセンサーで検知したチップ温度にあわせて動作クロックを二段階で切り替える。

 メモリインタフェースは128ビット幅で、コアのみのデスクリートパッケージのほかにMCMでメモリをインテグレートしたパッケージ(ビデオメモリ容量は64Mバイト、または128Mバイトの2種類)が用意される。また、ATIではチップ上部をヒートスプレッダで覆ったパッケージも準備しており、ノートPCベンダーが選択できるようにしている。

 大幅にアップしたコアクロックのおかげで、どれだけパフォーマンスがアップするか気になるところ。ATIが公開したデータでは、3DMark03、TombRaider Angel of Darkness、AquaMark3をMOBILITY RADEON 9700(コアクロック450MHz、メモリクロック260MHzで動作)とGeForce FX 5700(コアクロック425MHz、メモリクロック275MHzに設定)で比較しているが(なお、ビデオメモリはともに128Mバイト。PC側環境はPentium 4/3GHz、メモリ容量1Gバイトで共通)、MOBILITY RADEON 9700はGeForce FX 5700相対性能で125〜160%のパフォーマンスを示している。

ATIが3DMark03、TombRaider、AquaMark3で測定したベンチマーク結果

 サポートする描画ファンクションは、従来のDirect X 9.0、Pixcel Shader/Vertex Shader2.0、6X FAA、16X Anisotropic Filteringに加え、ピクセルシェーダに対応していないゲームでも、仮想的にシェーダを行う「SMARTSHARDER Effects」や、GPU内部の不正処理で動作が停止したら、ドライバ側で検知して復旧作業を行いクラッシュを防止する「VPU RECOVER」もノートPC向けGPUでは初めてサポートする。また、メモリバスの転送速度を向上させる機能もMOBILITY RADEON 9600の「HYPER-M」から「HYPER-Z III+」にアップデートされた。

アンチエイリアスと異方体フィルタリングを無効にした描画(画面左半分)と有効にした描画(画面右半分)の比較。地面の凹凸や人物の足の輪郭などに違いが見られる
Quake IIIにSMARTSHADER Effectsの「ブラック&ホワイト」効果を施した画面。ピクセルシェーダ非対応のゲームに仮想的にシェーダ効果を施すことが可能になる

 なお、ビデオメモリモジュールとしてDDRのほかに、スペック上はエルピーダメモリが開発したGDDR2-Mもサポートしている。ただし、ATIによると「エルピーダメモリがすでにGDDR2-Mの生産を止めてしまっているので、搭載するのはDDRのみになるだろう。また、発生する熱の問題から、今のところビデオメモリとしてGDDR2-Mを選択するノートPCベンダーもいない」(ボラ氏)と説明している。

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