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中国の無線LAN問題に譲歩なし――Intel CEO、北京訪問へ

» 2004年04月06日 18時06分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米IntelのCEO(最高経営責任者)は4月5日、中国の無線LAN(WLAN)標準をめぐる貿易摩擦に関連して、難局の打開は望むものの、この問題の中心となっているセキュリティプロトコルをサポートしない同社の方針に変わりはないとの姿勢を明らかにした。

 中国のWLAN標準は、電気電子技術者協会(IEEE)が策定した802.11またはWi-Fiと呼ばれる国際標準とよく似ているが、その一方で、国際標準とは異なるWAPI(WLAN Authentication and Privacy Infrastructure)と呼ばれるセキュリティプロトコルを採用している。中国政府は、6月1日以降に中国で販売するすべてのWLAN機器でWAPIをサポートするよう義務付けている(2003年12月の記事参照)。

 Intelのクレイグ・バレットCEOは今週アジア諸国を歴訪し、北京も訪れる予定だが、最初の訪問地となった台北で、「WAPIに関するわれわれの姿勢は何も変わっていない」と語った。

 「当社は6月1日までCentrinoモバイル技術を販売し、願わくばそれまでにこの問題を解決したいと考えている」と同氏は語り、IntelがWAPIについて中国政府と話し合いを続ける方針であることを明らかにした(別記事参照)。

 米国企業や業界団体はWLAN機器市場に分裂をもたらしかねないとして、WLAN標準をめぐる中国政府の方針に懸念を示している。さらに不安視されているのは、中国政府が国外のWLAN機器ベンダーに対して、中国企業との共同生産契約を通じた技術のライセンス供与を求めている点だ。業界団体の米国情報技術局(USITO)は、競合相手でもある中国企業とプロプライエタリな技術を共有するよう米企業に義務付ける不当な条項だと批判している。

 Intelは3月10日、中国政府が定めた期限までにWAPIをサポートするWLANチップセットを提供する計画はない旨を明言している(3月11日の記事参照)。ただし同社はその際、WAPIをサポートする製品を後に提供する可能性までは排除しなかった。

 この問題には米政府も介入している。ドナルド・エバンズ商務長官とコリン・パウエル国務長官、ロバート・ゼーリック通商代表は3月に中国の政府高官に書簡を送り、中国のWLAN標準の実装をめぐる懸念を表明するとともに、この規制は国際貿易の障壁として標準を利用する危険な先例を生んだとして非難している(3月4日の記事参照)。

 「WAPIや、われわれの市場参入と引き換えに知的財産の提供を要求するという中国政府のやり方を懸念する向きもある」とバレット氏。

 同氏によれば、Intelは同じ技術の複数のバージョンが広まるよりも、国際共通標準の実装を支持している。なぜなら、共通の標準があれば、技術をより迅速に市場に投入し、より多くの革新をもたらせるからだ。

 「共通のプロトコルと共通のインタフェースによって、業界ははるかに効率的に動けるはずだ。実際、コンピュータ産業が世界中でこれほど成功できたのも、共通の標準があったからこそだ」と同氏は語っている。

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