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» 2004年04月15日 15時30分 UPDATE

レーベル対P2P業界、舌戦の勝者はパンクロッカー

米大学で開かれたデジタル音楽をめぐる討論会で、音楽業界の代表とP2P業界が激論。その中で特に支持を得たのは、「第3の視点」に立ったパンクバンドfugaziのイアン・マッケイ氏だった。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 先ごろアメリカン大学で開催されたデジタル音楽をめぐる討論会では、パンクロックアーティストがファイル交換サイトを擁護し、音楽業界の幹部は人気ラッパーの反対意見を紹介するなど、何百人もの学生を前に活発な議論が交わされた。

 このイベントは同大学のコミュニケーション学部が主催したもの。参加者らは、時に著作権付き楽曲の配信にも利用されているP2Pサイトの影響について、さまざまな意見を交換した。

アーティストはともかく、作詞作曲家は……

 全米レコード協会(RIAA)の政府渉外担当副社長デビッド・ストフェン氏は、「一番重要なのは、作詞作曲家が置き去りにされている点だ。皆は、アーティストはツアーでお金を稼げると考えているようだが、作詞作曲家はツアーはしない」と指摘した。RIAAはデジタル音楽の共有に断固反対の姿勢を貫いており、著作権付き楽曲を不正に使用しているとして既に何百人ものユーザーを訴えている(3月24日の記事参照)。

 一方、ファイル交換サービス企業の業界団体であるP2P Unitedのエグゼクティブディレクター、アダム・アイスグラウ氏は、P2Pサイトは消費者に新しいバンドを紹介し、購入前に楽曲を試聴できるようにすることで音楽業界の売上に貢献していると主張した。

 さらに業界団体Distributed Computing Industry Association(DCIA)のマーティ・ラファティCEO(最高経営責任者)は、現行の著作権法の改正に向けた取り組みの必要性を訴えた。また同氏は音楽業界に対し、新技術に目を向け、ファイル共有を望むデジタル音楽ファンとの妥協点を見つけるよう促した。

 アイスグラウ氏は、「ビデオデッキが結局、映画業界を葬ることにはならなかったということは皆も分かっている。業界はIT技術を活用する術を学ぶ必要がある」と語った。同氏はレコード業界に対して、新技術を活用し、ビジネスとしても成り立つ、企業連合のような何かうまい印税徴収システムを編み出すよう提案した。

 一方、ストフェン氏は音楽業界にとってファイル共有は有害との主張を繰り返し、ことの重大性を考えるよう、学生たちに訴えた。

 「LL Cool Jが上院公聴会で行なった証言は言い得て妙だった。『もし僕がティファニーからネックレスを盗んで、ティファニーからもらったのだと皆に話したら、ティファニーは喜ぶだろうか』と彼は言っていた」とストフェン氏。

会場の支持を勝ち取ったのは

 議論は白熱し、発言者らはそれぞれ妥協の余地なしの主張を展開した。そうした中、聴衆の心をとらえたのは、議論の開始から30分ほどして、伝説のパンクバンドFugaziのイアン・マッケイ氏が行なった発言だ。

 「どれもこれも、音楽からかけ離れた議論ばかりだ。僕はここワシントンD.C.で育ったから、官僚主義がどれほど根深いものかはよく知っている。何かをしたいのなら、頼むんじゃなくて、やるしかない。いつだって答えはノーなのだから」とマッケイ氏は聴衆に語り掛けた。

 さらにマッケイ氏は、音楽の配布に関する歴史を簡単に振り返った。「音楽は言葉より古くから存在している。かつて人々は音楽の演奏を聞くために外に出かけていた。料金が支払われる場合もあれば、支払われない場合もあった。そして世紀の変わり目には、音楽を録音するという画期的な技術が発明された。そしてすぐに、こうした音楽の市場が生まれ、その後こうした市場で金もうけをするためのビジネスが確立した。人々から音楽を取り上げることはできない。音楽は空中に広まっているのだから」とマッケイ氏が話すと、聴衆からは多くの喝さいが沸き起こった。

 一方、討論会のそのほかのメンバーは、マッケイ氏の主張はアーティストとしては例外的なものだと指摘している。

 著作権侵害訴訟を起こしている米国映画協会(MPAA)の広報担当者リッチ・テーラー氏は「イアンは選択をした。彼は楽曲をインターネットに提供するという選択を下したのだ。だが、アーティストには生計を立てる権利がある」と語っている。

議論は続く

 マッケイ氏は討論会の後、自分の立場について次のように語った。

 「僕はレコードレーベルを経営している。バンドの皆に給料を支払い、バンドのメンバーは皆、家も買った。僕らも音楽で生計を立てている」

 アメリカン大学2年生のサラ・バン・バーレグイジェンさんは、マッケイ氏の主張がいちばん印象に残ったと語っている。

 「こうした法律の絡む問題は両極端になりがちだが、マッケイ氏はそこに第3の視点をもたらした。聞き応えがあった。私自身の意見はちょうど中間ぐらいだ。この問題の責任は、ある程度はIT技術の到来を予想しながらもうまく活用できなかったレコード業界自身にもあるはずだ。レコード会社のライセンスの下で、iTunesのような便利なサービスを認めていれば、問題は今ほど深刻にはなっていなかっただろう」とバーレグイジェンさんは語った。音楽業界は訴訟を進めているが、それではこの問題を解決することにならないだろうと彼女は言い添えた。

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