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中国、無線LAN規格の押しつけをやめ協調路線へ

» 2004年04月22日 12時53分 公開
[IDG Japan]
IDG

 中国政府は独自に開発した無線LANセキュリティ規格の採用義務付けに関して、米政府やITベンダー各社からの反対を受け、無期限に延期することに同意した。米中政府関係者が4月21日に明らかにした。

 「WAPI」(Wireless LAN Authentication and Privacy Infrastructure)と呼ばれるこの規格は、6月1日から中国内での採用が義務付けられる予定だった(12月3日の記事参照)。しかし同国政府はこの日、米国の通商当局関係者と面談の後、方針を変更して国際標準化団体と協力していくことに同意した。

 中国は、国内外のIT企業から寄せられた意見を考慮に入れて、WAPIの改訂に当たる予定だと米通商代表のロバート・ズーリック氏。同氏は中国の呉儀副首相との合同記者会見で、中国は現在、WAPI実装の期限を設けていないと述べた。

 ズーリック氏と呉氏は、WAPI関連の合意についてはそれ以上コメントしなかった。この合意は、21日に米中貿易問題に関して結ばれた複数の合意の1つ。

 「両国間の通商は、相恵的でなくてはならない」とズーリック氏。

 WAPIの義務付けは国際的なエレクトロニクス企業の間に懸念を呼んでいた。この規格の詳細な情報は一握りの中国の機器メーカーにしか開示されておらず、国外の企業は中国ベンダーと契約して技術ライセンスを受けるか、中国市場から距離を置くかという選択肢しかなかった。ベンダー各社は、WAPIが無線LAN機器市場を分断するのではないかと懸念していた。

 Intelは今回の合意を賞賛している。中国政府の決定は、「同国がIT業界のリーダーシップに参与していることの表れ」だと語るのは同社の広報担当チャック・ムロイ氏。「当社は米中両政府がこの重要かつ複雑な問題において、忍耐とねばり強さ、柔軟な姿勢を持って解決に当たったことを高く評価する」

 今回の2004年米中商業・貿易合同委員会では、中国が輸入半導体に課している付加価値税(VAT)に関する論争は解決されなかった。中国内で販売される半導体には17%のVATが課されているが、国内で製造された特定の半導体については、VATのほとんどが払い戻される。その結果、輸入半導体の税率は17%、国内で製造された半導体の税率は実質3%となっている。

 米政府は3月、この半導体VATをめぐり世界貿易機関(WTO)に異議を申し立てた(3月17日の記事参照)。4月26日の週に、和解に向けた協議がスイスのジュネーブで行われるとズーリック氏は語る。

 「いつものように、われわれは可能であれば訴訟で争うことなく問題を解決することを望んでいる」(同氏)

 21日の面談で、中国政府側は知的財産の侵害行為の取り締まりを強化することに同意、また第3世代(3G)携帯電話標準の採用において技術の中立性を支持していることを表明した。

 呉氏によると、中国政府は2004年末までに、オンライン海賊行為も含めた知的財産侵害の罰則を強化する予定。また海賊版製品の税関での取り締まりを強化し、中央政府での海賊版ソフトの使用を禁じる既存の規則を、地方自治体に拡大するという。

 海賊対策法の施行は、中国IT業界の成長を後押しする重要な要素だと呉氏。同氏は通訳を介して「中国政府は知的所有権の保護をかなり重視している。われわれはこれに関していくつもの問題を抱えている。それを認めることにためらいはない」と語った。

 全米レコード協会(RIAA)は、海賊行為の取り締まりに関する合意を賞賛している。同団体の会長兼CEO(最高経営責任者)ミッチ・ベインワル氏は声明文で次のように述べている。「中国は、著作権付き作品の海賊行為の横行に対処する具体的な措置を約束した。今回の発表は重要な第一歩だが、同国の今後の行動が今回の発言や公約に沿ったものになることを期待している。こうした問題に対処するため、同国の当局が迅速な行動を取ることが重要だ」

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