コラム
» 2004年05月31日 19時16分 UPDATE

ハイテクで「マイノリティ・リポート」が現実に……?

米国のある企業が、データベースとパターンマッチングソフトを使い、12万人をテロリスト候補として「予言」、その情報を当局に渡していたことが明らかに。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 現実がSFの通りになった一例だ――米フロリダのある企業が愛国心と反テロ感情から、12万人の生活に厄介な問題を引き起こした可能性があることが明らかになった。この会社はもう二度と同じことはしないと主張しているが、それを保証するのはその会社の言葉だけのようだ。

 フィリップ・K・ディック原作の映画「マイノリティ・リポート」では、警察は実際に犯罪が犯されるまで待つ必要はない。遺伝子操作された3人の予知能力者「プリコグ」の言葉を基に、捜査当局はまだ犯罪を犯していない人物を追及できる。

 フロリダ州ボカラトンに本拠を置く社員数300人のSeisintは、巨大なデータベースとパターンマッチングソフトを使って3人のプリコグに相当するものを作り出した。5月半ばの報道で、同社が9月11日の同時多発テロの直後、自社の40億件のデータベースから、秘密の公式に基づいてハイジャック犯のプロファイルに一致する人物を探し出したことが明るみに出た。同社は12万人の氏名を見つけ出したという。その中で最もプロファイルの一致度が高かった80人のほとんどが、実際のハイジャック犯か、既にテロ関連の理由で捜査対象となっていた人物だと同社は主張している。報道によると、同社はこのリストを連邦および州の捜査当局に提出。また同社は少なくとも一度プレゼンテーションで、このデータにより多くの人が逮捕されたと自慢している。

 12万人のテロリスト候補が米国で野放しになっている可能性はあるとは思う。もしそうなら、われわれは向こう2〜3年、大変な時期を迎えることになるだろう。しかし、この12万人のほとんどがテロリストの思想など持ったこともない(あるいは持ちそうもない)人物である可能性の方がずっと高いと思う。

 Seisintは、フロリダ州とほか4州の警察当局が捜査対象になりそうな人物の情報の検索に使う「Multistate Anti-terrorism Information Exchange」(MATRIX)も運営している。こうした情報を捜査当局が自ら収集することは認められていない。MATRIXは2002年に発表されて以来、大いに物議を醸してきた。MATRIX立ち上げ時には13の州が参加していたが、うち8州はその後、主にプライバシー問題を理由に脱退した。

 Seisintは、MATRIXのデータに対してテロリスト検出ソフトを使う計画はないとしているが、ご想像の通り、皆がその主張を額面通りに受け取っているわけではない(米国自由人権協会の見解はaclu.org/matrixを参照)。パターンマッチングソフト――正確な結果を出すよう義務付けられているわけではない――によってテロリスト候補のリストに載せられていることを知る由もない人が、なぜ自分の名前がそのリストに載っているのかを空港の所持品検査官に説明しなければならないとしたら、それは楽しいことではないだろう。

 Seisintの基幹事業は、人に関する情報を保管することだ。MATRIXの運営のほか、同社は(事業主が)「従業員候補を理解する」ためのサービスなどを提供している。言い換えれば、同社のビジネスは、個人が持っているかもしれない、考えられるあらゆるプライバシーの権利を無視することが前提になると言える。同社はそれをかなりうまくやっているようだ。

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