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別れるか、続けるか――VodafoneとVerizonの複雑な関係

» 2004年06月15日 14時03分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Vodafone GroupとVerizon Wirelessの米国での関係に問題があったわけではない。両社は実際に提携を成功させ、数十億ドルの売上と数百万人の顧客を獲得した。

 問題は、Vodafoneが提携を嫌っていることにある。同社は特に企業顧客向けに、独自のブランド、価格体系、「シームレスな」サービス戦略を追求するために、会社の権限を完全に掌握しておく方が好きなのだ。

 Vodafoneは2月、AT&T Wireless Servicesの買収に失敗した際に、こうした姿勢を強く打ち出した。同社は、戦略的に重要な巨大市場である米国でライバルを買収し、自ら主導権を持つために、保有しているVerizon Wirelessの45%の株式を売却する用意がある。

 今、VodafoneとVerizon Wirelessの関係が再び試されている。

 Vodafoneは8月9日までに、Verizon Wirelessの株式を現金化するかどうかを決定しなくてはならない。昨年から2007年まで、毎年合意の下に定めた2カ月の期間に行使できるプットオプションの下、Vodafoneは(Verizon Wirelessのもう1つの親会社)Verizon Communicationsに対し、同社が保有する45%のVerizon Wireless株と引き換えに、200億米ドルを2回の均等払いで支払うよう求めることができる。

 Vodafoneは6月10日にプットオプションが行使可能になって以来、手の内を隠している。

 同社の広報担当者は、「昨年のプットオプションについてコメントはしなかった。今年についてもコメントはしない。しかしわれわれが主張したいのは、米国での提携に満足しているということだ」と話している。

 それは真実かもしれないが、VodafoneのCEO(最高経営責任者)アルン・サリーン氏でさえ、条件が適切であれば方針を変えるつもりであることを認めている。「何も差し迫ったものはないが、あらゆることが起こり得る」と同氏は先月の記者会見で、提携についての質問に対して語った。

 Vodafoneが持ち株を売却すると決めた場合、サリーン氏は必至に売り先を探す必要はない。Verizon Communicationsは、同社の中で最も利益を出しているワイヤレス子会社を完全に掌握したいという希望を公にしているからだ。

 Verizon Communicationsの広報担当ボブ・バレットーニ氏は、「ボールはVodafone側のコートにあるが、同社がVerizon Wirelessの持ち株の一部または全部を売りたいと思ったら、何でも買うつもりだということははっきり伝えてある」と語る。

 売却するかしないかという数十億ドルの選択は、サリーン氏が今のプットオプション期間中に決断するかもしれないし、来年まで延期されるかもしれない――または完全に回避されるかもしれない。これは難しい決定であり、最近就任した、社内で苦しい立場にあるCEOにとっては間違いなく最も厳しい選択だ。

 もしもVodafoneが持ち株を200億ドルの現金に換えたら、同社は米国で何を買うのだろうか?

 T-Mobile USAはVodafoneと似たGSM技術を採用しており、十分に買収が可能な程度の規模だが、親会社のDeutsche Telekomは北米での地位拡大に熱心だと英コンサルティング会社Ovumのワイヤレス調査ディレクター、リチャード・ディニーン氏は語る。ほかのキャリアのCingular Wireless、Nextel Communications、Sprintは、買収費用がかかりすぎるか、互換性のないCDMA技術を採用しているか、その両方だと同氏は指摘する。

 ディニーン氏は、Verizon Communicationsがワイヤレス子会社を売却する動機はほとんどないと見ている。「Verizonが王冠の宝石を取り外すのは理にかなわない。同社のようなモバイル子会社を持つ固定電話会社は、携帯電話やIP電話に中核の音声通信ビジネスを食われることに対する防御策を取ることができる」

 Verizon WirelessとVodafoneの結婚は、たとえ最も簡単な道ではないとしても、都合が良く、重要であり、高い利益をもたらすとディニーン氏。「Vodafoneにとってベストなのは、この関係を維持することだ。今は本当にあまり選択肢がないとは言え、実際のところこの業界は分からない」

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