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「ただのバグフィックス集ではない」XP SP2にためらうテスター

» 2004年06月21日 10時03分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米Microsoftは先週、「Windows XP Service Pack 2(SP2)」の最新テスト版をベータテスターにリリースしたが、いまだにこのアップデートのテストをためらっているテスターが一部にいるようだ。

 先週、Computerworldが少なくとも部分的にWindows XPを導入している12社のユーザー企業に話を聞いたところ、うち8社がSP2の評価をまだ開始していないと回答した。今夏リリース予定のSP2はセキュリティに重点を置き、Microsoftはこれを大々的に宣伝している。またこのアップデートは、これまでに提供されたサービスパックの中で最も多くのコードを含んでいる。

 「Microsoftが単にパッチを当てているのではないと分かっているからこそ、テストをためらっている」と話すのは、米ミシガン州グランドラピッズにあるMetropolitan HealthのCIO(情報統括責任者)ビル・ルーコウスキ氏。「とにかくMicrosoftは、このテストがいかに難しいかを理解していないようだ」

 従来のWindowsサービスパックとは異なり、SP2は単に先のリリース以降に登場したバグフィックスをまとめたものではない。過去にWindows XPを襲った多くのウイルスやその他の脅威と戦うための新しいセキュリティ機能・強化機能を備えているほか、新たな「Windows Media Player」「DirectX」のコンポーネントも含んでいる。

 Metropolitan Healthのテクニカルサービスマネジャー、ランディ・トロー氏は次のように語った。「私としてはむしろ単なるフィックス集の方がいい。Microsoftが新しい機能性を追加し、デベロッパーがそれに対して自分のコードをテストしなければならなくなったら、複雑さがかなり増すことになるからだ」

 およそ15カ月前、Metropolitan Healthでは、1300人のユーザーをWindows XPに移行し、後に同OSのSP1にアップグレードした。同社にはテストが必要なWindowsアプリケーションが400本以上あるため、アップグレード作業はコストと時間がかかる。

 「OSのまったく新しいバージョンのようなサービスパックには計画も予算も組んでおらず、(テストすることは)できない。Microsoftにはいら立ちを感じる」とルーコウスキ氏。

 一方、Microsoftの上級プロダクトマネジャー、マット・ピラ氏は、ユーザーはSP2をWindows XPの「まったく新しいバージョン」と受け止める必要はないとしている。同氏によれば、同SP2には大量のコードが含まれ、ダウンロードサイズも大きくなるが、これは現行OSを土台にするものだという。なおピラ氏はSP2のサイズがどれくらいになるかを明らかにしなかった。

 Windows 2000からWindows XPへの全社規模のアップグレードに取り組んでいるある企業は、SP2を非常に信頼しており、近く1100台のPCをSP2のリリース候補第1版(RC1)に、100台をRC2に移行する計画だ。Microsoftの早期導入プログラムで守秘義務が課せられているため、匿名を希望しているこの企業のCIOによれば、RC2のアップデートファイルと実行可能ファイルは280Mバイトだが、この会社が通常Microsoftの「Systems Management Server」(SMS)を通じてユーザーに配信するものはそれよりもずっと軽いという。

 「SMSの自動アップデート機能を通じてSPアップデートを導入しており、これには満足している。PCワークステーションから個々のPCにインストールする手間が省ける」とこのCIOは語る。

 Microsoftのピラ氏は、SP2のプレビュープログラムでは「素晴らしい反応」を得ているとし、またSP2のダウンロードサイズは顧客のニーズによってさまざまだと説明。SP2では「スマートダウンロード」技術が採用され、顧客が既に導入しているものとの差分だけがインストールされるという。例えばSP1を使っている場合は、既にバンドルされているフィックスはダウンロードされない。

 (聞き取り調査を行ったうち)一部の法人ユーザーは、「SP1を既に導入している」あるいは「新たなPCの導入に伴ってSP1を採用する」と語った。しかしそうした企業の多くは、今なお、各種の旧版Windowsが混在した環境となっている。

 ゴルフクラブメーカーのPingで技術サービスマネジャーを務めるデイブ・チャコン氏は、同社にある500台のデスクトップPCのうち20%がWindows XP SP1を走らせていると話す。残りは50%がWindows NT4、20%がWindows 98、10%がWindows 2000だという。同社では今夏末までにすべてのデスクトップをWindows XP SP1に移行する計画だ。同社はKarsten Manufacturingの子会社で、アリゾナ州フェニックスに本拠を置く。

 ただしSP2の導入について、チャコン氏は、リリース直後にバグが見つかると予測されるため、最低でも6カ月待つとしている。「当社ではWindows XP SP2の強化機能の性質から見て、これを主要リリースととらえている。これは単なるOSのバグフィックスリリースではない。今やOSは、一般リリース前にすべての考え得る設定に対するテストを行うことが困難なほど複雑なレベルに達している」

 カリフォルニア州サンタアナにあるFirst American Title Insuranceは、SP2で提供される新たなファイアウォールとスパムフィルターを心待ちにしており、テストが完了次第すぐにSP2を導入する計画だと、同社のIT運用ディレクター、スコット・キャンベル氏は語っている。もっとも同社ではまだテストを開始しておらず、2万台超のデスクトップの設定をすべて正確に行えるかどうかを懸念している。

 「ユーザーコミュニティーが適切なリソースにアクセスできる状況にマイナスの影響を与えたくない」と同氏。

 法人ユーザーにとっては、アプリケーションの機能障害が大きな懸念事項となっている。だがオハイオ州ダブリンにあるCardinal Healthのシステムエンジニア、キース・テンプリン氏は、SP2のベータテストを行うに当たって何の問題にも直面していないと言う。またある大手の保険会社に勤務する匿名希望のIT管理者は、これまでに問題は発生していないとしながらも、NetMeetingとWindows Messengerで何らかの困難が生じるだろうと予測している。

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