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ユタ州裁判所、スパイウェア規制法を差し止め

» 2004年06月24日 10時48分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ユタ州地裁は、Webサーファーの活動を追跡し、時折「スパイウェア」とも呼ばれる広告ソフトを手がけるニューヨークの企業に有利な判決を下し、スパイウェアを標的にした米国初の州法を差し止めた。

 ソルトレークシティー第3司法管轄区地裁のジョゼフ・C・フラット判事は6月22日、WhenU.comからの一時差し止め命令請求を受けて、3月23日にオリーン・ウォーカー州知事が署名した「スパイウェア規制法(Spyware Control Act)」を一時的に施行停止するとの命令を下した。WhenUは、同法が自社の事業に「回復不可能な損害」を与えると主張していた。

 WhenUは、インターネット上で無償配布されている人気アプリケーションに自社のソフトをバンドルし、そのソフトを使って同社が言うところの「グローバルデスクトップ広告ネットワーク」を運営している。同社のソフトはこうした無償アプリケーションとともにユーザーのシステムにインストールされる。このソフトはインストールされた後で、ポップアップウィンドウ、Webページバナー、ボタン、ツールバー、テキストリンクに広告を表示すると同社は説明している。

 ユタ州のスパイウェア規制法は「スパイウェア」を、コンピュータの利用状況を監視し、それに関する情報を、コンピュータ所有者の事前の承諾なしにリモートコンピュータ・サーバに送信するソフトと広く定義しており、個人が他者のコンピュータにスパイウェアをインストールすることを禁じている。

 WhenUは、ユーザーは無料ソフトと引き換えに、同社のソフトがインストールされ、広告が表示されることに同意していると主張。同社は厳格なプライバシーポリシーに従っており、個々のユーザーの情報を追跡したり、ユーザーのシステムにcookieを置いたり、ユーザープロファイルの作成はしていないと述べている。

 同社は、ユタ州のスパイウェア規制法が、言論の自由を保障する米国憲法修正第一条と憲法の通商条項に違反していると申し立てた。通商条項では、州間取引を規制する権利は米連邦議会にあり、また裁判所には州間取引に干渉する州法を無効にする権限があると定めている。

 同社CEO(最高経営責任者)のアビ・ネイダー氏は発表文で、今回の差し止め命令はインターネット広告主にとって「重要な決定」であり、同社は「連邦レベルの適切なスパイウェア対策法」は支持するが、ユタ州の規制法は支持しないと記している。

 連邦レベルのスパイウェア対策法に向けた気運は高まっている。先週には米下院の商業、通商、消費者保護に関する小委員会で、「Securely Protect Yourself Against Cyber Trespass Act(SPY ACT)」が可決された(6月18日の記事参照)。この法案では、個人情報の収集、Webブラウザの誘導、ユーザーの同意を得ないポップアップ広告表示で有罪判決を受けた企業に最大300万ドルの罰金を科すと定めている。

 下院小委員会では24日に、SPY ACTを修正するための公聴会を開く。これは、同法案の下院での票決に向けた最後の段階となる。公聴会では同法案に一層の修正が加えられる可能性もある。

 これとは別に上院では、2月に「Software Principles Yielding Better Levels of Consumer Knowledge(SPYBLOCK)Act」法案が提出されたが、その進捗はSPY ACTよりも遅い。SPYBLOCK法案では、適切な通知とユーザーの承諾なしにコンピュータにソフトをインストールすることを禁じ、またソフトにシステムからアンインストールできる機能を持たせることを義務付けている。SPY ACTと同様に、ユーザー情報の収集、広告の表示、ユーザーの同意なしのシステム設定の変更も禁じている。

 多くのハイテク企業やIT業界団体は、広範なスパイウェア対策法に対し懸念を表明している。Microsoft、IBM、Hewlett-Packard(HP)などが加盟するBusiness Software Alliance(BSA)は、密かにユーザー情報を収集するといった明確に違法な活動をターゲットにし、合法的なオンラインマーケティング慣行や企業と顧客のやり取りに影響を及ぼすことのない法律を提唱している。

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