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IBM、自己管理できる半導体を実現する「eFUSE」技術を発表

» 2004年08月02日 17時23分 公開
[ITmedia]

 IBMは7月30日、革新的なチップモーフィング技術「eFUSE」を発表した。この技術を組み込んだ半導体は、自らの機能を監視、調節して、人間の手を介さずに品質やパフォーマンス、消費電力を改善できると同社はうたっている。

 eFUSEは、独自のソフトアルゴリズムと微細な電気ヒューズを組み合わせたもので、状況の変化やシステム要求に応じて行動を調整できる半導体を作り出す。この技術は半導体に「チューンナップ」が必要であることを動的に感知して、回路の構成や効率を変え、パフォーマンスを強化したり、起こり得る問題を避けることが可能だ。

 「新しいレーンを開いたり閉じたりして高速道路の交通パターンを変えるように、eFUSEは半導体のロジックのルートを変える」とIBMフェローのバーナード・マイヤーソン博士は説明している。

 eFUSEは半導体の機能を常に監視する自己修復システムを内蔵し、欠陥が検出されたら、安価でシンプルな電気ヒューズを切ることで、「本能的に」修正措置を取る。これらの電気ヒューズは、追加コストなしで半導体に組み込める。またこのヒューズは、半導体が個々の回路の速度を制御して、消費電力を管理したり、予期せぬ問題を修正する上で役に立つ。eFUSEは個々の回路が速すぎる、あるいは遅すぎるために起きた不具合を検出すると、部分的に電圧を制御してこれら回路を「減速させる」かスピードアップさせられる。

 eFUSEは「エレクトロマイグレーション」という現象を前向きに利用している。この現象は従来、半導体のパフォーマンスに害を及ぼすとして避けられてきたものだ。IBMはこの現象を制御し、半導体のほかの部分にダメージを与えることなくヒューズをプログラムする方法を完成させた。これまでのオンチップヒューズ技術はヒューズを破裂させることが多く、パフォーマンスと信頼性の点で望まない問題を引き起こしていた。

 eFUSEは高性能のPOWER5プロセッサや、省電力のシリコン・ゲルマニウム(SiGe)チップなど各種の製品に実装されている。またeFUSE対応半導体は、IBMに製造を委託している顧客向けにも提供されている。

 eFUSEは技術的に独立しており、新しい素材やツール、プロセスの導入は不要。IBMの米イーストフィッシュキルの300ミリウエハー対応工場とバーリントンの200ミリウエハー対応工場で生産されている。

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