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NEC、量子暗号システムの速度と伝送距離を拡大

» 2004年09月17日 07時43分 公開
[IDG Japan]
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 NECの研究者が、速度と伝送距離で商用化に適した量子暗号システムを開発した。研究者が9月16日明らかにしたところでは、来年下半期にも発売されるかもしれない。

 このシステムでは100Kbpsで量子鍵を生成し、商用の光ファイバー回線を使って最大40キロメートル離れた場所へ伝送することが可能。この速度と距離の組み合わせは世界記録となるもので、同システムが商用利用に適していることを意味すると、NEC基礎研究所の中村和夫氏は説明する。

 このシステムは4月に同社の研究所で初めてテストに成功。同社が従来利用していた技術から複数の突破口が開けたと、同研究所の田島章雄氏は話す。

 NECは、片方にレーザーとレシーバを、もう片方にミラーを備えた「往復」型の量子暗号手法を開発。しかしこの4月まではレシーバとミラーの技術的な問題が原因で、長距離になると高速が達成できなかった。

 従来のNECシステムでは、検出器の速度が遅すぎて、光子が正確に記録できなかった。光子は検出器に当たると電子に変わるが、検出器に光子が当たるたびに電子のなだれ状態になってしまう。このため電子群を迅速にクリアする手法を見つけ、次の光子を正確に記録できるようにする必要があった。田島氏のチームが開発した新しい検出器はこの遅れを迅速に解消できるようにし、100Kbpsでもシステムが信頼できるレベルになった。これは商用化するのに十分な速度だと田島氏。

 NECはシステムのミラーを改良。従来のシステムでは、光を入射角に対して90度の角度で反射させるFaraday Mirrorというタイプのミラーを使っていた。Faraday Mirrorの性能は気温によって変動し、効率に影響する。NECではこのミラーの技術を改良、マイナス5度から75度の温度で正確に動作できるようにした。

 中村氏によれば、このシステムは世界初の速度と距離を達成。ジュネーブ大学は60キロを超す量子伝送に成功しているが、速度はかなり下回る。また、産業技術総合研究所ではNECのシステムに近い速度を達成したが、距離は半分程度だという。

 この技術の商用化に必要なソフトと関連システム開発には来年までかかる見通しで、NECは展示会やセミナーでこの技術のデモに着手、2005年中にマーケティングに入る予定だという。

 このシステムに関する論文は、9月5日から9日にストックホルムで開かれた光通信に関するEuropean Conferenceで発表された。

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