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» 2004年09月29日 19時56分 UPDATE

ITは当たり前のものになったか?

ITはコモディティ化して当たり前のものになり、競争優位を生むものではなくなったと語る「ITはどうでもいい」著者。IT幹部はこれに対し、IT業界全体がコモディティ化に向かうことはないと反論した。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 ITのコモディティ化、アジアの脅威、深刻な被害をもたらすウイルス――。米調査会社IDCがパリで開催したEuropean IT Forum 2004の講演者は、議論のテーマに事欠かなかった。

 9月27日のオープニングセッションでは、有名な著作があるニコラス・カー氏(『Does IT Matter(ITはどうでもいい)』)とダン・タプスコット氏(『The Naked Corporation』)の2人が、「競争や経済、技術といった要因によって、ITは戦略的なリソースからコモディティに変わりつつあるのか」をめぐって激突した。

 カー氏は、コモディティ化への流れが定着しており、ユーザーはそれを有効に活用すべきだと考えている。同氏の主張は、「ITがコモディティとなり、インフラとして広く浸透していることから、あらゆる企業が標準的な技術にアクセスできるようになっており、あらゆるシステムがたちまち模倣されてしまう」というもの。このため、新システムの導入によって築いた競争優位は、失われてしまうことになる。

 「ITは、ユーザーの目に触れなくなったとき、つまり当たり前のものになったときに最大限の価値を発揮する」とカー氏は語る。

 カー氏によると、ベンダーが最先端の技術を推進するのは、ユーザーにとっては「的外れ」だ。「ユーザーは最先端を追求するメリットを認めていない」と同氏。「ユーザーはアップグレードサイクルに背を向けており、技術革新をもっと低コストで利用したいと考えている」

 これに対し、タプスコット氏は、「一部のITハードウェアがコモディティ化しており、それらが希少でないことは確かだ。しかし、ITを革新的な方法で活用し、そうすることで競争優位を獲得するノウハウは、まだまだ希少だ」との反論を展開。企業は新しいコンピューティング・ネットワーキングシステムを利用して、自社の最も得意な分野に集中し、ほかの分野では他社とパートナーを組んで「ビジネスWeb」を構築すべきだという。

 ITが競争優位をもたらすと確信しているのはタプスコット氏だけではない。米Symantecの社長兼最高執行責任者(COO)、ジョン・シュウォーツ氏はパネルディスカッションで、ガスや水、電気などの公共サービスは、何十年にもわたってほとんど変化することなくコモディティインフラとして徐々に定着するに至ったと述べた。「われわれの業界は毎日のように変わっている」と同氏。「そこが大きな違いだ」

 ビジネスソフトベンダーの独SAPの取締役会メンバーであるレオ・アポセカー氏は、ITのコモディティ化が一部で進んでいることを認めた上で、業界全体がその流れに向かうことはないとの見方を示した。「例えば、ローエンドの一部のソフトはコモディティになるかもしれない」と同氏。「だがハイエンドのソフトでは、それはありえない。その開発には膨大な知的能力の結集が必要なのだから」

 米Microsoftの欧州・中東・アジア(EMEA)地域担当最高経営責任者(CEO)ジャン=フィリップ・クルトア氏は、IT業界はいまだに初期の段階にあると語り、会議のような日常業務の成果を一段と高めるための洗練されたソフトが必要とされていると指摘した。

 一方、アジアの脅威に関して、Symantecのシュウォーツ氏は、「それは本物の脅威だ」と注意を促した。「アジア地域はエンジニア数の増加を背景に、知的業務の実力を急速に高めている」と同氏。「欧米先進国の非常に手ごわい競争相手になる日が来るかもしれない」

 アジアは人材基盤が拡大しており、非常に魅力的なコスト基盤も備えていると、米Cisco Systemsの上級副社長兼最高マーケティング責任者、ジェームズ・リチャードソン氏は語る。中でも中国はIT強国となりつつある。「われわれは将来、この地域と競い合えるようにならなければならない」

 また、Symantecのシュウォーツ氏は、ウイルスは厄介なものになり、凶悪化が進んでおり、ユーザーは予防策を講じなければ、大変なトラブルに見舞われることになると警鐘を鳴らした。

 「数年前には、攻撃者が新しいウイルスを開発してシステムに侵入するまでに5〜6カ月かかっていた」とシュウォーツ氏。「今ではその日数は平均6日程度となっており、たった2日というケースもある」

 シュウォーツ氏によると、現在のほとんどのウイルスの作者は学生やオタクではなく、個人データを盗んだり企業を恐喝しようともくろむ犯罪者だという。

 Fortune 500社の40%はウイルスの執ような攻撃に苦しんでいる。ユーザーはその結果に注意を払うべきだとシュウォーツ氏は語った。

 「企業がサーバを乗っ取られると、ブランドに傷がつきかねない」とシュウォーツ氏は聴衆に語った。「こうした極めて深刻な脅威に対処するための措置やツールが必要だ」

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