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Linuxが侵害する283件の特許に「問題あり」

» 2004年11月29日 19時39分 公開
[IDG Japan]
IDG

 「今年の夏、オープンソース団体が、Linuxが228件以上の特許を侵害していることを浮き彫りにするレポートを公表した。人々が今日思っているほど、同OSのライセンスコストは明確ではない」

 これが、「Linuxは良さそうだ」と思っていそうな企業の購買担当者を縮み上がらせるために、Microsoftのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)が全力を尽くしてやっていることだ。

 そうそう、Microsoftは数週間前に自社の知財免責プログラムを拡大することで掛け金をつり上げた――明らかに顧客に被害妄想を起こさせようという動きだ。多かれ少なかれ、これは功を奏するだろう。

 しかし、オープンソースソフトのもたらすリスクの大きさはどの程度なのだろうか? 私たちに言わせてもらうと、Microsoftの情報操作の大半がそうであるように、バルマー氏は「真実を出し惜しみしている」のだ。同氏が引き合いに出したレポートは、Open Source Risk Management(OSRM)という名前のコンサルティング業者が作成したものだ。

 皆さんは、OSRMがオープンソース対プロプライエタリソフトの論争において、どういうわけかMicrosoft側についたと思うかもしれないが、それは真実からほど遠い。OSRMは自らの使命が、「『オープンソースにとって安全になった』世界――オープンソースソフト開発モデル独自の自由と効率が、エンドユーザー、開発者、ベンダーが利用できる包括的かつ低コストでベンダーに依存しないオープンソースの保護策によって完全に守られる世界」というビジョンに基づいていると説明している。

 それではバルマー氏は、どのようにOSRMのレポートを曲解したのだろうか? 実際にレポートにはこのように書いてあった。「特許は絶対にロイヤリティフリーのLinuxディストリビューションの破滅を意味するものではない。Linuxユーザー・開発者が心に留め、備えるべき特許訴訟のリスクはある程度存在する」

 確かにちょっとがっかりする文句だが、私に味方する記述もある。「もっと具体的に言うと、この調査では、Linuxカーネルが侵害しているソフトウェア特許の中で、完全な見直しを受け、裁判所によって認められたものは1つもないことが明らかになった」

 さらにレポートはこう続いている。「だがこの調査では、まだ裁判所で見直されていない283件のソフトウェア特許が、Linuxの特許侵害の主張を裏付けるために利用される可能性があるとの判断も下された。はっきり言うと、オープンソースの潜在的な侵害の度合いはプロプライエタリなソフトとそう違わない。匹敵するプロプライエタリソフトも同じレベルの潜在的な侵害に直面している」

 言い換えると、少なくともWindowsも知的財産に関してLinuxと同じだけの問題に見舞われる可能性があるということだ。Linux Todayの記事によると、OSRMのレポートを執筆したダン・ラビチャー氏は、「特許侵害で訴訟を起こされたオープンソースソフトは1つもなく、まして特許を侵害していると判断されたことはない。逆にWindowsのようなプロプライエタリなソフトが訴訟を起こされ、特許を侵害したと判断されることは頻繁にある」と指摘した。

 ラビチャー氏はまた、Linuxが侵害している、見直しを受けていない特許の数は「退屈なほど平均的だ。ソフトウェアのほとんどの部分は、少なくともそのくらいの特許を侵害している可能性がある」とも述べた。

 だが、ここで私たちが直面しているのは、Microsoftの曲解やエンドユーザーがオープンソースを利用することで訴訟を起こされるリスクよりも大きな問題だ。その問題とは、市場の懸念が引き起こす(オープンソース採用の)抑制効果と、知財訴訟がもたらす厄介で費用がかかる訴訟のごたごただ。こうした訴訟で勝者となるのは弁護士だけだ。あとは、製品メーカーから金を巻き上げるために知財を買収している少数の企業がたまに得をするくらいだ。

 これから必要なことは2つある。まず、法律を改正してソフトウェア特許を濫用しにくくすること。次に、Microsoftに常習的な情報操作をやめさせることだ。もうたくさんだよ、スティーブ!

 前者が実現する可能性はあると思う。もっと道理にかなった特許システムを作るよう求める米国の開発者や欧州連合の圧力は大きい。後者に関しては、ほとんど望みはない。

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