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ネットでファンと球団を近づける──ホークス買収の孫社長

» 2004年11月30日 18時05分 公開
[小林伸也, 岡田有花,ITmedia]

 ソフトバンクとダイエーは11月30日、プロ野球球団・福岡ダイエーホークスをソフトバンクが取得する株式譲渡契約を結んだと発表した。興行権を含む福岡ドーム事業もソフトバンクに営業譲渡することで基本合意した。買収総額は200億円。

ソフトバンクの孫正義社長(左)とダイエーの蓮見敏男社長

 ソフトバンクは、ダイエーが保有する福岡ダイエーホークス株式約98%を50億円で取得する。現在、入場券やグッズ販売、広告看板事業など福岡ドームの営業権は、米投資会社Colony Capital傘下の「ホークスタウン」が持つが、これをソフトバンクグループが新たに設立する100%子会社に移管する。営業譲渡対価は150億円。営業譲渡契約は12月24日に結び、来年1月28日に実行する予定。

 ホークスタウンとソフトバンクグループは、福岡ドームについて30年間の使用契約を結び、福岡市を本拠に球団を長期保有する姿勢を明確化。年間365日の使用権として、1年当たり48億円を支払う。

 新球団名などは順次発表する。

 ダイエーの蓮見敏男社長は「ソフトバンクはホークスのスポンサーとして、日本プロ野球機構(NBP)に十分認めてもらえる立派な会社と判断した」と説明。孫社長は「野球のビジネスモデルを進化させ、野球の歴史を変える一助となりたい」と抱負を語った。

ピッチャー交代をネットで監督に進言?

 孫社長は、野球事業とネットサービスは親和性が高いと強調する。ネットのコンテンツ、コマース、コミュニティという「3つのC」を、野球を通じて強化する構えだ。

 試合のブロードバンド中継を同社コンテンツのラインアップに加えるほか、「音楽ライブや展示会など、球場で行われるイベントはコンテンツと密接なつながりがある」(孫社長)とし、ドームで行う野球以外のイベントもコンテンツ化したい考え。

 世界中の野球チームで頂上決戦を行う“真のワールドリーグ”も開催したいと意欲を示す。「ワールドリーグをネット放映できれば、100億円単位の追加収入が期待できる」(孫社長)。

 チケットやグッズなどをネット販売し、コマースも強化する。加えて、ネットを通じてファンと選手や監督をつなぎ、ファン参加型の野球コミュニティを作りたい考えだ。

 「選手起用の最終決定は監督」と断った上で披露したアイデアでは、まず試合中のベンチに無線LAN接続したPCを設置。監督がファンに対し、ピッチャーを誰に交代すべきかなどといった意見を募集し、それを参考にして采配を振るう――など、ネットを利用してファンの試合への参画意識を高める具体策を練っている。

 孫社長によると、現在の球団売上高は年間約170億円。年間10億円程度の赤字だが、「売り上げを1割上げれば、収支は均衡する」(孫社長)と強気だ。ただし球団による宣伝効果で、年間1000億円に上る顧客獲得費用を削減できるため、野球事業単体での黒字化にはこだわらない。「経費を増やしてでも、ファンに感動を与えられる強いチームにしたい」(孫社長)。

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