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世界初、建物を水に浮かべる免振システム

» 2004年12月02日 18時50分 公開
[ITmedia]

 清水建設は12月2日、水の浮力を使った免振構造システム「パーシャルフロート」を世界で始めて開発し、このほど着工した技術研究所新風洞棟(東京都江東区)に採用したと発表した。地盤が軟弱な地域でも高い免震性能が期待できるという。

 巨大な貯水槽と、複数の積層ゴム層で建物を支える仕組みを開発した。建物の重さの半分を浮力で支えるため、地盤の影響を直接受ける部分が少ない。水槽の水は、火災時の消火活動や緊急時の生活用水にも利用できる。

 技術研究所新風洞棟(地上2階、地下1階)は、全体の高さ17.2メートルのうち、2.3メートルが水中に沈み、建物の重さ(約2900トン)の半分が浮力で支えられている。波の動きを乱して揺れを減らす減衰装置も備えた。

 残り半分の重量は、14カ所の積層ゴムで支持。積層ゴムの直径は65−75センチと、浮力を使用しない場合よりも15センチ程度小型化できた。

 従来の免震工法では、同棟で1回の揺れにかかる時間(揺れの周期)は3.3秒だが、パーシャルフロートなら4秒以上。6−8階建ての建物なら、揺れの周期を最大5秒以上に伸ばすことができ、揺れの加速度を低減できる。

 従来の工法では、建物の基礎と上部構造を切り離し、間に積層ゴム層やダンパーを組み込んで建物を支えていた。地盤の動きが建物に伝わりやすく、湾岸都市部など、長い周期の揺れが増幅されやすい厚い軟弱地盤の地域では、十分な免震性能を発揮できなかった。

 同社はパーシャルフロートを今後、医療・通信施設や美術館、博物館、都市湾岸部の建物などに売り込む。

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