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Fedoraでコミュニティーとのきずなを取り戻すRed Hat

» 2005年02月23日 18時11分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米Red HatはFedoraプロジェクトにより、オープンソースコミュニティーとのつながりを修復し、再びコミュニティーから開発プロセスへの助言を手に入れようとしている。Fedoraは、同社幹部から最新のRed Hat Enterprise Linuxの出発点を提供するものと評価されている。同プロジェクトに協力している開発者やユーザーは、2月18日にボストンで初の会合を行った。

 2003年にFedoraプロジェクトが立ち上げられるまで、ユーザーがRed Hatのソフト開発プロセスに直接影響を与えることはなかった。一部のユーザーは、これは同社の損失になると考えていた。

 「彼らは突然Red Hat Linux 7.0をリリースした。これには大いに失望した」とマサチューセッツ工科大学(MIT)のポストドクター、エド・ヒル氏は、Red Hatが研究開発を社内に囲い込もうとした時のことを振り返る。「このモデルを続けていたら、彼らは自分の首を絞めていただろう」

 現在、ヒル氏とそのMITのグループは、Red HatとFedoraの両方を、同氏が言うところの「厄介な演算」に利用している。同氏はまた、Fedoraコミュニティーに参加し、自分のコードを寄贈している。

 Red Hatでオープンソース問題を担当するマイケル・ティーマン氏は、同社がエンタープライズコンピューティング市場だけに注力したことは間違いだったと最初に認めた人物だ。

 「Red Hat社内にも、反射的に『Red Hatはオープンソースプロジェクトを維持する必要がある』と断言する人がたくさんいた。しかし彼らは、幹部レベルに理解できる形でその意見を説明できなかった。Red Hatのオープンソース支持派は別のフリーディストリビューションが必要だと主張し続けた。そこで私は、安定性に焦点を絞ったために革新が閉ざされたことで、製品戦略のどの点が不十分になったのかを考え始めた」(同氏)

 2003年4月にMITで開かれたユーザー主導の革新に関するカンファレンスに出席した後、ティーマン氏は議論の準備を整えた。同氏はRed Hat経営陣の前でプレゼンを行い、ユーザーコミュニティーを巻き込むという決定に導いた。「われわれはついに意見の一致を見た」

 「われわれは前進することができた。ほかの方法では、これは達成できなかったと思う」とティーマン氏。

 18日のFedoraカンファレンスにはおよそ100人の開発者とユーザーが参加した。セントルイス大学のドン・ハーダウェイ教授もその1人だ。コードの寄贈はしていないが、同氏は自身をコミュニティーの一員と考えている。同氏はバグリポートを提出していることに触れ、「われわれはエンジニアの目であり耳である」と語った。

 ハーダウェイ氏がRed Hatの商用ソフトを購入することはなさそうだ。「Red Hatの製品を買うかと聞かれれば、答えはノーだ。私はFedoraに夢中だ!」

 ティーマン氏は、ハーダウェイ氏の「タダ乗り」に何ら問題はないと考えている。「学生を教えている人にとって、Fedoraはぴったりだ」とティーマン氏。同氏は、Enterprise版はFedoraほど急速に進化しない(Fedoraは少なくとも6カ月おきに新版が出るはずだ)ため、たとえタダでも学生が使うべきではないとしている。

 「私が望むのは、Fedoraがビッグになり、イノベーターを目指す学生に選んでもらえるようになることだ。そして彼らが就職したときに、Red Hat製品を会社に導入してくれたらいいと思う」(ティーマン氏)

 ハーダウェイ氏のFedoraへのウィッシュリストの一番上にあるのは、MP3のサポートだ。だがティーマン氏によると、願いむなしく、「MP3の圧縮アルゴリズムをカバーする特許を持つFraunhoferはダウンロードしか認めておらず、ディストリビューションは認めていない。Fedoraはディストリビューションなので、MP3サポートは組み込めない」という。

 Red Hatによると、先週の時点で最新版Fedora Coreのダウンロード件数は12万件に上ったという。

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