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新体制で“エレクトロニクスのソニー”復権へ

» 2005年03月07日 20時35分 公開
[ITmedia]

 ソニーは3月7日、出井伸之会長兼グループCEOと、安藤国威社長の退任を正式発表した。エレクトロニクス分野の不振で業績が低迷する同社の現状を、「危機ではないが、変化が必要」(出井会長)と判断。トップ交代を決めたという。出井会長は最高顧問に、安藤社長は顧問に退く。

 出井会長の後任には米国法人会長のハワード・ストリンガー副会長兼COOが就任し、グローバル展開を強化。安藤社長の後任にはデバイス畑の中鉢良治副社長を迎え、“エレクトロニクスのソニー”復権を目指す。

 グループCFOには井原勝美副社長兼グループCSO&CFOが就任。各人事は、6月22日の株主総会での承認を経て正式決定する。

左から安藤社長、出井会長、ストリンガー次期会長兼CEO、中鉢次期社長、井原CFO。ストリンガー次期会長兼CEOは、「3人のネクタイが同じ色なのは、わざとではありません」と話して笑いを誘った

 「エレクトロニクスの業績が目標に届いていない今、退任するのは大変残念」――出井会長は未練をにじませながらも、「グローバル化の加速やAVとITの融合など、環境の変化に合わせてソニーも革新を加速すべき時。2005年は会長職に就いて10年目で、最良のタイミング」と決断の背景を語った。また「新陣営は私と安藤さんで考えた」(出井会長)と強調。社外取締役が選んだとする一部報道を否定した。

 外国人トップの起用は異例だが、「ソニーの売り上げの79%は海外」(出井会長)と、海外事情に明るい人材の重要性を指摘。米CBS出身でコンテンツに強く、ハリウッドとの折衝やMGM買収などに手腕を発揮したストリンガー氏の業績を評価した。

 中鉢次期社長については「エレクトロニクスをずっとやってきた純粋なエンジニア」(出井会長)とコメント。下馬評が高かった久夛良木健副社長兼COOではなく、中鉢副社長を選んだ理由は「2人の比較はできない」とした上で「ソニーは、さまざまな人の意見をまとめるのが大変な会社。中鉢氏はいろいろな人の意見をよく聞くグッドリスナーだ。若い人たちの意見を集約し、モチベーションを高める役割に向いている」と話した。久夛良木副社長は4月1日付けで取締役を退任し、グループ役員に就任する。

 安藤社長は「エレクトロニクスとコンテンツを融合した新ビジネスにチャレンジしてきたが、成果が出たものと、まだ出てないものがある」と社長を務めた5年間を振り返りつつ、「リストラが計画より早く進み、2005年は攻めに回る年」と、新体制への期待を語った。

商品力は低下――“現場の力”で復活へ

 ストリンガー次期会長兼CEOは「ニーズや環境が変化している中、ソニーも変わらないといけない」とし、出井・安藤コンビが築いた経営計画をベースに、カンパニー間の連携の強化や、若手の育成などに注力する計画。「3人で協力して苦手分野を補完しつつ、利益率を高めて真の成長を成し遂げたい」(ストリンガー次期会長兼CEO)と抱負を語った。ソニー・コンピュータエンターテインメント(SCE)が手がけるPSPや次期PlayStationも重点分野との認識を示し、SCE社長を兼任する久夛良木副社長を、今後も重用する方針を明らかにした。

 「エレキの復活なくしてソニーの復活はない。全力を尽くして今の難局に立ち向かいたい」――中鉢次期社長は決意を表明した。「ソニーの商品力が低下しているのは事実。消費者が望むものを作るという、メーカーとして当然の体制が少し緩んでいた」(中鉢次期社長)と厳しい見方をしつつ、「設計やモノ作り、マーケティングといった現場の力は健在」(中鉢次期社長)と分析。現場の力を生かしながらエレクトロニクス復権を目指すとした。

 中鉢次期社長はCELLプロセッサに言及し、「これまでの路線は変えない。PS3向けだけでなく、いかに活用できるか考えるのが課題」との認識を示した。半導体投資については「重要分野だが、バランスの取れた判断が必要」(中鉢次期社長)とした。

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