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» 2005年03月22日 19時13分 UPDATE

UWBは国境を越えられるか?

米国では他国に先駆け、条件付きでUWB製品の販売を許可している。だがこれを世界のほかの地域に輸出する上では、UWBに反対する欧州の通信事業者が大きな障害となりそうだ。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 向こう2年以内に、超広帯域無線(UWB)規格をベースとした高速ワイヤレスリンクが広まり始め、USBやFirewireといった短距離接続に取って代わり、コンシューマー向け製品間の高速なデータリンクを提供することになるだろう。現在、半導体メーカー各社が対応チップの製造に取り掛かり、複数のベンダーグループが標準の策定を進めている。

 だが規制当局は携帯電話業界による反発に対処しなければならず、この技術は世界市場を確立するのに苦労することになるだろう。現にIEEEではUWB規格の策定が行き詰まっている。ただし同技術の将来にはるかに大きな影響を及ぼすのは、規制当局の判断だ。

 先週ロンドンで開催されたUltrawideband Europeカンファレンスにはベンダー団体や規制当局が参加し、こうした問題が改めて浮き彫りとなった。

UWBは境界を越える

 要するに、UWBに問題があるのはその分類が難しいからだ。この技術は広範な周波数帯に渡って低出力で機能し、市場間の境界も越える。また用途には、非常にIT中心のものもあれば(すべてのUWBケーブルを排除して、大きなデータファイルを同期化するなど)、極めてコンシューマー中心のものもある(家庭の各部屋の間でビデオストリームを移動させるなど)。

 規制当局に関してであれ、標準化団体に関してであれ、ベンダー団体に関してであれ、UWBの問題はいずれも、ただ単に、同規格があまりに新しいために明確な定義を定めるのが非常に難しいという理由によるものばかりだ。

各技術の競合

 複数の標準を認めれば、ベンダーの行き詰まりは解消できると考えたくなるのは無理からぬことだ。IEEEで競合している2つの分派は、異なる用途への対処を目指しているようにも見える。Intelが支援しているWiMediaグループはUSBとFirewireのリプレースメントとしてITの世界にターゲットを据えており(同グループは独自にPHYレイヤーを開発している)、一方、Motorolaが支援しているFreescaleの標準案はホームエンターテインメントセンターをターゲットに据えている。

 「どちらの技術も前進し、今では双方はかなりかけ離れた技術になっている」と新興UWB企業Pulse-Linkの知的財産担当ディレクター、スティーブン・ムーア氏は語っている。Pulse-Linkは最近、第3の標準案としてIEEEの外部でCWaveの取り組みを開始している。ムーア氏によれば、こうした技術は確かに競合し始めているが、今ではそれぞれの用途が非常にかけ離れているため、IEEEは2つの規格(CWaveも入れれば3つになる)を策定できるほどだという。

 WiMediaの見解は異なる。WiMedia Allianceの代表を務めるIntelのスティーブン・ウッド氏は、「双方が目指している市場は融合しつつある」と語っている。コンシューマーはMP3ファイルをあちこち移動させたいと思っており、企業ユーザーはPowerpointsを持ち運びたいと考えている。「企業向け製品とコンシューマ向け製品を分裂させるような規格が策定されれば、ユーザーは喜ばないだろう。彼らはコンテンツを共有したがっている」と同氏。

 「それを決めるのは、スケールメリットだ」と同氏。ユーザーはデータをワイヤレスで移動させるための複数の標準は望んでいない。オフィスのデータを記録するためのCDやDVDで複数の(より高く付く)フォーマットを望んでいないのと同じことだ。ウッド氏によれば、数社のコンシューマー向け電話会社が既にWiMediaを検討しており、コンシューマー部門と企業部門の境界は既にぼやけつつあるという。

 今後もIEEEが戦いの場になるとはいえ、ベンダー各社はこうした状況を考慮し、UWBの製品化の準備を進める方針だ。つまり今後は、販売していいものといけないものを決定する立場にある規制当局が最大のカギを握るということだ。

規制と反対

 米国の規制当局である米連邦通信委員会(FCC)は他国に先駆け、放射される無線信号がCDプレーヤーやコンピュータといった「意図せずに放射される電波」よりも小さいという条件付きでUWB製品の販売を許可している。この基本原則は競合しあうUWB分派からの反発も切り抜け、任意の周波数帯における認可出力レベルの「マスク」という概念に発展している。

 ここで問題となるのは、このコンセプトを世界の残りの地域に輸出し、UWB製品の世界市場を生み出せるかどうかだ。英国の規制当局であるOfcomは間違いなくそれを望んでいる。Ofcomの研究開発主任ウィリアム・ウェッブ氏は次のように語っている。「FCCのスペクトルマスクをしっかりと守れば、世界的なスケールメリットが生まれ、機器をコストダウンできるだろう。マスクをもっと制限的にすれば、人々はより良く機能するキットを輸入しようとするだろう。それは強制しがたい」

 最大の障害は欧州の電気通信業者ということになりそうだ。欧州の電気通信業者は既に第3世代(3G)の周波数帯に高額の投資を行っており、ほかの機器でその周波数帯を共有するという提案には反対することが予想される。彼らのそうした立場は携帯機器ベンダーからも支持されるだろうが、米国のベンダーには奇異に映るはずだ。

 「米国では3G向けの周波数帯を別にしていなかった。米国は第2世代(2G)システムをCDMA 2000でアップグレードしたが、欧州や世界のその他の地域は新たな周波数帯を別に用意しており、それは米国の大半の2Gの周波数帯よりも高い周波数だ」とOfcomのウェッブ氏。

ノイズレベル

 「受信範囲は即、お金の問題につながる。もし干渉があれば、通信事業者にとってはキャパシティのロスとなる」とペッカ・ランテ氏は語っている。干渉によってモバイル受信範囲の数%が排除されるだけでも、事業者にとっては大きな損失を意味する。

 問題は、通信業界側に立つ人たちが時々、UWBデバイスに対する規制を、通常の電子機器や、あるいは人間が発する熱放射といった「意図せずに放射される電波」に対する規制よりもさらに厳しくすることを求めるような発言をすることだ。こうした発言は、ベンダーやUWBの支持者をいら立たせがちだ。欧州の携帯電話業界はノイズに反対するというよりも、彼らの出番なしでも人々が通信できるという単純な事実に反対しているように見えるからだ。

 Pulse-Linkのムーア氏は次のように語っている。「中には、人体が放射する電波よりも小さい上限を求めている人がいる。熱雑音より小さいものもある」

 こうしたなか、Ofcomは如才なく、英国ではマスクをもっと厳しくする必要があるが、過度に厳しいものにはしないという方針を明らかにしている。「コンサルタントによれば、受信信号レベルの上限は-85dbMであれば大丈夫で、-65dbMでも干渉はそれほど大きくないということだ」とウェッブ氏。

さまざまな協議

 Ofcomは3月24日まで、UWBに関する協議会を開き、調査文書やそれに対する反応を評価している。「反応の大体の傾向について語るには、まだ時期尚早だ。われわれは見解が分極化するものと予測している。強力な賛成意見と強力な反対意見に分かれるだろう」とウェッブ氏。

 この協議会は、欧州レベルでの審議会に時期を合わせて計画されたものだ。欧州の通信規制当局であるCEPTは4月に欧州委員会に最終報告を提出することになっている。「CEPTの判断の行方に、私たちの協議の内容が影響を与えられるようにしたいと考えている」とウェッブ氏。

 Ofcomは英国の周波数帯を独自に規制しているが、欧州委員会は3Gの場合と同様、欧州の周波数帯全体を対象とした命令を下せる。ただし、そうした命令の範囲内であればOfcomの自由裁量となる。国際電気通信連合(ITU)もまた、UWBの世界的なガイドラインの策定に取り組んでいる。

 現在はこうしてさまざまな動きが進んでいる段階であり、今後の明確な道筋はまだ定かではない。「来月は興味深い段階になるだろう」とウェッブ氏は語っている。

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