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携帯電話でeラーニングに新しい可能性 キャリアやメーカーが協議会発足

» 2005年03月28日 20時23分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 携帯電話などモバイル機器を活用し、いつでもどこでも学習できる「ユビキタスラーニング」環境の整備と普及を目的とした「ユビキタスラーニング推進協議会」が3月28日に設立された。携帯キャリアやメーカー、教育事業者などが発起人となり、次世代eラーニングのサービス形態の検討や、仕様の標準化などを進める。総務省が2006年から行うユビキタスラーニング基盤の実証実験とも連携する。

 発起人は、NTTドコモ、KDDI、ボーダフォン、シャープ、松下電器産業、NTTレゾナント、内田洋行、ベネッセコーポレーションの8社。多様な企業が連携し、新市場確立を目指す。

設立総会には発起企業の担当者に加え、携帯コンテンツメーカーやeラーニング提供企業の担当者などが集まった

 「日本は携帯電話を利用したeラーニングの第一人者になれる」――同日の設立総会で、同協議会副会長の中原淳・メディア教育開発センター研究開発部助手は期待を込めた。モバイルeラーニングの研究は、欧米では盛んだが、その多くがPDAを利用したもの。携帯電話のeラーニングはほとんど研究されていないという。

 携帯機器を使ったeラーニングは多様だ。iモードで英単語学習できる「もえたんOnline」のようなドリルコンテンツはもちろん、携帯やPDAの通信機能を活用すれば、さらに多様な使い方が可能という。

 中原氏は、通信機能付きPDAでテストを行い、解答を教師がリアルタイムで確認できるシステムや、近くの展示物の情報をPDAで取得できる博物館(国立科学博物館などで採用)、カメラ付き携帯電話を持ってフィールドを歩き、動植物を撮影・記録する理科学習――といった国内外の事例を挙げ、モバイルeラーニングの可能性を示唆した。

 同協議会会長を務める山内祐平・東京大学大学院情報学環助教授は、(1)いつでもどこでも利用できる、(2)環境に埋め込まれている――ことが「ユビキタスラーニング」に重要とと指摘。例として、ウェアラブルディスプレイを装着して東大安田講堂を見上げると、同講堂の歴史を紹介する映像が実物と重なって表示される教材を紹介した。「その場でしかできない学習体験は強烈。ウェアラブルディスプレイで安田講堂の学徒出陣シーンを見たある東大生は涙を流した」――いつでもどこでも利用できる機器を使い、そこでしかできない体験を味わえる教材の学習効果は高いと山内助教授は説明した。

ウェアラブルディスプレイを使って安田講堂の歴史を紹介する教材

 UFJ総合研究所 経済・社会政策部主任研究員で同協議会事務局長の大嶋淳俊氏は、従来のeラーニングはPCに縛られていて“いつでもどこでも”が実現できていなかったと指摘。「携帯電話などモバイルツールを活用すれば利便性が高まり、新市場創出につながる」とした。

 同研究会では今後、参加各社がeラーニングの事例紹介を行うなどして情報交換を進めるほか、キャリアを問わずに利用できる携帯電話向けeラーニングコンテンツの共通仕様を検討。総務省のモバイルeラーニング実証実験に提言を行うなどし、2006年3月の協議会終了までに成果をまとめる。

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