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ロボットは戦場から家庭へ

» 2005年05月13日 14時58分 公開
[IDG Japan]
IDG

 コンシューマー市場にこれから登場する可動式ロボットは、米軍が推進した技術を使って作られるかもしれない。新興技術に詳しいアナリストはこう語っている。

 現在、「2015年までに軍用車両の3分の1以上を自律化する」ことを定めた米議会の指令により、可動式軍事ロボットの開発が進められているところだ。これは家電メーカーにとっては大きなチャンスになると、Strategy Analyticsのアナリスト、ニーナ・バック氏は指摘する。

 「ローエンドから始める必要がある。iRobotの掃除ロボットがいい例だ」と同氏。

 軍事研究から生まれた技術は、たいていビジネスセクターで採用されてからコンシューマー市場向けに商品化される。駆動時間の長いバッテリーや携帯電話技術CDMAなどがそうだ。

 「新しい技術がコンシューマー市場で受け入れられるまでにはだいたい20年ほどかかる」(バック氏)

 「業界は、ビジネスセクターの商業規格になるかもしれない高レベルの独特な軍事アプリケーションを開発している。この技術は発展し、一部の新興企業が成功するかもしれない製品を作っている。いずれはこの技術も価格が下がり、コンシューマーにとって手頃になるだろう」とバック氏。軍事部門を持ち、家電でも成功している――掃除ロボ「Roomba」を120万台売り上げた――iRobotは例外的な存在であり、かくあるべしという姿を示す好例だというのが同氏の意見だ。

 スウェーデンの家電メーカーElectroluxは、2001年に初の小型掃除ロボ「Trilobite」を市場に投入したが成功しなかった。「価格設定が良くなかったし、もっと啓蒙的なマーケティングが必要だった」とバック氏。

 iRobotの掃除ロボの最初のバージョンは2002年に発売された。Trilobiteと比べると技術はあまり高度でなく、価格はずっと安かった。最初のテレビCMは、掃除をこなしているロボットに家族が注意を払わない様子を描いていた。

 「ロボットという言葉を使うだけで人は怖がってしまう」と話すバック氏は、ロボットよりも可動式家電ということばを好んでいる。

 「私がロボットという言葉を使うと、家電メーカーやソフト企業はよく『われわれはそういうビジネスはやっていない』と言う。彼らはロボットが分からないのだ」(同氏)

 民生用ロボットを有望視している別の企業に、米メリーランド州カレッジパークのVecna Technologiesがある。同社は米陸軍と協力して、戦場から負傷者を運ぶ手助けをするロボット「Bear」を開発している。

 「軍用ロボットはコンシューマー市場へと進んでいけると思う」とVecnaのロボット研究開発部門ディレクター、ジョナサン・クレイン氏。同氏は米マサチューセッツ州ケンブリッジで開催されたRoboBusinessカンファレンスで講演し、マネキン人形を運ぶBearの試作機のビデオを上映した。

 「高齢者医療の問題により、Bearのアップデート版は市場を開拓し、そして運動障害を持つ人々に自立性を与えるだろう」とクレイン氏。

 またロボットは、2001年9月11日の同時多発テロ後の世界貿易センターでの死者と生存者の捜索にも利用されたと、サウスフロリダ大学の捜索・救助支援ロボット研究センターでディレクターを務めるロビン・マーフィー氏。だが同氏は自身の経験から、軍事ロボットが必ずしも民生用途に役に立つとは限らないと指摘する。

 「われわれの捜索・救助ロボットは軍と同じく3D――dull(視界の悪い)、dirty(汚い)、dangerous(危険な)――環境で働く。だが陸軍が52週間かけてロボットオペレータを訓練したのに対し、われわれは消防署や警察のオペレータを40〜80時間で訓練した。1つのサイズがすべてに合うことはないのだ」(マーフィー氏)

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