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» 2005年05月13日 18時42分 UPDATE

MITにならえ──国内6大学が講義をネット公開

東大、京大、慶応大など国内6大学が講義情報のネット公開を始めた。学外での学習や研究に役立てててもらい、教育の質向上につなげる。ただ、情報の充実や著作権問題などクリアすべき課題は多い。

[岡田有花,ITmedia]

 東京、東京工業、京都、大阪、早稲田、慶應義塾の6大学は、講義情報のネット公開を進める組織「日本OCW連絡会」を設立し、このほどWebサイトを開設。情報公開を始めた。講義のシラバスや資料などを無償公開し、大学外への情報発信や大学教育の質の向上につなげる。

 大学の講義情報をネットで無料公開して世界中の人に使ってもらおうと、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が2002年に始めた「Open Course Ware」(OCW)に賛同して企画した。MITの講義情報ともリンクする。

yu_ocw_01.jpg 6大学の首脳がそろって会見し、OCWへの期待を語った

 公開した講義情報を、学外の人々の学習や研究に役立ててもらうほか、大学受験生が講義の様子を知る手がかりにしてもらう。また、教員同士で講義資料を見合って切磋琢磨したり、英語で情報公開して大学の国際的な評価を高め、留学生を集める――といったねらいもある。

 5月13日現在、情報を閲覧できる講義数や質は、各大学ごとにバラバラだ。例えば慶応大は日本語・英語両方で計13の講義概要を紹介。京大は日本語だけで22種類の講義シラバスを公開している。東大は、一部の講義の映像をまるごとダウンロード可能だ。東大とMITの各講義との関連をマップ化して示す機能も持つ。東工大は、全科目の92%にあたる約3500科目のシラバスを掲載している。

yu_ocw_02.jpg 慶應大のOCWサイト
yu_ocw_03.jpg 東大の「分子コンピューティング」講義とMIT講義との相関を表すマップ。シラバス上の単語を解析し、同じ単語が出てくる講義同士を結びつける

 各大学で情報の質量が異なるのは、OCW参加の目的がそれぞれ違うためだ。慶応大は、英語と日本語のコンテンツを同列に扱い、日本語が分からない外国人も、国内向けと同じ情報が得られるよう配慮。京大は“普段の授業を見せる”ことに重点を置き、当面は日本語コンテンツを増やしていく方針だ。

 東大は「数ではなく質の高い教材を提供したい」(東大大学院情報学環の山内祐平助教授)考えで、動画教材や新しい機能を提供する。東工大は、大学・大学院の講義を100%カバーしたいとしており、教員がWeb上で講義内容を簡単に登録できるシステムを構築した。

“オープンソース講義”にも著作権の壁

 「もっとたくさんの情報を載せたかったが、著作権の問題で諦めざるを得なかった」――早稲田大学の担当者は著作権の壁を指摘する。教育目的なら許可なく利用できる著作物も、ネットで不特定多数に公開するとなると“待った”がかかる。

 OCWの元祖であるMITの宮川繁教授は「MITでも当初、著作権問題が浮上した」と明かす。MITは専任弁護士を雇い、対処法のノウハウを蓄積。今ではほとんどの講義の情報を掲載できるようになったという。しかし「ハリウッドの映画に関する講義情報だけは載せられなかったと聞いている」(宮川教授)。

 MITのOCWサイトには、1日当たり2万のユニークユーザーが訪れているという。アジアを中心に世界中からアクセスがあり、「MITの国際的な認知度を高めるのに役立った」(宮川教授)。OCWは講義のIT化も促し、「PCを活用したことがなかった教授も、Webサイトを作ったりPowerPointで資料を作成するようになった」(宮川教授)。

 講義のWeb公開を大学の国際競争力強化や教員の質向上につなげるためには、公開する情報の質量の増強や、著作権問題への対応など、解決すべき課題は多そうだ。

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