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Intelのプラットフォーム戦略はPCハードウェア事業を救えるか?

» 2005年05月19日 14時54分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 米Intelは新しいプラットフォームにより、競争でさらに優位に立ちたいと考えている。こうした新しいプラットフォームは、低迷するPCハードウェア事業にてこ入れできるのだろうか?

 Intelは、プラットフォーム企業を目指すと語っている。この発言は私には奇妙に聞こえる。なぜなら、私はこれまでも常に、Intelはプラットフォーム企業だと思ってきたからだ。だが、私たちはブランドに敏感な世界で生きている。Intelはこれまで、ハードウェアOEM、ひいてはわれわれユーザーに販売するマイクロプロセッサセットにキャッチーな名称を上手に付けてきた。

 AMDとの競争が激化し、コアマイクロプロセッサのコモディティ化が進むなか、Intelはさらなる体力の増強を図りたいと考えている。Intelは新しいプラットフォームを開発することにより、競合他社よりも多くの機能を提供し、それらを、PCの新規購入やアップグレードにつながるIntel独自の需要喚起策として位置付けたい考えだ。

 「Centrino」がハードウェアベンダー各社から提供される特定の機能セットを意味するのと同様、Intelが今後予定しているプラットフォームの名称は、一般に広く入手できる新しいデスクトップや各種システムを指すものとなる。機能セットはそれぞれ異なるものになるが、Intelは、製造メーカーにかかわらず、特定の機能についてはIntelベースの新しいコンピュータならではの機能であることをPCの買い手に認識して欲しいと考えている。

 私はCentrinoの取り組みは技術的にはそれほど印象的だとは思わないが、Centrinoは802.11無線LAN技術の人気の拡大に貢献し、機能の最適化されたモバイルPCを購入しやすくしたという功績もある。Centrinoは最先端のコンピュータではないが、ユーザーはマクドナルドのハンバーガーと同様、自分の買うものがどのような製品かを正確に把握できるため、購入しやすいというわけだ。

 Intelは、デスクトップPC向けに新たに機能セットのプラットフォームを開発する方針という。私の予想では、新しいプラットフォームブランドは、エンタープライズ向けとホームエンターテインメント向けの両方が提供されることになるだろう。そう遠くない将来には、IntelベースのPCはすべて、プロセッサではなくプラットフォームの種類によって認識されることになるかもしれない。

 Intelのプラットフォームが市場にもたらす価値は、同社の革新性ではなく、新しい機能を低コストでPCチップセットに組み込み、それを広く配布できるという点だ。Intelは、より多くの技術、そしてより急速に変化する技術を顧客に提供することにより、PCのアップグレードサイクルを加速させたいと考えている。私が思うに、さらに同社は、一部の小規模な競合を廃業に追い込むか、あるいはハイエンドな周辺市場に追いやることも期待しているのだろう。またIntelはプラットフォームによって、ハードウェアOEMがマシンを構築するためのコストに占める自社のシェアを増すことになるはずだ。

 そのほかにも、幾つかの見解を以下にまとめた。

  • Intelは、まだ鎮圧するには至っていない周辺機器ベンダーとの積極的な戦いを繰り広げている。同社はPCの基本プラットフォームに対して、可能なかぎりのあらゆる要素を追加している。例えば、Intelは無線技術の最前線にはいないものの、いざ新技術の大規模市場が登場すれば、ハードウェアメーカー向けに提供する製品スイートにそうした新技術を含めることができる。そして、Centrinoの場合と同様、それが顧客に促進されることになる。
  • Intelがこうした方法を取れるのは、ハードウェアがここまでコモディティ化しているからだ。顧客は明確な機能性や使い勝手を望むほどには、目新しい技術は望んでいない。
  • おそらく、新しいプラットフォームの多くは、通信、セキュリティ、システム管理機能が組み合わされたものになるだろう。これにより、顧客が本来購入するであろうハードウェアよりも、さらにハイエンドなハードウェアの売り上げを促進できる。
  • Intelは脅えている。最近では、AMDはIntelの真のライバルと捉えられるようになっており、実際、日に日にそれが現実となってきている。Intelは「PCチップセットのプロバイダー」の定義をAMDの能力以上の範囲まで拡張することによって、この競争に応じている。

 Intelは新しいプラットフォームに関して、それほど多くの詳細を明らかにしていない。だが、低迷するPCハードウェアビジネスに新風を吹き込めるほど十分に魅力的な製品をハードウェアOEMが開発できるよう、Intelがどのような形で手助けできるのか、興味深く見守っていきたい。

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